【秘宝捕獲物語】【AREA1】異世界、地球へ

【秘宝捕獲物語】【AREA1】異世界、地球へ

時は突然訪れた

「ここは・・・どこだ・・・?」

 

気が付くと俺は、見知らぬ場所に佇んでいた。

 

空を覆いつくすかのような鬱蒼とした木々、人工と見紛う程いびつな形をした巨岩の数々、底が見えるくらい透き通った清水が流れる小川。

 

明らかに、何もかもが、今まで居た場所と異なり過ぎていた。

 

自分の置かれた状況に混乱しながらも手近にあった樹木の下に身体を隠す。無線で交信を試みるも応答が無く、GPSで現在地を特定しようにも、画面には「ERROR」の表示が続くだけで、完全に測位不能となってしまっていたのだ。

 

「まいったな・・・。」

 

先程まで俺は、血生臭い戦場のど真ん中に居たはずなのだ。銃声が飛び交い、瓦礫が散乱し、そこら中に死体が散らばる。そんな殺伐として救いようの無い世界。もしや俺は別の世界に迷い込んでしまったのか・・・?一抹の不安を感じ、頭ではそんなはず無いと思いつつも、目の前に広がる奇妙な光景に動揺を隠し切れない。俺は静かに立ち上がり、多少の困惑を抱きつつも手掛かりとなるものを探し始める。この時の俺は知る由も無かった、新たな旅立ちが既に幕を開けていたことには。

 

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邂逅

「それにしても、この異様な世界は何なんだ?」

 

歩きながら、独り言ちる。どう考えても生態系が違い過ぎる。話や写真でなら見たことはある。だがそんなもの、ただのお伽話と思い込んでいたし、事実周りからもそう聞かされていた。「とある惑星には豊かな自然が広がっている」と。川に流れる水は極めて清潔で、そのまますくって飲むことが出来るというのだ。そんな世界があるなんて到底信じられる話では無い。

 

試しにそばを流れていた川の水を手ですくって鼻を近づけてみる。・・・匂いはしない。俺の知っている川の水は鼻を突く硫化水素の匂いが漂う、黄色く濁った水だ。こんなに綺麗では無い。

 

水を僅かに口に含み、舌で転がしてみる。・・・本当にこれが「水」か?ほんのりとした甘みが口の中に広がり、陶酔にも似た感覚になる。

 

「異世界・・・。」

 

きっとそうだ、ここは俺のいた惑星では無い。別の星に来てしまったのだ。にわかには信じられないが、その現実が疑いようの無い事実を示し出していた。

 

ひとまず、水場は確保した。あとは食料と寝床か。

 

警戒は現に、慎重に辺りを散策する。出来る限り物音を立てないように移動するが、慣れない環境に足元がおぼつかない。

 

何故ならこういった「リアルな自然」を見るのは始めてなのだ。訓練の過程で、感触までも再現する「仮想空間での自然」は体験しているが、やはり訳が違う。慣れるまで暫く時間が掛かりそうだ。

 

ガサッ・・・ガサガサ

 

 

何かいる。

 

素早く茂みに身を隠し、辺りの様子を探る。すると・・・、

 

「あと・・・ちょっと・・・!」

 

人、だ。それも若い女。何やら草が生えた岩壁をよじ登り、果実のような物を取ろうとしている。

 

「そこで何をしている?」

 

「キャッ!?」

 

ドサッ

 

あ、落ちた。

 

「ッッ!いったぁーー!もう!もう少しで取れたのにっ!何なのよ、いきなり声掛けないでよ!」

 

女は立ち上がるとキッと俺を睨み付けた。童顔で、若干幼めに見える。金髪で、腰まで伸びた髪をポニーテールにしている。目はワインレッドで猫目、肌は白く華奢で、身長は160センチ代といったところか。

 

服装は・・・何というかやたら場違いな格好をしていた。太股が見える程短いミニスカートに、足首を覆うくらいのショートブーツ、長袖のブラウスにジャケット、腰には小さめのポーチをしている。よくこんな恰好で森の中をうろついていたもんだ。

 

「すまない、この場所に来て、始めて人と会ったものだったから、つい。」

 

「?あんた、どこから来たのよ?」

 

女は身なりを整えながら、不思議そうに訪ねる。

 

「惑星テテュス・・・という所だ。」

 

「聞いたこと無いわ。」

 

目を丸くしたと思ったらすぐにキョトンとした顔になった。

 

「やはりか。実は俺もこんな自然豊かな世界、見たことが無い。」

 

「もしかして・・・異世界から来たってことなの?」

 

「まあ、多分そういうことになる。お前、名前は?」

 

「人に名前を尋ねる時はまず自分から。あんた習わなかったの?」

 

「それもそうだな。俺の名前はディレム。ディレム・ライ・ブルートメルダー。23歳だ。」

 

「レナよ。レナ・スカーレット。21歳だわ。」

 

2つしか違わなかったとはな・・・。てっきりもっと下かと思っていたのだが。

 

 

「それでレナ、念の為聞いておくが、ここは何という所なんだ?」

 

「地球よ。ジグという国のチバニアってとこ。」

 

「地球・・・だと?」

 

俺はその名称を知っていた。そう、ずっとお伽話だと思っていた自然豊かな世界の地球、だ。

 

「本当に異世界に来ちまったんだな、俺。」

 

「その割にはあんまり驚いてるように見えないけど。」

 

「どっちかっうと、理解の範疇を超えていて、頭がついていかない感じさ。そういうお前こそ、異世界人を目の前にして落ち着いてるじゃないか。」

 

「まあね。実を言うと、異世界人が迷い込むのはそれほど珍しいことじゃないの。今までにもそういうことは時々あったわ。」

 

異世界人が地球に迷い込む?

