【秘宝捕獲物語】【AREA5】秘宝携えし霊楓

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~今までのあらすじ~

惑星テテュスより転移したハイランダー、ディレムと、異世界「地球」で10の「秘宝」を追うトレジャーハンター、レナ。ディレムの卓越した力を目の当たりにし、最初の秘宝グランデ・アチェロを探す2人。レナは盗賊にさらわれ、戦いの末ディレムは救出に成功する。喜ぶ二人だったが、突如聞こえた謎の声に振り返ると、巨大過ぎる樹が「喋って」いた。

前回のお話

【AREA4】生け捕りにされた姫君

 

 

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ヤーゲンフェルトの霊楓

「なっ・・・!?」

 

樹が喋っている。

 

樹、というよりは巨大な岩。幹は10メートルはあり、枝は腕のように分かれ、空を仰いでいる。その枝は天に届くのではないかというくらい高く、上の方が霞んでしまっていた。

 

「礼を言うぞ、人間。あの盗賊共が住み着いて以来、騒がしくて敵わなかったのでな。」

 

大地が喜んでいるかのように、ゴゴゴと地鳴りし、サァーと心地好い風が吹く。

 

「今までこうして眠っていたのじゃが、これでまた目覚めることが出来るとはの。」

 

俺が驚きのあまり動けずにいた横で、レナは目を輝かせている。

 

「ひょっとして・・・あなたがグランデ・アチェロ?」

 

グイと身を乗り出すようにして、「喋る樹」の前に歩み寄るレナ。こいつは躊躇うということを知らんのか?

 

「グランデ・アチェロ・・・大楓か。確かにワシのことをそう呼ぶものもおるな。」

 

また大地がゴゴゴと低い音をたてて僅かに揺れる。

 

「ワシの名前はドリアード。このヤーゲンフェルトを見守る精霊のようなものじゃよ。お主のようにグランデ・アチェロと呼ぶ者も多いがのう。」

 

「やったよディレム!ここが秘宝の眠る場所で間違い無さそうよ!」

 

レナが嬉しそうに飛び跳ね、ハイタッチしてきた。おいおい、はしゃぎ過ぎだぞ。

 

「秘宝?お主らの言う秘宝とは、これのことか?」

 

ドリアードが腕のような枝を動かすと、光輝く玉が空間に現れた。

 

「これは霊楓の樹玉と言ってな、持ち主を守る力があるんじゃ。」

 

樹玉はゆっくりと降りて来て、そっとレナの手の中に納まった。

 

「ヤーゲンフェルトを守ってくれた、お主らにこそこの秘宝は相応しいじゃろう。持ってゆくが良い。」

 

霊楓の樹玉と呼ばれた玉は琥珀色に輝き、見る角度を変えると中に入った無数の赤紫色と青緑色の細い線が見え隠れする。

 

「なんて美しい光なの・・・。それにほんのりあったかい。」

 

うっとりするような表情で、レナが樹玉を見つめていた。

 

よくよく見ると、樹玉はうっすらと七色のオーラを纏っていて、神々しくもある。

 

加えて「お香」のような柔らかで、気を落ち着かせる香りも漂い、盗賊との戦いで疲弊していた精神が回復していく。

 

それまで秘宝には興味が無かった俺だが、見つけた時の達成感のようなものを感じ、少しだけ感動していた。

 

「かつてこの森は様々な動植物が蔓延る、素晴らしい森じゃった。」

 

ドリアードが語り始める。威厳と風格に満ちた、力強い声。

 

「じゃがある時、あの盗賊達が現れ、ここを根城にしたのだ。毎晩のように宴を開き、森は次第に荒らされていった。」

 

「ワシは奴らを追い払うことも出来ずにただ見ていることしか出来なかった。情けない話じゃがな。」

 

「言わばお主らはこの森を救ってくれた英雄じゃよ。感謝するぞ。」

 

いつしかドリアードの周りには沢山の動物達が集まり、俺達を優しい眼差しで見つめていた。

 

復活の翁

「ようやく見つけられたようじゃの、我が孫よ。」

 

またしても謎の声。今度はしわがれているが、元気の良い声だ。しかし一体どこから?

