【秘宝捕獲物語】【AREA3】前触れの夜

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~今までのあらすじ~

惑星テテュスから謎の転移によって異世界「地球」に来たディレムは「トレジャーハンター」と自称するレナに出逢う。10の「秘宝」を見つける為、レナはジグを駆けているという。ディレムに興味を持ったレナは秘宝探しに協力するよう頼み、渋々ディレムは同意する。最初の秘宝が眠るというヤーゲンフェルトのグランデ・アチェロに向けてズンズンと先へ進むレナは底の見えない崖から落ちたが、ディレムの鏖術によって難を逃れる。そして短い休息の時が来ようとしていた。

 

前回のお話

【AREA2】奇妙な出逢いも何かの縁?

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一時の安らぎ

「すっかり暗くなっちゃたね。」

 

パチ、パチと音を立てる焚火の前に俺とレナは腰を下ろしている。

 

レナは手慣れた手付きで火を起こして、シカ、という動物の肉を炙っていたのだ。

 

日が沈み切る直前、たまたま死んだばかりのシカを見つけ、捌いておいたのだ。崖から落ちたと見られるシカは、死後数時間と経っておらず、腐敗はしていなかった。

 

「どっかの誰かが無茶したお陰かもな。」

 

冗談交じりにからかう。

 

「あれは・・・悪かったわよ。」

 

珍しく素直に謝られたので、若干拍子抜けしてしまった。

 

「ねぇ、ディレムはさ、やっぱり元の世界に帰りたいと思うの?」

 

ぼんやり燃えゆる火を見ながら、レナはそう尋ねてきた。

 

「何だ?急に。」

 

「別に・・・、ただどうなのかなって。」

 

「帰りたいと言えば・・・まあ、そうだな、帰りたい。腐っても俺の故郷な訳だし。」

 

「含みのある言い方ね。」

 

「俺の居た惑星、テテュスは全てが荒廃した最悪の星だったんだ。」

 

「世界中が戦争なんてのは当たり前で、略奪、暗殺、密売、麻薬、強姦・・・ありとあらゆる悪事がどこかしこで起きていた。」

 

取り締まる者なんて誰もいない。完全な放置社会。

 

「弱き者は死に、強き者は生きる。弱肉強食を絵に描いたような世界。」

 

「かつては美しい自然に囲まれていて、水の女神テテュスの名に相応しい惑星だったんだが、それもいつしか廃れて、今は見渡す限り荒野。水なんてものは腐臭が漂う酷いものさ。」

 

皮肉な話だ、と付け加える。

 

「そんな世界でも・・・帰りたいんだ?」

 

時折炙っている肉の様子を見ながら話を聞いていたレナが問う。

 

「姉が、居たんだ。」

 

レナがパッと顔を上げる。

 

「お姉ちゃん?」

 

「たった一人の家族だ。俺はその姉を捜す為にあの腐った世界で生きていたんだよ。」

 

「まだ俺が小さかった時に両親は暗殺され、姉は親代わりだった。」

 

暗殺された理由は聞いているだけで腹立たしいものだった。任務の報酬の取り分が気に入らないと難癖を付けて来た奴がいた。同業者であり、長である父親の部下に当たる奴だ。そいつはいつも任務が完遂される間際になってノコノコやって来るヘタレ。父親は難癖を付けて来たヘタレを何とかなだめようとしたが、納得してもらえず、後日寝込みを襲い、暗殺した。母親も巻き添えを食らい、他界してしまったのだ。

 

当然、両親を暗殺したヘタレ達は、全員捜し出し、拷問にも等しい手段で「始末」した。

 

そして家族は俺と姉の二人だけ。

 

「身の回りの世話は勿論、鏖術を教えてくれたのも姉なのさ。」

 

「でも5年前、忽然と姿を消した。書き置きも残さず、いきなり、だ。」

 

「姉を捜す為にハイランダーとなり、テテュスの土地を転々としていた。」

 

「それで、見つかったの?」

 

身を乗り出すようにして聞いてくるレナ。

 

「いや、今のところ手がかり一つ無い。」

 

「そ、そうなんだ・・・。」

 

何故かレナは少しビクついたような素振りを見せる。

 

「どうした?」

 

「べ、別に、何でもないわ。」

 

話を逸らすようにして、レナはこんがりと焼けたシカの肉を手に取る。

 

「ほら、肉も焼けたことだし、焦げない内に食べましょう。」

 

何か少しだけ気掛かりだが、確かに俺も腹が減って限界だった。レナに倣って肉を口に近付けると、何とも香ばしい、食欲をそそる香りが漂ってくる。

 

