ドギツイ刺激のある林道を走りたい。
そう思われるマニアックな方もいらっしゃるだろう。
ジムニーやオフバイクであればドギツイのレベルが段違いなので、一般的なダート林道は易々進めるだろうが、ファミリーカーやスポーツカーであれば舗装林道でさえそこそこキツイ思いをすることも少なくは無い。
そして、千葉県にはファミリカーやスポーツカーにとって半端無くキツイが、走ろうと思えば最後まで走れる林道がある。
今回は千葉の無名だがエグいくらい道が荒れたダート林道を相棒TTで走破したレポートをお送りしたい。
林道東山線名無し分岐線
その林道は林道東山線名無し分岐線。林道標が存在せず、公式的な名称が不明な為一部でそう呼ばれている。ただ、林道東山線には「林道東山線1号支線」があるので、この林道は標こそ無いが「林道東山線2号支線」となる可能性が高い。
上の地図で書かれている林道香木原線は、林道渕ヶ沢奥米線や林道三間線、林道三島線とも接続されており、林道渕ヶ沢奥米線へ走り継げば国道410号線に出られるので、抜け道としてもよく使われる。
その林道香木原線から更に進むと林道東山線の分岐があり、暫く北上すると案内も何も無い、物寂しげなダートがある。そこが今回スポットを当てる名無し分岐線だ。
一般的に主要地方道や国道と接続する林道を幹線林道と呼び、幹線林道に接続する林道を分線林道、あるいは分岐線林道と言う。更に分岐線林道に接続する林道は支線林道と呼ばれる。君津市にある林道香木原線を幹線林道とすると分岐線林道である林道東山線から見れば支線林道になるが、林道東山線の北に走っている房総スカイラインから見れば林道東山線が幹線林道となり、名無しのこの林道は分岐線林道ということになる。
地図をご覧になれば分かる通り、林道の先はなんにも無い。登山道がある訳でも、茶屋がある訳でも無いのだ。こういった始点、あるいは終点が行き止まりとなっている林道を「ピストン林道」と呼ぶ。反対にどこか別の道路に出るのであれば「完抜林道」と言われる。
ちなみに千葉県道24号線には笹川湖に沈んで行く水没廃県道24号線がある。なかなか衝撃的な光景なので、興味があれば以下レポートをどうぞ。
房総丘陵に埋もれたピストンダート
荒れ+激荒れ=
走行中の路線は林道東山線。直進すれば房総スカイラインの途中に出る。だが今回の目的は左手に見える全く主張を感じない方の道路だ。
入線してすぐ、道はダートに変わる。一帯が山深い為ここに来るまでも結構重々しい空気だったが、ここは重さよりも荒々しさが目立つと言うべきか。尾根のような道であるので眺望は比較的優れているのだども、既に路面がキツい。よそ見して見とれようものなら即座に路肩に乗り上げ、JAFのお世話になることだろう。最も、JAFを呼ぼうにもどうやってこの地点を説明して、来て頂くかだが。
路面の荒れ具合は車を進めるに連れて増していく。道路中央に溝が出来ている。そのままTTで走ろうと思えば行けなくも無いが、タイヤに負担が掛かりそうで「避け」の一択しか選択肢は残されていない。だってこんな山奥でスタックしてJAFのお世話にn(ry
しかしこのすぐ後、マジでJAFのお世話になっても可笑しく無かった場面に直面する。
・・・嘘だろ(白目)・・・。
ご覧下さい、バックリと地が割れております。
これは厳し過ぎる事象だ。横幅1m弱、長さ6m強の溝がガッツリ形成されていたのだ。
幅員は目算約2.3m。に対してこの溝。下手すれば車体が溝に食い込み「逆さ亀」よろしく動けなくなるか、サスペンションが逝き動けなくなるか。いずれにせよ進行不能に陥るのは間違い無い。
まずは車から降りて車の周りをチェックしてみる。
表情はいつに無く超真剣。そりゃそうだ、判断を誤れば僕とTTにとって暗黒同然の未来が待っている。
突破出来る可能性は五分。自滅する可能性も五分。五分五分の判断を迫られていることになる。
かと言って転回出来る場所があるかというとそれも無い。入口までロングバックする方法もあるが、辛すぎる。出来ることならこのまま切り抜けてみたい。
路面を反対側から見てみると、溝が途中で入れ替わりクロスしている。中央の大きな溝の後、今度は道路右端にまた深い溝があるのだ。
つまり、どういうことかと言うと、中央の溝をクリアしてすぐステアリングを左に切り、右の溝をパスしなければならない。やだ、なにこの超絶高難度・・・。ここまで来ると、ワクワクを通り越してバクバクの領域。
チェック・・・というよりもはやチェックメイト・・・なのか?
「思考」の果て
さて、どうするか・・・?
