【秘宝捕獲物語】【AREA4】生け捕りにされた姫君

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~今までのあらすじ~

惑星テテュスから来たハイランダーディレムと、異世界「地球」でトレジャーハンターとして10の「秘宝」を追うレナ。魅せられたディレムの能力に秘宝探しを協力するよう頼み、2人はグランデ・アチェロを探し始める。しかし、一晩が過ぎディレムが目を覚ますと、そこにレナの姿は無かった。

前回のお話

【AREA3】前触れの夜

 

 

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最悪の事態

「レナ・・・?」

 

目が覚めた時、忽然と彼女の姿が消えていた。

 

愛想尽かして居なくなってしまったのか?いや、だがなら何故ポーチだけ残されている?

 

おかしい。

 

何だか妙だ。ハッキリと言い切れないが、嫌な予感がする。

 

不測の事態に混乱はありつつも、出来る限り冷静になり、周囲を確認する。

 

他に残された手掛かりは無いだろうか?

 

地面を観察してみる。すると、幾つか見慣れぬ足跡があることに気付いた。

 

「これは・・・俺とレナの物じゃ無いな。」

 

靴跡が明らかに違う。先端が尖っているし、幅も広い。

 

「数は2、いや、3か?」

 

茂みから現れた靴跡は、レナの居たとおぼしき場所に行き、そこから茂みへと戻っている。

 

「俺としたことが・・・。」

 

不覚だ。戦場の時は、睡眠時にも注意を払い、敵が現れれば即座に対処するよう訓練を受けて来た。

 

それが、何だこのザマは・・・。

 

敵に全く気付かなかったどころか、あまつさえ一緒に居た者をさらうことすら許してしまったのだ。あいつと出逢ってから、俺は気が緩んでしまっていたのか?

 

「すまない・・・。」

 

必ず見つけ出してやるからな、レナ。

 

 

蛮族の住処

「うー・・・ん・・・?」

 

目が覚めた。木漏れ日が辺りに差し込み、既に朝になっていたと分かる。

 

「・・・あれ?」

 

どうしてあたし、立ったまま寝てるの?というか、なんで手足が動かないのよ!

 

頭を動かして辺りを見回してみる・・・・って、えええぇ!

 

あたし、木に縛り付けられてるっ!?

 

体を見ると、ガッチリと縄で木に固定されていた。

 

「意味分かんないよ・・・。」

 

思わず弱々しい声が漏れた。どうしてこんなことになって、こんなところにいるのか全然頭が追い付かない。ディレムの姿も見えないし、ここは一体どこなの?

 

「やっとお目覚めかい。」

 

ビクッとして声のした方を振り向くと、腰に剣を差したガタイの良い男が3人立っていた。

 

「夜中の真っ暗な森で担いで来るのは大変だったんだぜ?」

 

やたら大袈裟な言い方をしながら、気味の悪い笑いを浮かべながら男の一人が付け加えて来た。

 

「・・・何なのよ、あんた達。」

 

「見て分からねぇか?俺達は盗賊よ。」

 

盗賊?ああ、どうりで粗末な格好をしている訳ね。

 

「その盗賊が、あたしに何の用よ?」

 

「そりゃ勿論、お頭の嫁にするのさ!」

 

「・・・・・・・は?」

 

今、こいつ、何て?

 

「だからよぅ、お前はお頭の妻になるってことよ。」

 

ちょっと、何言ってるか、分かんない。

 

「だーれーがー盗賊なんかと結婚なんてするもんですか!!絶対にゴメンよ!」

 

周りを取り囲んでいる盗賊達に向かってハッキリ言ってやった。

 

すると盗賊の一人がやれやれというしぐさをしながら、

 

「お嬢ちゃん、あんた、自分が今どんな状況だか分かって無いだろ。」

 

近寄ってきてあたしの顎を指で掴む。

 

「生かすも殺すも俺達次第なんだぜ?あんまり機嫌を損なわせない方が身の為だぞ。」

 

「うっ・・・さい!」

 

「ぐっ!」

 

あたしは縛られた両足で盗賊の足を踏んづけてやった。

 

「べーっ!だっ!」

 

「ちくしょう、やりやがったなこの女!」

 

男達は歩み寄り、襲い掛かってきそうになったところで、

 

「・・・何を騒いでいる?」

 

突然聞こえてきた声に盗賊達がビクッとなり、急に静かになる。

 

ゆっくりと盗賊達が振り向きながら、

 

「お頭・・・。」

 

呟くと一斉にひざまづいた。

 

「手荒な真似はするな。」

 

「はっ!」

 