一口かぶり付くとジュワッと舌触りの良い油で口の中に満たされた。

 

「上手い・・・。」

 

というか、上手過ぎて昇天しそうだ。

 

「でしょ!?」

 

ただ火で炙っただけなのに、やたら得意気に微笑む彼女がとても愛らしく思えてしまった。

 

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レナの秘密

「結構いけるでしょ?」

 

俺達は肉を食べ終わり、壁にもたれ掛かりながら時を過ごしていた。

 

「確かに、あんなに上手い食べ物は久し振りだ。」

 

「あんた、今までどんなの食べてたのよ・・・。」

 

「とにかく今日は疲れた。すまないが、先に寝させてもらうぞ。3時間程したら起こしてくれ、見張りを代わるよ。」

 

「え、ちょっと!」

 

「ZZz・・・。」

 

「・・・もう。」

 

 

「変な奴・・・。」

 

自然とそう口から漏れた。

 

変わった術であたしを助けてくれたり、いきなり寝ちゃったり。

 

「でぃれむ~・・・。」

 

小声で囁きながら問い掛けても返事は無い。ぐっすり寝ちゃってる。

 

「相当疲れてたのかしら。」

 

無理も無いか。突然違う世界に飛んできて、始めて見るものばかりならそれが普通。あたしだったら絶対パニックになってる。

 

「・・・・・お姉ちゃんか・・・。」

 

さっきお姉ちゃんがいるという話を聞いて、あたしは少しドキッとしてしまった。

 

「もしかしたら・・・でも・・・そんなことあるのかなぁ。」

 

『出来の悪い弟がいるのよ。』

 

以前秘宝を探していた時、落とし穴にハマってジタバタしていたあたしを助けてくれた一人の女の人。

 

スラリとした長身で、おっとりした雰囲気とは真逆に、素早い身のこなし。

 

『弟の名前はディレム。たった一人の家族よ。』

 

そう、女の人は言っていた。

 

でも名前の一致なんて珍しくは無い。苗字も言ってなかったし、確証が無いから分からない。

 

その人とは2、3日一緒に行動した後、別れた。

 

『またどこかで会えたら会いましょう。』

 

と、言い残して。

 

「会えるかしら・・・?」

 

天を仰いで呟く。もし会えるのならあたしも会いたい。聞きたいこといっぱいあるんだもん。

 

「姉・・・ちゃん・・・。」

 

「!」

 

び、びっくりした。一瞬ディレムが起きたのかと思ったけど、寝言だった。

 

そうだよね、一番お姉ちゃんに会いたいのは彼なんだよね。

 

あたしはそっとディレムの頭を撫でる。憎らしい程にぐっすりと寝ていて、撫でられていることにすら気付いて無さそう。

 

「それにしてもこいつ、「姉ちゃん」って呼んでるんだ。」

 

クスッと思わず笑いが出た。さっきは「姉」なんてカッコつけた呼び方してたのに。大人びた見た目と行動とは正反対に、時々子供っぽい部分があって、愛嬌を感じちゃう。

 

「会えると良いね、お姉ちゃん。」

 

寝息を立てているディレムに語りかける。当然返事は無いけどね。

 

ガサガサガサ・・・。

 

漂う暗雲

目が覚めた。太陽が木々の隙間から差し込み、薄明光線を作り出している。何とも神々しい現象だ。

 

「爆睡してしまった・・・。」

 

こんなにしっかりと睡眠を取れたのはいつ以来だろう。地球に来たからなのか、はたまた出逢った少女、レナのお陰なのか。

 

「済まなかったな、こんなに寝るつもりはなかったんだが。でも俺も3時間程したら起こしてくれと言っただろう・・・。」

 

周囲を見回す。だがしかし、どこを探しても、レナの姿は見つからなかった。

 

その代わり、レナのしていた小さいポーチだけが地面に置き去りにされていた。

 

「・・・・・・レナ?」

 

続く

 

 

あとがき

シカの肉、ジビエと呼ばれることが多い肉ですね。一度、伊豆のレストランで食べたことがあります。ビビンバだったのですが、シカの肉少なくて、正直食べた気がしませんでした(笑)

イノシシの肉も食べたことありますが、物凄い固いです。と言っても、ゴム肉という訳じゃなく、噛む程に味が出てくるような、良い肉です。

さて、本編ですが、突然消えたレナは一体どこに行ってしまったのか。次回はいよいよ第一の秘宝のある場所へ辿り着きます。

 

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