【秘宝捕獲物語】【AREA6】予期せぬ刺客、「屠奪の銀狼」

NO IMAGE

~今までのあらすじ~

惑星テテュスより転移したハイランダー、ディレムと、異世界「地球」で10の「秘宝」を追うトレジャーハンター、レナ。ディレムの卓越した力を目の当たりにし、最初の秘宝グランデ・アチェロを探し「霊楓の樹玉」を手に入れる。次なる目的地「ディラーレクティス」を目指す2人の目の前に銀髪で和服、大太刀の少年が現れ、突如斬りかかられた。

前回のお話

【AREA5】秘宝携えし霊楓

 

 

微笑み絶やさぬ殺人鬼

『死んでもらえますか?』

 

先程少年の口にした言葉を思い出す。

 

何者だ、こいつは?

 

「いきなり現れて、死んでくれとはどういう了見だ?」

 

俺は立ち上がり、ナイフを引き抜きながら問い掛ける。

 

「了見も何も・・・僕はただ、」

 

フッと少年が視界から消える!

 

キィィン!!!

 

「人を殺したいだけなんですよ。」

 

「!!」

 

寸でのところで、大太刀を受け止め、力で少年を弾き返す。

 

何だ・・・今のは・・・?あまりに速すぎて反応速度がギリギリだった。

 

俺の使う「神速」とも似ているが、あくまでも自然な動作で相手に動きを悟られず、瞬時に間合いを詰めてきた。

 

「驚きました?でも僕もビックリです。この「瞬脚」の速さに反応出来るなんて。」

 

「瞬脚」・・・まさに瞬く間に間合いを詰める驚異の運歩だ。

 

「僕の名前はリュウ・シエン。職業はそうですね・・・人殺しをやっています。」

 

表情こそ穏やかで、変わらず微笑み続けているが、それはおよそ感情自体が欠落しているように思える。

 

リュウと名乗る少年はにこやかな雰囲気で語りかける。

 

「簡単に仕留められると思ったんですけど、中々やりますね。久々に面白い殺しが出来そうです。」

 

リュウは再度構えを取り、攻撃態勢に入る。

 

来る・・・!!!

 

「行きますよ。」

 

またしても瞬時に目の前から消える・・・「瞬脚」っ!

 

「くっ!」

 

ガギィン!!!

 

横から薙ぎ払うように繰り出された剣撃に対し、峰に近い部分をナイフで受ける。

 

「遠心力によって生み出される大太刀の圧倒的なパワーを峰で受けることで力を半減させたんですね。ふふっ良い判断です。」

 

「そうやって余裕ぶっこいてると足元掬われるぜ?」

 

クンッ!

 

俺は相手の力を利用し、ナイフを引っ込めながら身体を回転させ、文字通り下段の足払いをお見舞いする。

 

ガッ!

 

「おっと!」

 

足払いを受けたリュウは一瞬よろめきながらも、すぐに後方に宙返りし体勢を立て直す。

 

「こんな返し方をしてくるなんて・・・。あなたに手加減は必要無さそうですね。」

 

リュウは大太刀で空を切り払い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

 

広告

屠奪の銀狼

「どうなってんのよ・・・!!」

 

何なのあいつ。背は小さくて優男みたいなのに、自分よりもずっと大きい刀を自在に振り回してる。

 

しかもあのディレムと互角に戦うなんて。

 

「リュウって奴、何者なのよ・・・。」

 

「もしやあいつは・・・。」

 

急にポーチの中のトレトレが喋り出す。

 

「わっ!何よじいちゃん!」

 

トレトレを取り出すと、じいちゃんが神妙な声で言う。

 

「銀髪、和装、大太刀・・・間違い無い、奴は「屠奪の銀狼」じゃ。」

 

「「屠奪の銀狼」?」

 

「人を殺すことが快感で、女子供関係無く殺害する、快楽殺人鬼じゃよ。幼い見た目と柔和な雰囲気で相手を油断させ、容赦無く切り殺すんじゃ。たった数時間で村一つ滅ぼすなんて朝飯前で、地図から消えた村は数知れないと言われておる。」

 

恐怖から無意識に体が震えた。

 

快楽殺人鬼?

 

「何でそんな奴がこんな所にいるのよ!」

 

「奴は当てもなく陸地をさ迷い、手当たり次第殺していく・・・。理由なんて無いんじゃよ。ただ奴が放浪し、偶然にも出逢わせたのがワシらじゃった、ということじゃろう。」

 

ガックリ、と肩が落ちた。

 

最悪・・・。あたし達、どうなっちゃうの?