「お頭」と呼ばれた男があたしの所に来る。

 

「すまなかったな、我の手下達は少々粗暴でな。」

 

「・・・何でもいいけど、早くあたしを元の場所に帰してよ。」

 

「それは出来ぬ。こいつらが言っていたように、お前は我の妻になるのだ。」

 

こいつ、一見教養がありそうに見えるけど、実際は他の盗賊達と大差無い。横暴で傲慢、所詮は盗賊ってことなのね。

 

「きっとあいつが・・・、」

 

ボソリ、とあたしは呟く。

 

「あいつ?」

 

「ディレムが助けに来てくれるわ。そしたらあんた達なんてケチョンケチョンにやられちゃうんだから!」

 

すると盗賊の一人が、

 

「あのマヌケのことか?」

 

「何ですって!」

 

「俺達がお前をさらっても、全く起きやしないマヌケじゃねーか。捜しになんて来るわけ無いだろ。」

 

ドッと男達の間で笑いが起こる。悔しい・・・あたしじゃ何も出来ない。言い返すことすら出来ない。

 

お願いディレム、助けてっ!心の中で強く念じ、叫んだ。

 

きっと・・・あんたなら・・・あたしを・・・。

 

 

 

 

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よぎる遠い過去

「確実に、近付いてるな。」

 

レナをさらった奴らの居場所に少しずつだが近付いていることが分かる。

 

鏖術の訓練では対象を追って見つけ出すというのも組み込まれていた。

 

嫌と言う程修行させられたし、実際ハイランダーとして活動していた時もごく当たり前のように行っていたことだ。造作も無い。

 

最もテテュスでは地面は草木は皆無に近かったし、「自然」で行うのは始めてだったが基本は変わらない。

 

-匂いを追い、足跡を辿る-

 

それだけのことだ。

 

だが、何故俺はあの女を、レナを助けようとしているんだ・・・・・?

 

ダブらせている。そうかもしれない。頭では否定し、忘れようとしているはずの「アイツ」を深層では忘れられず、思い出してしまっているのか?

 

『ディレム、あたし、後悔なんて・・・して・・・ないよ・・・・・。』

 

目を瞑ると、あの時の後景が浮かぶ。俺が好きだった女が、目の前で死んだ、あの日のことを・・・。

 

「ギャハハハハ」

 

突然、微かに男達の下卑た笑い声と、女の悲痛にも似た声が聞こえて来た。

 

「見つけた・・・。」

 

足音を殺して近付き、そっとナイフの柄に手を触れた。

 

「お仕置きの時間だ。」

 

ナイフをシースから引き抜くと同時に、俺は藪の中から風の如き速さで飛び出た。

 

 

一筋の光

「ぐぁっ!!!」

 

「なっ!!!」

 

「がぁっ!!!」

 

いきなり盗賊の男達が悲鳴を上げ、倒れ込んだ。何?一体何が起きてるの!?

 

「お、かし、ら・・・っ。」

 

十数人と居た盗賊達は一瞬にして地面に伏し、ピクピクと身体を痙攣させている。全く頭が付いて行かないんだけど。って、もしかして・・・!

 

「よう、あんたがここのボスか?」

 

「ディレム!!!」

 

思わず叫んでしまった。一瞬幻かと思ったけど、間違い無い、ディレムだ、やっぱり来てくれたんだ!

 

「ほう、なかなかやる。」

 

盗賊の長は、一撃でやられてしまった手下達に驚く訳でも無く、ただ興味深そうに目の前に現れた一人の男を見つめていた。

 

「我の手下達を瞬時にやってしまうとはな。」

 

「お前のところの手下は随分レベルが低いな。実戦が足りて無いんじゃないか?」

 

一瞬、盗賊の頭は顔をしかめたけど、すぐに不敵な笑いを浮かべて、

 

「それは失礼したな。ならば我がその償いをさせてもらおうか。」

 

そう言うと、背中に差してあった巨大な剣を引き抜いた。

 

巨大過ぎる・・・。刀身が2メートルくらいあり、幅はガッチリとした男の体格とあまり変わらず、厚さも斧のように太い。例えるなら、そう、丸太に刃を付けたような、感じ。

 

「我にこれを抜かせた者は久し振りだ。」

 

ズシン、ズシンと地面を揺らす程の振動と共に男がディレムに歩いていった。

 

 

切って落とされた火蓋

「ふむ・・・。」

 

これまた随分でっかい得物を取り出したもんだ。迫力は充分にある。

 

「我が名はソル。この盗賊の頭なる者だ。」

 