まさに進退極まれりといった状況。いっくらエグい道路が好きな不知火でさえ、二の足を踏んでしまう光景だ。
熟考することおよそ10分間。ようやく不知火は決断に踏み切る。
「行ける。」
なぜそんな判断に至ったかって?それは・・・
???「そう、囁くのよ、私のゴーストが(CV.田中敦子)」
僕が閃いたルートをざっくり書き示してみる。
最初の中央の溝を越えたこところで、一瞬平らになる箇所があり、そこでステアリングを左に切り、前輪を道の左側に移動させる。その後右の後輪が溝に落ちないように注意しながら前輪と同じように左側へと運び、クリアするつもりだ。車両感覚をミスる訳には行かない。
さあ相棒、いざ死地を乗り越えようじゃないか・・・。
フラグ回避
行けた。
相棒TTの車両外側トータルの車幅は1840mm。タイヤは245mmを履いているので、左右タイヤ内側の距離は1350mm。それに対して溝の横幅は1200mm弱。物凄く、とまでは行かないが、結構ギリギリなラインだっただろう。
往路で写真を撮る精神的余裕が無かったので、復路の写真だが、何とか乗り切ることが出来たのだ。正直なところ、こういった状況は、ドラテクがどうこうと言うより、その場での閃きと冷静な状況判断がモノを言う。TTのような低車高車であれば尚更だ。
こちらも復路の写真。往路も復路も結局のところ進行方向が逆なだけで殆どやらなければならないことは変わらない。しいて言えば、復路の方が微妙に登りとなっているので、雨で路面が濡れていたこの日は前輪が軽く空転したことくらいか。
兎にも角にもデッドエンドフラグは回避することが出来たのである。車幅感覚、というよりタイヤの乗っている位置を正確に把握出来るドライバーで無ければ、行くことは絶対にお勧め出来ない林道だな。
ダート林道が作り出す美景
Eine wunderschöne Landschaft.
いかんいかん、唐突に何故かドイツ語が出て来てしまった(ただし発音は分からない)。
常々思うことだが、世間一般的に見れば挑戦すること自体が無謀で、あり得ない車種でこういったダート林道を走ることは至高の満足感が得られると感じる。完全なる自己満足で、多くの方には理解されないだろう。だが少なくとも僕、不知火はTTのようなスポーツカー×ダートの生み出す景色は唯一無二の組み合わせであり、究極的な「美景」を生み出すのだと考えている。独りよがりと罵られようが、拘りは譲れないし、これからもこの美学を持って道路に挑んで行くことだろう・・・。
割と簡単な終盤
デッドエンドを乗り越え、先へと進んでいく。ぶっちゃけてしまえば、さっきの激荒れを越えてからは大したことは無い。精々小さな溝や轍、砂利が流れ、岩盤が剥き出しになった路面があるくらいだ。
よくよく考えてみれば、この名無し分岐線は、他の接続林道である東山線や香木原線に比べ、総じて林道の雰囲気が明るい。というのも、上部が木々に覆われている箇所が皆無なのである。房総の林道、というか林道と言うと基本的には文字通り森林を切り開いて作られた道の為、昼でも鬱蒼としていて少々不気味に思えたりするのだが、ここはそれが無い。それが良いのか悪いのかは人それぞれ捉え方が異なるので断定は出来ない。僕は好きだけどね。
何か房総の林道っぽく無い。大体が薄暗くて、やれ猿だ鹿だ、が飛び出して来ても不思議じゃないというのが房総の林道の通説だろう。林道東山線名無し分岐線は片側、あるいは両側の景色が開けていて、房総丘陵を一望出来る場所が多いのだ。これはなかなかに素敵林道なのかもしれないな。
終地聳え立ちし岩壁
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。
・・・なんて聞こえるはずの無い効果音が聞こえてきそうだ。ピストンダートの終点、相棒TTとそれを取り巻く景色達である。
空は雨模様なこともあり薄暗く、左手に聳える岩壁も相まって凄まじい秘境感が漂っている。正直に告白するとここに来るまでに立ち塞がる障害物達は楽で無かったが、達成感がそれを上書きし、快楽にも似た悦びが脳内を支配する。
終点から見渡す山景である。
房総丘陵の稜線が幾重にも重なり合い、比較的なだらかでありながらも随所に形成された凹凸が印象的だ。正直に言うば、僕的にはあまり萌える景色で無いけれど、まあこれはこれで。
終わりに
名無しの林道は林道標も無く、かなりマイナーでその存在すら知られていないことがままあるが、それを知り走ることこそ林道探索の醍醐味でもある。県外からはおろか、県内ですら訪れえる者は非常に稀でピストン林道なことからも隠れた路線、さながら秘境林道とも呼べる、なかなかに走り甲斐がある道路であった。
終
相棒TTと撮影したオススメスポットを地図にまとめています。
良ければ愛車と写真撮影する際の参考にして下さい。
記事内にイチオシスポットも挙げて幾つか紹介しています。
今まで訪れた秘境スポットを地図にまとめています。
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僕が行ったことのある観光地をマイマップにまとめました。
観光地についてもそれなりに行っていますので是非見てみて下さい。