 

「でもでも、ディレムなら!きっと勝てるわよね!?」

 

奮い立たせるように明るい声を出し、じいちゃんの宿るトレトレをぎゅっと力一杯握り締める。

 

「グェッ!・・・・・難しいかもしれん。」

 

「何でよ!今もこうして対等に渡り合ってるじゃない!」

 

「本当にそう見えるか?」

 

じいちゃんは重苦しい声で言った。

 

「恐らく、ディレムはリュウに・・・勝てんじゃろ。」

 

「ちょっとじいちゃん、嘘でも言って良いことと悪いことがあるわよ?」

 

「嘘なもんか、よく見てみなさい。確かにさっきまでは互角であったが、ディレムの方が苦しくなってきておる。」

 

パッと顔を上げて2人の戦いを見ると、言う通り、ディレムは明らかに圧されて来て、表情が険しくなっていた。

 

「あのリュウという少年、単に剣術のみに秀でてる訳では無い。」

 

「どういうこと?」

 

「殺し、そのものに長けているんじゃ。」

 

「勿論ディレムもハイランダーだし、対象を殺してきたこともあったじゃろう。しかしな、それはあくまで仕事の為。彼は何も、殺すことそのものに悦びを感じていた訳ではあるまい。」

 

「だが、あのリュウという少年の表情を見てみなさい。楽しくて仕方無いという感じじゃろ?」

 

「笑ってる・・・。」

 

楽しさ、いや、愉しさで充足され、これ以上に無い快楽に支配されているように思える。

 

ディレムが負ける?そんなこと、絶対にあってほしく無い。

 

やられちゃダメ・・・、あんたなら負けないわよね。

 

「負けないで!ディレム!!」

 

力の限りあたしは叫んだ。

 

「そんな意味の分からない奴なんかに殺されたりしたら、絶対に許さないんだからねっ!!!」

 

 

逸脱した力

レナの必死に叫ぶ声が聞こえる。

 

「そうしたいのは・・・山々なんだが、なっ!」

 

思いの外強い。事実こうして、中々反撃の糸口を見い出せずにいる。

 

リュウの身長より遥かに長い大太刀を易々と振り回しているところを見ると、相当な使い手だ。

 

それに先程から狙ってくる場所は急所ばかりを突いてくる。

 

水突、血海、章門、それに水月。

 

確実に俺を殺すつもりで刃を向けていることは明らかだ。

 

紙一重のところでかわしているが、この正確さは並じゃない。

 

例えどんなに身体を鍛えた人間でも、急所を刃物で貫かれてしまえば戦闘不能に陥ってしまう。

 

「ふふっ。あなたのナイフ捌き、相当に訓練されたものですね。」

 

変わらずにこやかな表情を崩さずにいるリュウ。

 

「見て下さい、僕の愛刀「血酔闇霧」も久々に生きの良い獲物に出逢えて悦んでるみたいです。美しい輝きでしょう?」

 

「血酔闇霧」と呼ばれた刀はまるで闇のように真っ暗な刀身。もはや漆黒そのものだ。

 

「幾人もの人を斬り、血を吸うごとに黒さを増していく・・・あなたの血を吸えば、この刀もきっと満足してくれるはずです。」

 

ヒュアッ!!

 

「そんなにも人殺しが楽しいか?」

 

リュウの袈裟斬りを体捌きでかわしながら問いかける。

 

「そりゃもう。それこそ僕の生き甲斐で、全てですから。」

 

何の迷いも無い、言葉と太刀筋。

 

「狂ってやがる・・・。」

 

狂人。この少年に最も似付かわしい、呼び名。

 

一体何がこの少年を歪め、堕とし、狂わせてしまったのだろうか。

 

広告

地獄の過去

「僕はね、見捨てられた存在なんですよ。」

 

キイィン、キン、キン、キィン!!

 

リュウの突きによる連撃をナイフで受ける。

 

「両親からは毎日のように虐待され、村の人々からも忌み嫌われていました。」

 

話しながらも攻撃の手を休めぬリュウ。

 

「叩かれるなんてのは優しいもので、大体は棘の付いた鞭で滅多打ちにされるか、包丁で死なない程度に切り刻まれてました。」

 

一瞬、ほんの一瞬、リュウは表情を歪ませたように見えたが、その判断すらつかぬ内に元の読めない表情に戻る。

 

「両手両足を縛られて沸騰したお湯に入れられたり、寒い真冬に全裸で外に放置、なんてこともありましたね。」

 

内容は残酷極まり無いのに、話し方からは全くそれを感じさせない。むしろ遠い過去、「どうでも良いこと」というように取れてしまう。

 

「その時はいつも思ってました。どうして僕は生まれて来たんだろう?僕は必要無い存在なんじゃないかなって。」

 

突きの連撃から、逆袈裟斬り、そのまま回転し、下からの斬り上げ。

 

「でもね、ある日気付いたんです。いらないのは僕じゃない、周りの人達なんじゃないか、とね。」

 

斬り上げをバックステップでかわされたリュウは、剣先を下ろす。

 

「だから、みんな、みーんな殺してやりましたよ。両親も、村人も、みんな。」

 

リュウは思い出に浸るように空を仰いでいる。

 

「その時から僕はね、「生まれ変わった」んです。」

 

風が、重々しく、吹き下ろしてくる。

 

「殺して殺して殺して尽くす、殺人鬼として。」

 

