【岐阜県】【廃鉱山】錆色に包まれる絶勝廃墟、春日鉱山跡美束区画を探索せよ!

【岐阜県】【廃鉱山】錆色に包まれる絶勝廃墟、春日鉱山跡美束区画を探索せよ!

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金属物質が経年劣化によって引き起こされる、腐食のことである。

 

往々にして、錆びというのは生物にとって嫌遠されがちな事象であり、それは人間にとっても例外では無い。

 

運用当時は手入れが施され、陽光で燦然と輝いていたと思われる機械金属も、錆びてしまえばその美しさは廃れ、見るに耐えないみすぼらしい外観、と思われがちでもある。

 

だがしかし、ときに錆とは美しさの象徴、と言えなくも無く、その規模が大きくなるほど見る者を魅了する、「骨董品」に転化することがあるのだ。

 

今回は岐阜県にある、見渡す限り錆色に支配され尽くした素晴らしき春日鉱山跡についてのレポートをお送りしたいと思う。

 

春日かすが鉱山跡美束みつか区画

岐阜県揖斐川町には、かつてドロマイトや珪灰石が採掘された通称春日かすが鉱山と呼ばれる付近には3つの鉱山区画が整備されており、ちょうど真ん中に位置するのが今回のレポート場所だ。ホッパーやベルトコンベアと言った施設跡に加え、坑道までも残されているという話である。

 

ここ春日鉱山跡の美束みつか区画では不純物の少ない良質なドロマイトが採掘され、ガラス加工に最も適した鉱石であったと聞く。

 

なお、名称は既にネットで出ているので公表するが、流石に地図は控えさせて頂く。

 

君臨する絶勝遺構

おぞましさ漂う外観

車の往来が時折見られる現在地。目の前には、規模こそ小さいながら雄々しく聳える廃墟。存在感は充分と言える。

 

建物のあちこちから草木が顔を覗かせ、自然と同化してしまうのでは無いかと思えてくる。

 

住宅こそ付近に無く、人の姿こそ無いものの、うろうろする不知火はかなり異質である。モタモタしていれば目に付いてしまうことも考えられる為、出来る限り可及的速やかに潜入してしまうことが望ましい。辺りに人や車が無いことを再確認したのち・・・

 

シュタッ!・・・という効果音が聞こえるくらいの勢いでピンポンダッシュして土嚢を飛び越え、ホッパー真下を流れる小川にズザザッと滑り込む。

 

今まで不知火はこのデカさの廃墟に単独潜入したことは無く、正直なところ怖じ気付き、二の足を踏んでいた。が、今回はそんなことも言っていられない。僅かにでも「行きたい」と思ったのであれば、手早く行動しなければ何が起きるか分からないのだ。

 

無事外部からは見えない場所へ入り込むことに成功。そしてふと、頭上を見上げてみる。

 

ゾクリ・・・。

 

自分の年齢より遥かに年老いた、天井にある鉱山遺構、そのホッパーだ。

 

いつどのような要因で崩落するかも分からない危険な物件でありながら、凶悪なまでに異彩をを放つソレは、それまで不知火が感じていた廃墟の「不気味さ」を払拭するには充分過ぎるくらいに魅力的であった。

 

魅せる内部

やっべ・・・廃鉱山・・・イイ・・・。

 

やや内部に進み、再度天井を撮影。

 

現役時代はさぞ輝き、ピカピカの鉄製だったのかもしれないが、盛者必衰じょうしゃひっすい、遠き過去の栄光だ。だがこの朽ち果てた姿こそ、第二の輝きと言えなくも無い。

 

現地点からパッと見えるだけでもホッパーは3、4基。それと同じか多い数、ベルトコンベアも設置されていたようだ。

 

ホッパー受け口直下にはコンベアのローラーが見受けられる。

 

こちらは別箇所のコンベア跡。伸び切ったベルトまでもがそこに残置されており、趣を感じる。

 

さて、良い加減先へ進もうか・・・。

 