 

「え?じいちゃん!?」

 

レナが驚いたように辺りを見回す。だが俺とレナ以外、人の姿は無く、出所が分からない。

 

「ここじゃよここ。」

 

レナのポーチの中から聞こえてくる。レナがポーチを探り、取り出したのが、

 

「トレジャートレース!?」

 

「ピンポーン!ワシはこの中じゃ。」

 

レナの目がパチクリと瞬きし、頭が追い付かないと言った表情をしている。

 

「死ぬ前にワシはこのトレジャートレース、トレトレと意識を共有させ、こうして死んだ後も活動出来るようにしておいたのよ。どうじゃ、ワシ、凄いじゃろ?」

 

「ほっほっほ・・・久しいのう、博士よ。」

 

ドリアードがトレトレから聞こえる声に「博士」と語りかける。

 

「おう、ドリアード!お前さんにまたこうして逢えるとはの。何年ぶりかのう。」

 

「博士?」

 

「うちのじいちゃん、生前は学者としてあちこち世界を回ってて、「博士」なんて呼び名もあったのよ。前に説明したじゃない。」

 

レナが小声で耳打ちする。

 

「・・・ってあれ?2人共、知り合いなの!?」

 

今日のレナは表情がコロコロ変わって面白い。百面相みたいだ。

 

「そうじゃよ~。ワシがまだピチピチで世界中を冒険していた頃、ドリアードに出逢ったんじゃ。お前さんは昔と変わらんのう。」

 

「そういう博士は声がすっかり老け込んでおるわ。」

 

機械と樹が昔話に花を咲かせている。端から見れば、何ともシュールな光景である。

 

蚊帳の外状態となった俺とレナは、顔を見合わせ、溜め息をついていた。

 

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秘宝を手にすべき者

「兎に角、じゃ、ジグに眠る秘宝は悪しき者の手に渡ってはならん。」

 

「その話、前も聞いたわよ。」

 

頬杖をつきながら呆れ顔のレナ。

 

「大事なことだからの。何度でも言ってやるわい。」

 

「具体的にはどうなるんでしょうか。」

 

俺は博士に問い掛ける。

 

「そうじゃの・・・秘宝にはどれも特別な力が込められておる。仮に念じただけで一帯を呪いにかけられる秘宝、があったとしよう。」

 

「それをもし、悪しき者が使えば・・・どうなるか分かるじゃろ?」

 

世界は未曾有の厄災に見舞われる・・・。

 

「なるほど。」

 

「幸いなことにさっきまでこの場所に居座っていた盗賊達は秘宝のことを知らなかったようじゃがの。」

 

しばらく黙っていたドリアードが付け加える。

 

「最も、奴らが秘宝を手にしたところで、大した災厄に見舞われることも無かろうが、な。」

 

ほっほっほ、と笑いを交えて言うドリアード。

 

「何にせよ、秘宝は絶大な力を秘めていて、所持する者によって、世界を救うことも、滅ぼすことにもなり得るということじゃよ。」

 

「レナ、そしてディレム、改めて言おう。ジグに眠る残り9つの秘宝を必ず見つけ出すんじゃ。悪しき心の持ち主に渡る前に、な。」

 

レナと俺はコクリ、と強く頷く。

 

「心配要らないわ、あたし達が絶対全て集め切ってみせるから!!」

 

おくびにも無く言い張るレナは、少しだけカッコ良く見えた。

 

無邪気なる刺客

「それで?次の秘宝の当てはあるのか?」

 

ドリアードに別れを告げ、再びヤーゲンフェルトの中を歩きながら、レナに尋ねる。

 

「そうねぇ・・・ここからだとディラーレクティスかしら。」

 

「ディラー・・・何だって?」

 

「ディラーレクティス!『魔蜘蛛の住む滝』という意味だそうよ。」

 

魔蜘蛛・・・大層な名前だ。想像しただけで体が僅かに震えた。そんなの倒せるのだろうか?

 

「楽しみよね~次は一体どんな秘宝なのかしら・・・!」

 

俺の不安を余所に、レナは一人浮かれている。

 

「浮き足立って、またさらわれるなよ?」

 

「ちょっ、何よその言い方!大体ねぇーあの時あんたが起きててくれればそんなことにはならなかったんだからね!!」

 

うっ・・・そこを突かれると痛い。

 

「悪かったよ。」

 

盛大に墓穴を掘り、俺の立場が無くなる。俺もまだまだ未熟・・・だな。

 

「そんなことよりほら、早く次の秘宝を探しに行きましょ!」

 

レナが俺の手を引いて、進もうとした、のだが・・・

 

「そんなこと言わずに僕と遊んでくれませんか?」

 

「!?」

 

突如聞こえた謎の声に驚き、振り向いた瞬間、背筋が凍り付くような殺気を感じた!

 

「伏せろ!!!」

 

俺が咄嗟にレナを庇いながら、地面に倒れ込む。

 

刹那、さっきまで俺達が立っていた位置を、何かが掠めるような音が通り抜けた。

 

「へぇ、まさか避けるなんて。」

 

俺とレナが顔を上げてみると、

 

「僕のこの技が避けられたのは初めてですよ。」

 

銀髪で和服の、大太刀を手にした少年が微笑みながら立っていた。

 

「いきなりで悪いんですけど、」

 

少年は大太刀を構え直しながら、

 

「死んでもらえますか?」

 

続く

 

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