【秘宝捕獲物語】【AREA2】奇妙な出逢いも何かの縁?

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~今までのあらすじ~

惑星テテュスでハイランダーとして生計を立てていたディレム。それが「地球」という異世界に迷い込み、一人の女性レナと出逢う。圧倒的な戦闘力を目にしたレナは「秘宝」を一緒に探そうと持ち掛けてくる。「秘宝」とは一体・・・?

前回のお話

【AREA1】異世界、地球へ

 

 

ハイランダーとトレジャーハンター

「何だって?」

 

「だーかーらー、秘宝!ひ・ほ・う!」

 

俺はレナの行った突拍子の無い頼みを口の中で反芻する。

 

一緒に秘宝を探してほしい?

 

「何じゃそりゃ。」

 

悪いが頭が追いつかん。

 

「あのね、さっき言いかけたことなんだけど、このジグには10の秘宝が眠っていると言われてるの。」

 

レナはやたら目をキラキラさせながら熱心に語り始めた。

 

「震天災が起きた後くらいからかしら、ジグのあちこちで不思議な力を持つ物が生まれたっていう噂が広がって、世界中から人が集まってきたの。」

 

「人々はいつしかその不思議なアイテムを「秘宝」と呼ぶようになって、探すことに躍起になっていたわ。」

 

「ジグが「秘宝が眠る国」の意味で名付けられたのもそれが由来よ。」

 

「10の秘宝全てを集めた者は、どんな願いも叶うとか、世界を統べるとか・・・そんな感じ。」

 

「でも、「秘宝」の噂が広がってから数百年経つのに、未だ全部を集めた者は居ないのよ。」

 

「何者かに奪われたり、消失したり・・・原因は様々。何だか曰く付きって感じよね。」

 

「不気味な話だな。で、レナはその「秘宝」を集める為にジグを旅している、と?」

 

「そうそう!こう見えてあたし、トレジャーハンターなのよ!」

 

レナはくるっと意味も無くその場でターンし、Vサインをして見せる。

 

・・・トレジャーハンター・・・?

 

どうにも俺は、珍妙な奴と出逢ってしまったらしい・・・。

 

盛大に俺は溜め息を付いた。

 

「一応聞いておくが、そのトレジャーハンターとやらは何をする職業なんだ?」

 

「もっちろん、ジグに散らばる秘宝を集める職業よっ!!」

 

もうテンションが高過ぎて付いていけん・・・。

 

「それにね、秘宝を集めるのはじいちゃんからの頼みでもあったの。」

 

急に神妙な面持ちになるレナ。

 

「じいちゃん、偉い学者で周りの人達は「博士」って呼んでたわ。世界各地を巡って様々な遺跡の研究をしたり、学会で発表したりとかも。」

 

レナの目は何だか少しだけ悲しそうだが、何かを懐かしむようにも思える。

 

「亡くなったのか?」

 

「うん、もう3年前のことよ。」

 

「亡くなる直前、じいちゃんはこう言ったわ「ジグに散らばる秘宝を集めてくれ」って。」

 

俺はレナの目を見ながら静かに話の続きを待つ。

 

「こうも言ってたわ「秘宝は悪しき心の持ち主に渡れば必ずや厄災をもたらす」ってね。」

 

「「だから心の清く強いお前が全てを集め、正しき場所に祀るんじゃ」それがじいちゃんの最期の言葉よ。」

 

うつむき加減になっていたが、急にパッと顔を上げて、

 

「だからね、あたし、じいちゃんの望みを叶える為にも秘宝を集めなきゃなの。」

 

ニコッと可愛らしく微笑んだ。

 

「事情は分かった。でも、何故俺となんだ?」

 

正直なところ、俺には秘宝に興味は無いし、そもそも探索に関する知識や経験自体が皆無に等しい。どう考えても足手まといになりそうだが。

 

「さっきディレム、オオカミの群れを一瞬で退けちゃったでしょ?」

 

レナはナイフを構えて切り払う動作をしながら続ける。

 

「あたしね、探索とかは得意何だけど、戦いは全然ダメなの。」

 

「実を言うと、戦いになるのが怖くて秘宝の眠る「深奥」までは入る勇気が無かったし、それでここのところ諦めかけてたの、トレジャーハンター向いてないかなぁって。」

 

「そこにディレムが現れてくれたわ!あの身のこなし、只者じゃ無いって直感したもの!さっきの技、速すぎてよく見えなかったけど、凄かったし。」

 

「あれは・・・「鏖術」ってやつだ。」

 

「おう・・・じゅつ?」

 

可愛らしく首をかしげながら尋ねてくる。

 

「俺の家系、ブルートメルダー家は代々裏の仕事を引き受けて来た。金の為なら何でもするハイランダー、分かりやすく言うと傭兵さ。」

 

「鏖術はハイランダーとして任務を遂行する際、必要な技術を盛り込み編み出された、殺人術なんだ。」

 

「なんか物騒な話・・・。でもさっきはそれで助かった訳だし結果オーライなのかしら。」

 

「まあ、な。」

 

「兎に角、そういう訳だから探しに行きましょ、秘宝!」

 

「行くと言った覚えは無いんだが・・・。」

 

とは言えずっとここで立ち止まっていても仕方が無いことは事実だ。俺も元の世界に帰る為の手掛かりを見つけなければならないのだし。

 

「やれやれ・・・。」

 

こうして異世界から来たハイランダー、ディレムと、異世界地球に住むトレジャーハンター、レナの奇妙な物語が幕を開ける。

 

 

お先真っ暗?