前述の通り、足場には水が流れ、小川となっている。どうやら奥に砂防ダム、堰堤えんていが設けられていて、そこから来ているようだ。

 

今いる場所から立ち上がると、また通行車へまともに姿を晒け出す羽目になるので、付近にあった蜘蛛の巣を払い除けてから中腰でくぐり抜ける。

 

なんということでしょう・・・。

 

そこには、自然と人工の調和が繰り広げられていました・・・、なんて思わず敬語になってしまうくらいに息を呑んだ不知火。癒しの空間、と例えてしまっても大仰では無い。

 

ところで、コンベアの左先に伸びる小屋のようなものが気になるな。

 

小屋に近付く。

 

底上げされた小屋は階段が設置され、1階半といった階層になっている。

 

小屋の天井に1基、小屋の下に1基といった具合にコンベアの起点とされているらしい。

 

階段を登り、小屋の中へカメラを差し入れる。そこにあった景色は・・・、

 

檻に入れられた「時間」

アメイズィング・・・ッ!

 

美しい、なんて軽軽な言葉では到底言い表すことの出来ない、幽玄で繊細な世界がそこには広がっていたのである。

 

鉄の錆色草木の緑色が複雑に混交し、別世界の絶景に仕立て上げられている。

 

まるでそう、「時間」というものが檻の中に閉じ込められ、外界とは異なる次元で育てられたかのような光景と言えるだろう・・・。

 

ファビュラス!!!(意味は良く知らない)

 

そりゃ謎な単語を思わず叫んでみたくもなるさ。不知火にとってこの光景はまさに「お初にお目にかかる」というものであり、感涙むせび泣くのも致し方無いことなのだ。いちいち感動していてはこの先持たないんじゃないの?と思われるかもしれないが、許して欲しい。

 

恐らくこの場所は別地点から流されてきた鉱石を選別し積み込み直す、中間地点か何かでは無いかと思う。右側に立て掛けられた梯子左に植物が茂る場所には白色の鉱物が残されていたからだ。そこから部屋中央下にある小窓より鉱石を投入し、再度コンベアで流していたのでは無かろうか。

 

暫しの間、異空間に身を委ね、脳裏に浮かんでくる在りし日の光景を思い描く不知火であった。

 

鉱山軌道が示す路

小屋内部の壮観さに魂を抜き取られた不知火。再度小川に靴底を濡らしながら他所を回る。

 

序盤に記述した通り、堰堤からは止めど無く水が流れている。決して水量は多く無く、普通のスニーカーであっても穴が開いたもので無ければ浸水しないくらいの深さだ。

 

一見すると、川の水は透明感抜群で「飲めるのでは無いか」という問いが頭をよぎるかもしれない。

 

が、言うまでも無く愚問だろう。鉱山施設より流れ出る水は危険性が高い。何故なら鉱山施設(選鉱所や精錬所)から出された廃水坑道内より湧き出た坑水が入り混じり、鉱毒水となっているかもしれないので、間違っても「飲もう」などというアンポンタンな考えは持たない方が賢明だ。・・・いや、世の中に「毒物摂取マニア」がいるのであればそれもまたやり兼ねないことなのかもしれないが。

 

チャプチャプと耳障りの良い水音を聞きながら右側に進む。ヘアピンカーブのようにぐるりと半転すると、こちらからも水が流れていた。先程の堰堤から流れる水とは明らかに出元が異なっている。現時点で明快な答えを出すことは出来ないものの、この先に「何かが有る」ということだけはハッキリと直感した。

 

緩やかな傾斜を登り切り、階下的には3階部分に到達したことになる。

 

一瞥したところでは極端な「怪しさ」が漂っておらず、極普通の廃れた光景とも言える。

 

ホッパー、だな、間違い無く。

 

四角形になっているホッパー両端の2辺はV字型に落ち込み、下部へ鉱石を排出する構造になっている。見ての通り本来下部へと注がれる箇所に草木が生えてしまい、隠れてしまっている。恐らくは年月が経過する内に土が溜まっていき、いつの間にか植物を育むプランターに成り果てたのだ。