無意識に自分の身体が震えているのが分かる。得体の知れない恐怖。そう、まるで手の打ちようの無い、「怪物」と対峙しているような。

 

「目を覚ませ、リュウ。確かに人を殺めた咎は消せない。だが贖罪する方法は幾らでもあるはずだ。」

 

一縷の望みを賭けて俺は諭すように話し掛ける。

 

「もう、遅いんですよ。今更戻ることなんて・・・。それに、人を斬る快感を覚えてしまったら止めることなんて出来ないんです。」

 

漆黒に輝く刀身を舌で一舐めするリュウ。

 

「人殺し、他に道はありません。僕は死ぬか殺されるまで、止めるつもりなんて無いんですよ。」

 

リュウは目を瞑り、静かに深呼吸する。

 

「お喋りはこのくらいにしましょう。」

 

そう発したリュウからは今までに無い程の殺気を感じた。

 

 

 

血染めの結末

「そろそろ僕も血の臭いを嗅ぎたくて仕方無いんです。」

 

スッと大太刀の剣先を上に向けながら刀をリュウの顔と同じ高さまで持っていき、その動きがピタリと止まる。

 

「ディレム、あなたは僕の技で仕留めてあげましょう。」

 

そして刃を返し、勢い良く地面に向けて斬り下ろす!!!

 

「墜冥」

 

リュウが言葉を発すると同時に辺りに灰色の霧のようなものが立ち込める。

 

霧は範囲を広げ、俺とリュウを完全に包み込んだ。

 

臭いは無く、毒という訳でも無い。

 

だがその霧はあまりにも濃く、周囲は愚か、自分の手元すら見えない。

 

額を冷や汗が流れ、緊張感が増す。

 

どこから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!

 

上からっ!!!

 

しかし、そう気付いた時には遅く、既に大太刀の剣先は俺の脳天を正確に捉えていた。

 

「さようなら。」

 

ブシャアアア!!!!!

 

 

 

異形の少女

「!?」

 

今何かが切り裂かれたような音がした。

 

リュウが作り出した灰色の霧のせいで何が起きているのかあたしからは見えない。

 

でも、直感的にとても嫌な予感がする。

 

少しずつ霧が拡散して、2人の姿がハッキリ見えるようになってくる。

 

そしてその予感通り、最悪の結果が待ち受けていた。

 

「えっ・・・。」

 

そこには、右肩を斬り裂かれ、血まみれで片膝を付いたディレムと、血に染まった大太刀を持ち、見下ろすように立っているリュウだった。

 

「ウソ・・・でしょ・・・?」

 

目の前の出来事に頭がついて行かない。

 

ディレムが、やられた?

 

「うーん、惜しかったですねぇ。確実に仕留めたと思ったんですけど・・・。」

 

ただ1人だけ、この重苦しい空気に場違いな程陽気な声で、残念がるように喋るリュウ。

 

「あの視界がほぼゼロに等しい霧の中、瞬時に反応して急所を外したのは見事でした。」

 

リュウは大太刀をゆっくりと鞘に納める。

 

「気が変わりました。とどめは刺しません。今よりもっとあなたが強くなったら、また戦いましょう。」

 

「楽しみにしていますよ。」

 

そう口にすると、まるで神隠しのように目の前から完全にリュウは姿を消してしまった。

 

最後にニコリと優しげな微笑みを残しながら。

 

 

 

「うっ・・・。」

 

ディレムは苦しそうに呻きながら、なんとか立ち上がる。

 

「ディレム!!!」

 

あたしは叫びながら走ってディレムを抱きかかえた。

 

「ディレム!ディレム!しっかりして!!!」

 

回らない頭でただひたすらそう声を出すしか思いつかない。

 

「ああ、なんてことない。こんなの掠り傷さ・・・・・。」

 

グッタリと身体の力が抜け、気絶してしまった。

 

「ディレムッ!!!」

 

幾ら呼び掛けても返事は無い。

 

「まずいの・・・肩口がザックリと切り裂かれておる。」

 

トレトレからじいちゃんが言う。

 

「この出血量じゃ。早く手当てせんと命に関わるぞい。」

 

「分かってる、分かってるけど、あたしには・・・。」

 

一粒、大粒の涙があたしの目から流れ、ディレムの顔にポタリと落ちた。

 

どうすることも出来ないじゃない・・・。

 

このまま黙って灯が消えるのを待つしか無いの?

 

「せめて、どこかに治療出来るところがあれば・・・。」

 

「あの・・・・・。」

 

!?

 

後ろからかかる声。飴玉を転がしたように甘ったるく、可愛らしい声。

 

びっくりして振り返ると、そこには少女が木の陰から覗いていた。

 

「どうかなさったんですか?」

 

とても愛らしい見た目。顔つきも幼く、背丈もあたしよりずっと小さい、普通の女の子。

 

ただ一点、髪の間から出た両耳の先が尖っていることを除けば・・・・・。

 

続く

 

広告

 

 

秘宝捕獲物語カテゴリの最新記事