ソルと名乗った男は全身が筋肉の鎧に覆われていた。大きく張り出した大胸筋、棍棒のように太い大腿四頭筋、脚と同じくらい膨れ上がった腕橈骨筋。身体のあらゆる箇所が鍛え上げられている。動物と思われる頭蓋骨を被り、毛皮で出来た衣服を着ていて、筋肉の強大さがこの男の威圧感を高めている。

 

「そっちが名乗ったんじゃ、俺も名乗らない訳にはいかないな。」

 

ナイフをシースから抜き、一呼吸置く。

 

「ディレム、だ。」

 

ソルは、ふん、と鼻を少し鳴らし剣を構える。

 

「娘の為にここまで来たという訳か。良かろう。娘を取り戻したくば、我を倒してみるが良い。」

 

そして右足を引き、腰を落とす。

 

「行くぞ。」

 

グンッとソルは強く踏み込み、こちらに接近する。

 

カキンッ!!!

 

ソルの振り下ろした剣と俺の切り上げたナイフとがぶつかる。

 

そのままナイフで剣を弾き、お互いの距離が再度開ける。

 

「我の初撃を受け切るとは、ディレムとやらなかなか良い腕をしているな。」

 

「あんたは口の割りに大したこと無いな。」

 

「何・・・?」

 

「太刀筋がまるでなっていない。どうだ?お前さえ良ければ、俺が教育してやろうか?」

 

ソルの顔色がみるみる赤くなっていく。

 

「貴様、後悔することになるぞ・・・!」

 

「そりゃあんたの方だ。」

 

今度はこちらから攻めに行く。

 

「神速」で間合いを詰め、素早くナイフで突きの連撃を浴びせる。

 

「うぅ・・・ぐっ!!」

 

数撃、ソルの皮膚に刺さり、血が飛び散る。

 

一度バックステップで後方に飛び、ソルの様子を伺う。

 

しかし、

 

「甘いな、この程度じゃ我を倒すことなど出来ぬぞ。」

 

切られた所から血を出しながらも、全く倒れる気配の無いソル。

 

「なるほど、打たれ強さだけはあるってことか。」

 

俺は皮肉を込めながら言った。

 

「何度切られようと、この強靭な肉体は倒れることを知らぬのだ。」

 

「無駄口を叩いている暇があったらとっとと掛かってきたらどうだ。」

 

「言われんでもそうするわい!行くぞ!」

 

ガキン、キィイン・・・

 

金属のぶつかり合う音だけが辺りに響き渡り、レナと目を覚まし始めた盗賊達が静かにその戦いを見守る。

 

「勝って・・・ディレム・・・!」

 

レナの声が聞こえる。縛られているレナを横目で見る度に心が締め付けられるような気分になる。

 

待ってろ、すぐに助けてやるからな。

 

 

緋色に燃え上がる桜の花びら

「そりゃ、そりゃ、でえぇい!!!」

 

大振りな動きで大剣を振り回すソル。モーションが大きいから、体捌きだけでかわすのは容易い。

 

それに、分かったことがある。

 

こいつは単に打たれ強いのとパワーがあるだけだ。スピードやテクニックと言った要素は皆無に等しい。

 

「頃合いかな。」

 

相手の手の内を見てから仕留めるのが戦闘においての定石だ。分析しきった今なら確実に倒せる。

 

ソルの攻撃が止んだ一瞬の隙を突いて、ナイフを逆手に持ち変え、懐に潜り込む。

 

「緋炎桜」

 

ヒュァ・・・ザザザザザザッッッ!!!

 

至近距離から息つく暇も与えぬ猛斬撃。

 

真紅の「花びら」が数多に舞い、ソルはズウゥンという音と共に倒れた。

 

「バカ・・・な、この我が・・・。」

 

俺は血の付いたナイフを払い、シースにゆっくりと納める。

 

「確かにあんたはタフだ。」

 

地面に倒れたソルは顔を上げて俺の方を見る。

 

「だがどんな奴でも体力が無尽蔵にある訳じゃ無い。攻撃を受け続ければいつかは力尽きる。単調な動きと、刃物程度じゃ倒れないと高をくくったのがあんたの敗因さ。」

 

筋肉の筋に沿って正確に、刃物による連撃を与えて全身を切り刻めば、必ず多量出血で戦闘不能に陥る。数え切れない斬撃を加えるこの技は、むしろ強大な身体の相手に適している。

 

「・・・悔しいが、ディレム、貴様の勝ちだ。娘は返そう。」

 

ソルが手振りをすると、手下の一人がレナの縄をほどいた。

 

勢いよくレナが走ってきて、俺に抱き付いた。

 