 

プランター、もといホッパーの右横を見やる。

 

茶色い2本のライン、そう、鉱山軌道跡だ。足場が抜け落ちたのか、ここだけ空中軌道になっている。

 

ほぼダイレクトに1階部分へと直結しており、帰りにルートをスキップしたいときには重宝する・・・訳が無く、多分変なところで引っ掛かって無様な御姿を衆目に晒すだろう。

 

では、この右、土台が生きている方へ目線を向けてみると、

 

続くレール、散乱する瓦礫、見目みめうるわしい新緑・・・。

 

思わず「イイネ!」を押してしまいたくなる情景と言えよう。

 

ノルタルジーの具現、なんて洒落た物言いだと自分でも感じるが、それもまた的外れでは無いはずだ。

 

レールの伸びる先にある中央施設を見学してはみたかったが、廃墟素人の不知火には強度を確かめる術が無かったので、大人しく止めておいた。

 

振り返る。そこには瓦礫の山が出来上がっていた。

 

瓦礫の奥には坑口が確認出来る。封鎖されているようにも見えないので、行けそうだが、手前の瓦礫が不安だ。慎重に行けば達せる、けども瓦礫の山の下が腐った床板になっていて体重を掛けた瞬間ズボンッッ!と行ったら逝くので、仮に目指すとしても後回しにしよう。

 

分かるだけでもレールはもう1本残っており、それもまた片側は中央施設に続いている。だいぶ足場が不安定になっていることもあり、デッドポイントばかりに思えて仕方が無い。

 

うーん、中央施設を目指さなくても、なんかこう、もっと「ファッ!?」ってなるようなインパクトのあるモノは無いものか・・・?

 

なんてぼんやり考えながら、レールの反対側を見る為に振り返る。そして偶然か必然か・・・・・巡り逢う。

 

ファッ!!!!????

 

常闇の坑道が・・・口を開けていたのである。

 


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地下迷宮へのいざない

一歩、坑道内へと踏み込む。ナマの坑道へ足を踏み入れてみたいという長年の想いから来る興奮と、外界からの光が一切届かない暗黒空間の恐怖という相反する気持ちが最高潮になり、心臓が飛び出しそうだ・・・。

 

入口となる坑口から数メートルは支保工しぼこうが設けられている。支保工とは、坑道を切羽せっぱ(掘削を行う場所)していく上で起こり得る落盤、落石といった事故を防ぐ目的で造られるアーチ状の枠のことで、木材、鋼材、コンクリートと材料は坑道によって異なって来る。この場所では鋼材が用いられている。

 

一見すると、支保工はしっかりと岩盤からの圧力を受け止めているように思え、極端な歪みや崩落は見られない。

 

うおおおぉぉぉ・・・・・!

 

言い様の無い気持ちの昂ぶりが抑え切れない。生まれて初めて見る本物の坑内はあまりにも刺激が強く、気を抜くとすぐにでも鼻血がロケット噴射しそうなのである。

 

支保工はすぐに消え失せ、素掘の坑道へと早変わりし、二手に分かれている。

 

ゴツゴツとした壁面は掘削後そのままといった感じで、荒々しさが際立つ。落石なども無く、存外に綺麗な坑道の印象だ。もっとこう、あちこちに岩が散乱し「ザ・デンジャラス」を強調してくるのかと思っていたが。

 

まだ入って間も無いこともあるかもしれないが、ここの坑道は岩盤が非常に強固でちょっとやそっとじゃ崩落しない、ということなのだろうか?