「ところで、どうやってジグに散らばる秘宝を探すんだ?手掛かりはあるのか?」

 

「あるわよ。」

 

言うとレナはポーチから写真を取り出した。何やら得体の知れない巨大な物が写っている。

 

「何だこれ?岩・・・か?」

 

「バカ!違うわよ、木よ、楓の木!」

 

よく見なさいよ、と言わんばかりに目の前に突き付けて来た。

 

なるほど、確かにじっくり観察してみると木に見えなくも無い。だがその姿はもはや木のイメージとかけ離れていた。幹は太過ぎる、と言うより丸過ぎて岩のように見え、枝と言う枝はまるで腕みたいで、天を仰ぐようにしてあちこちに伸びている。

 

「場所はここヤーゲンフェルト。木の名前はグランデ・アチェロで、地名と合わせて「ヤーゲンフェルトのグランデ・アチェロ」と呼ばれているのよ。」

 

意味は良く分からないが、大層な響きの名前だな・・・。

 

「でもヤーゲンフェルトは広過ぎてグランデ・アチェロがどこにあるのか見当が付かないの。」

 

さ、探しようが無いじゃないか・・・。

 

「他になんか情報は無いのか?」

 

「うーん、確か小高い丘になってて、周りは石垣に囲まれているとか。」

 

この辺一帯は地形の起伏が激しいし、小高い丘なんて山程ある。石垣を探していくしか無さそうだな。

 

「あ、もしかしたら!」

 

またレナはポーチをごそごそとまさぐり、機械らしき物を取り出した。

 

「それは?」

 

「トレジャートレース。略してトレトレ。じいちゃんが冒険の役に立つってくれたんだけど・・・やっぱりダメね。なんか壊れてるみたいなの。」

 

それとも何かきっかけがいるのかしら、なんてブツブツ呟いている。

 

「何にせよ、ひとまず歩き回ってみようじゃないか。案外簡単に見つかるかもしれないぞ。」

 

「そうかもね。ディレムがいると心強いわ。」

 

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禁忌

「早く来なさいよ~。もう、遅いわね。」

 

レナはスタスタ先に行ってしまう。なんでこんな凸凹の地形を簡単に歩けるんだ?

 

「仕方無いだろう、本物の自然なんて始めてなんだからさ・・・。」

 

「そう言うけど、さっきオオカミ達を追い払った時なんて物ともしなかったじゃない。」

 

立ち止まり、振り返りながらレナは「だらしない」と言わんばかりの顔をしている。

 

「あん時は無我夢中だったからだよ。」

 

とっとと慣れないと、ほんとに迷子になりそうだな、俺が。

 

「日が暮れちゃうでしょ。いい加減見つけたいのに・・・。」

 

1ヶ月も探し回ってるのよ、と付け加えてきた。

 

「気楽に行こうぜ、焦ってもしょうがないじゃんか。ほら、急がば回れって言うだろ?」

 

俺は時々現れる平坦な場所で「神速」を使いながら、レナとの距離が遠くなり過ぎないように注意して着いて行く。

 

「何言ってるのよ!そんな流暢なこと言ってたら悪者に秘宝を取られて悪用されちゃうかもしれないでしょ!」

 

大体ねーディレム、あんたは~とこちらを向きながら後ろ向きに歩くレナ、が唐突によろめいた。

 

「えっ?ちょっ!?」

 

グラリ、とバランスを崩し、そのままレナの姿が視界から消えた。

 

「おい!」

 

俺は咄嗟に「神速」を連続で使い、レナの消えた地点に駆け寄る。そこは崖になっていて、レナは辛うじて崖から数十センチ下の窪みに片手を引っ掛けていた。

 

「ディ・・・レム・・・!」

 

「くっ・・・!」

 

手を伸ばし、レナの腕を掴もうとする。しかし、

 

ガラッ!

 

無慈悲にも窪みが崩れ、レナの体がゆっくりと闇に飲み込まれていく。

 

「レナ!!!」

 

・・・使うしか無い。「禁忌」を。

 

「遡転」

 

自界心景に時間逆転を作り出し、「外の世界」へ放つ。一瞬目の前の風景が歪み、それもすぐ元に戻った。

 

ドサッ

 

「っつつ!!いったーい!ってあれ?あたし・・・。」

 

横にレナが尻もちをついていた。

 

「あたし崖から落ちて、それで・・・。」

 

一体何が起きたのか分からず、キョトンとした顔をしている。成功するかは賭けだったが、何とかなって良かった。

 

「まあ、その、なんだ、無事で良かったよ・・・。」

 

「もしかしてディレム、あんたが?」

 

俺はボリボリと頭を掻く。

 

「目の前で人のピンチを見たら、助けずには居られない・・・じゃん。」

 

レナが急にクスっと笑う。

 

「良い奴ね、ディレム。」

 

やっぱりあんたと一緒で正解だった。聞き取れないくらい小さな声で呟いた。

 

いつの間にか日はすっかり落ち、夜になっていた。

 

続く

 

~秘宝捕獲物語の用語辞典~

遡転(そてん)

自界心景と呼ばれる自身の空間に逆の時間を作り出し、対象のいる「外の世界」へぶつけることで、時を遡ることが出来る。ただし、精々数秒前までしか戻せず、戻す対象も1つしか選べない。禁忌とされており、無闇に使用すると自身の精神状態を壊滅させ、再起不能となる。本来遡転は戦場で身体に大きな損傷を受けた際の回復手段として用いる、が、無論最終手段である。

あとがき

意外と物語書くのって楽しいと感じます。書いている内にアイディアが浮かんできますし、何だか自分自身もその世界に取り込まれていくようです。今回出て来た「ヤーゲンフェルト」と「グランデ・アチェロ」、それぞれ意味的には「追原」と「大楓」になります。「ん?」と思った方は鋭いですね。何が鋭いかは秘密です。さて、次回はどんな話にしましょうかね・・・。

 

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