 

「どういうことだ?」

 

「そのままの意味よ。ある時を境に地球の時空が歪んで、その歪みに吸い寄せられるように、別の世界から人が来てしまうようになったみたい。」

 

「ある時・・・?」

 

「地球はね、一度滅亡した星なのよ。」

 

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滅亡と再生

「滅亡した・・・だと?」

 

「正確には「半滅亡」かしら。今から500年程前、謎の天変地異が起きたの。「震天災」と呼ばれる大厄災よ。」

 

俺とレナは手近な岩に腰掛け、互いに向かい合うような形になる。

 

「その結果多くの人類が滅び、数十億人居た内生き残ったのは30万人程、6つあった大陸は3つになって、同時に多くの国も滅んでしまったわ。」

 

あたしも聞かされた話だから詳しくは分からないけど、と言いながら言葉を紡ぐようにして話を続ける。

 

「それまで高度な文明を築き上げて来た地球の都市も、震天災によって壊滅的なまでの被害を受けて、見る影も無いわ。今はその殆どが廃墟。」

 

ふむ、と相槌を打ちながら、組んでいた足を組み替える。なかなかに興味深い話だ。

 

「でも人類が激減して、都市が崩壊したことで破壊されていた環境が元に戻って、今や地球の3分の2は自然と言われているのよ。」

 

なるほど、以前聞いた話の地球はこういう経緯があったのか。異世界とは言え、未だに多くの自然に囲まれた惑星があったことに驚く。

 

「生態系も大きく変貌して、それまで見たこともない動植物が生まれたわ。ほんと、とんでもない話よね。」

 

他人事のような口調。その言葉には呆れともめんどくささとも取れるようなニュアンスが含まれているように感じる。

 

「それまで200近い数があった国は崩壊を余儀無くされて、他国に吸収されたり、融合したりして今では30くらいしかないらしいわ。」

 

「その内の一つがこのジグって訳か。」

 

「そう!そのジグっていうのは「秘宝が眠る国」って意味が込められていて・・・」

 

と、言い終わらないうちに、俺は手でレナの口を塞ぐ。

 

「ムグッ!な、何よ!」

 

「静かに・・・。」

 

辺りに異変が訪れた。何やら変だ。殺気を感じる。

 

感覚を研ぎ澄ませ、周囲の様子を探る。

 

グゥルル・・・グルルルル・・・

 

唸り声。間違い無い、野性動物だ。

 

刹那

「ちょ!あ、あれってオオカミ!?」

 

「ふむ、オオカミと言うのか。なかなか獰猛そうだな。」

 

「あんた、何感心してんのよっ!このままじゃ食べられちゃうじゃない!」

 

「慌てるな。」

 

俺は息を潜め、じっくりとオオカミなる生物を観察する。

 

数は3頭、体長は1.5メートル弱。脅威と成り得るのは大きく発達した牙と前足の爪。幸いなことに、まだこちらには気付いていないようだ。

 

「下手に逃げようとしても気付かれる。ここは・・・やれやれ、やるしか無さそうだな。」

 

「バカ!あんなのあんた一人でどうにか出来る訳無いじゃない!殺されちゃうわよ!」

 

そう、それが普通の感覚だ。野性動物、それも群れに普通は、人間が、一人で、勝てる訳が、無い。

 

「・・・試してみるかな。」

 

動物相手に使うのは始めてだが、基本は同じはずだ。

 

オオカミ達から死角となる場所に回り込み、腰に差したナイフに右手をかける。そのまま倒れ込むような動作で姿勢を低くし、右足を折り、左膝を地面スレスレまで近付ける。

 

そして、息を軽く吐き出すと同時に、左足で勢い良く地面を蹴り、オオカミ達に肉薄する。

 

「神速」

 

素早くナイフを引き抜きながら3頭同時に斬りかかる。

 

ヒュアッッッ!!!

 

カチ・・ンッ

 

オオカミ達を通り過ぎ、ナイフをシースに納める。

 

ブシャッ!!

 

アォオオン!!!

 

3頭の前足から同時に血が勢い良く吹き出て、悲鳴を上げる。

 

キャンキャンと弱々しく鳴きながらオオカミ達は逃げていった。

 

「ふぅ、案外上手く出来るもんだな。」

 

怪我は無いか、と言いながら振り返ると、口をポカーンと開けながらレナは唖然としていた。

 

「おーい、生きてるかー。」

 

頬を軽くペチペチと叩いてやるとハッと我に帰った。

 

と、俺の両手をガシッと握り、

 

「ディレム、あんたとなら見つけられるかもしれない!!」

 

「何を?」

 

「秘宝よっ!!!」

 

続く

 

 

~秘宝捕獲物語の用語辞典~

神速(しんそく)

身体を極限まで低くし、踏み込んだ際の空気抵抗を減らすことで超速の移動をし、剣撃に繋げる為の技。神速の速度は音速を超えるので、剣撃と組み合わせることで衝撃波を発生させ、敵を負傷させることが出来る。欠点は超短距離(10m程度)しか移動することが出来ない為、離れた相手には効果が無い。

あとがき

軽く小説っぽいのを書いてみました。ぶっちゃけ色んなメディアの要素をミックスしています。僕の良く行く「秘境」の世界や実体験を元にしながら創作していくつもりです。若干の厨二臭がするかもしれません(笑)次回も良ければお付き合い下さい。

 

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