「ディレム・・・もう会えないかと思った・・・。」

 

応えるように抱きしめ、レナを宥める。

 

「悪かったな、俺が不甲斐ないばかりに。」

 

「ううん、もういいの。ありがと助けてくれて。」

 

 

戦いの結末

ソルが手下達に支えられながらゆっくりと立ち上がる。

 

「我々は今日で盗賊を解散することにしよう。」

 

「なっ!お頭何を・・・。」

 

手下達が驚きを隠せないと言った感じで動揺する。

 

「ディレム、貴様と刃を交えていて我は気付いたのだ。我々は今まで何をしていたのだ、と。」

 

よろけながらもソルは改めて立ち直し、俺の目を見て語り始める。

 

「ここにいる手下達はな、家族が不仲で家出した者、棄てられて孤児になった者、犯罪を犯し仕事を失った者、そういった者達の集まりなのだ。」

 

俺とレナは身体を離し、黙ってソルの話に耳を傾ける。

 

「かくいう我も孤児だ。それでいつしかヤケになり、気が付いた時には盗賊の頭となり、悪事を尽くした。」

 

ソルの目は、どこか遠くを見つめているようで、焦点が合っていない。多分無意識に、レナが俺の手を握ってきた。

 

「不公平で、報われぬ世の中を掻き乱してやりたい。そんな世間から見たらみっともない理由で、我々盗賊は生きて来た。」

 

ポト、と一粒の光が、ソルの目から零れ落ちた。

 

「だがもう一度、心を入れ替え、新たに歩んでみたいと思った。先程のことがきっかけとなったのだよ。」

 

いつの間にかソルの目は、強い決心の宿るような眼差しへと変わっている。

 

「ディレム、貴様との戦いは我にとって、いや、我々にとって大きなものであった。礼を言わせて欲しい。」

 

周りの盗賊達も自然と姿勢を正し、皆涙を流していた。

 

「あんたなら出来るさ、ソル。」

 

今なら不思議と心の底からそう思う事が出来る。

 

「いずれ相まみえることがあれば、また手合わせ願いたい。無論、我に手加減なぞ不要だ。」

 

「そのつもりさ。」

 

柔らかい風が周囲の草木を揺らし、ザザ、と優しい音を立てていた。

 

 

 

奇妙な囁き

盗賊達が去ってゆくのを見届けながら、レナに話しかける。

 

「大丈夫だったか?」

 

何故か照れ笑いながら、

 

「えへへ、大丈夫よ。直接危害を加えられた訳じゃ無いわ。」

 

そうか、と俺が言うといきなりレナが大きな声で、

 

「って、ちょっとディレム!あんた凄い怪我してるじゃない!!」

 

指差された場所に目をやると、肩から思い切り血が出ていた。

 

「本当だ。全く気付かなかったな。」

 

無意識に痛覚を遮断していたのだろうか。

 

「もう!あんたってすっごく強いのに、結構変な所で鈍いんだからっ!」

 

レナが俺の渡したポーチから消毒液と包帯を取り出した。

 

「じっとしててよ、すぐ手当してあげるから。」

 

「いいよ別に。こんなの掠り傷だ。ほっときゃすぐ治る。」

 

「ダメ!!!バイ菌入ったらどうすんのよ!」

 

やれやれ、と言いながら言われた通りに手当てを任せる。まあ何はともあれ、レナが無事で良かった。

 

「やっと去ってくれたようじゃな・・・・・。」

 

突然聞こえたしわがれた声に俺とレナは素早く首を声の方へ向ける。

 

すると、

 

「何年ぶりじゃ、この地が平和になるのは。」

 

岩と見紛う程の途轍もなくいびつで巨大な人の言葉を話す樹が、そこには、あった。

 

続く

 

~秘宝捕獲物語の用語辞典~

緋炎桜(ひえんざくら)

相手の全身の筋肉の筋を刃物で幾度も切り刻むことで、多量出血を起こさせ駆逐する技。名前の由来は飛び散る血飛沫が、まるで真っ赤に燃え上がる桜の花びらのように見えることから。「桜」という雅な響きからは想像出来ない程に残忍で、大抵の相手は死に至る。欠点は獲物が小さいと狙いを定め辛く、決められない。

あとがき

今回はちゃんとしたバトルシーンを書いてみたつもりです。元々とある格闘技を13年やっていたので、戦いの描写は何とかなると思っていたのですが、素手と刃物じゃ勝手が違いますね。結構難しく感じました。でもそれなりに書いていて楽しかったです。話の最後に出て来た、言葉を話す巨樹は一体?秘宝発見を匂わせる次回をご期待下さい。

 

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