 

脇の床には、プーリや坑木、廃タイヤや鉄パイプに、「発破」と書かれた札までもが残されていた。

 

そのまま目線を上げる。

 

左側は更に奥に通じる坑道が見えていて、右側からはうっすら明かりが差している。こちらは恐らく、先程見た瓦礫の山の先にあった坑口へと通じているようだ。

 

二手に分かれていた坑道の左側。軌道が残置し、2本に分岐しながら道を示している。

 

手持ちのハイビームライトで照らしながら、一眼レフに取り付けたスピードライトでフルフラッシュを天井バウンスさせ撮影しているが、岩色が明るめなこともあり、強いストロボでは逆に白飛びしてしまったりもする。なかなか坑道は思った通りに写真撮影出来ないものだな。

 

加えて坑道奥から常時冷たい風が流れこんでおり、吐息に白さが混じる。ということは坑内の気温はおおよそ10℃以下だと分かる。経験上、息が白くなるのは10℃を切ってからだからだ。

 

・・・個人的には更に奥へと進んでみたい。だが、坑道探索の知識は兎も角、経験は今までゼロであること、奥へ進めば鉱物粉塵が混じり込んでカメラのレンズがズタズタになってしまう可能性があること、その粉塵によってストロボを焚いた際に着火し粉塵爆発を起こす危険性があること、などの理由から進軍は断念した。ここまで来ると怖さよりもこの地下迷宮の先を見たいという気持ちの方が圧倒的に優勢なのだが、背に腹は代えられない。名残惜しさに後ろ髪を引かれながら、入口の方へ向き直った。

 

スラリと伸びる鉱山軌道、足元を流れる透き通った坑水、四角いアーチで切り取られた外界風景。

 

何故こうも隧道や坑道といったヤツは憎らしい程美しい風景を創ってしまうのか・・・?

 

自然の風景こそ美しいと思われる方も多くいらっしゃるだろうし、不知火自身もそう感じる一方、人工物の荒廃という結果が生み出す眺めもまた、魅了する要素を充分秘めているのだろう。

 

廃、という味

坑道から地上へと戻り、歩き回っていると、こんなのがあった。位置的には口を開けた坑道のすぐ左側である。

 

金網と岩でキッチリと塞がれた穴、らしきものだ。

 

この場所には軌道が無く、トロッコが行き来していたとは思えない。ということは、通気か排水に用いられた通洞坑というやつだろうか?

 

封鎖された通洞坑のようなものを見ていると、プシュープシューなどという音が聞こえ、何事かと思い見回すと、脇にホースがあり、そこから一定間隔で水が噴き出していた。恐らくは坑内の坑水を排水する目的で取り付けられたのだろう。

 

ほぼ骨組みだけとなった中央施設の上部。

 

およそ青空に似付かわしくない建造物だが、その晴天が逆に廃という味を隅々まで堪能するには最適なのでは無いかと思えなくも無い。役目を終えた現在においても威風堂々立ちはだかる姿はとても立派だと言えよう。

 

カッコいいじゃあないか・・・。

 

見目麗しい新緑の下、一直線に画面を横切るベルトコンベア。もはやその存在はこの場所における象徴の1つなのだ。

 

イイ顔してるよ、お前・・・。

 

ラスト、再び頭上を占領するホッパーを見やる。

 

二度と開かれることの無い鉱石注ぎ口。一抹の儚さを覚えるが、ホッパーからは「いいんだよ、これで」という心の声が聞こえた気がした・・・・・・いや、ほんとに聞こえたら只のサイコパスだが・・・。

 

土嚢の積まれた場所から顔を出して辺りを見回し、通行無であることを再確認してから、脱兎の如くフルダッシュをかまして廃鉱山を後にした。

 

終わりに

危険なイメージが付き纏う廃鉱山。確かにそうだ、廃鉱山はガチで危険であるし、特に坑道深部を探索するともなれば専用装備や正確な知識、技術が無くては次に潜り込んだ人間が外界に出るときには良くて棺桶、悪くて「坑内が埋葬地」という結果が待っているだろう。

 

決して声を大にして勧めることは出来ないのがこのカテゴリーだが、それでも不知火は密かに廃鉱山を「推し」たい。賭けても良い、一度入り込めば信者にさえなり得るだろう、と。

 

 

 

 

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