【千葉県】【廃道】断崖に造られた最凶国道~おせんころがし

【千葉県】【廃道】断崖に造られた最凶国道~おせんころがし

昔、大沢集落一帯を領地に持つ、古仙家という豪族が居た。代々古仙家は領内の人々の面倒を良く見ていた為、親しまれていたのだが、ある代の古仙家は年貢を高くすることを決めた。領民は激しく反発したが、聞く耳持たず、重い税をかけたことにより、古仙家は大金持ちとなった。

 

しかしこの古仙家には子供に恵まれなかった。ある時神頼みで9月13日の月姫にお願いをする。願い叶って翌年には可愛らしい女の子が生まれ、領主は「仙」と名付けた。これがのちの「お仙」である。お仙は年を重ねるごとに美しさを増し、両親の可愛がりも年々増していった。

 

ところが領民達はどんどん重くなる年貢に困り果てていた。どうすることも出来ず、泣き寝入りするしかなかったのだ。

 

賢いお仙は領民達の不満を耳にする度に領主へ年貢を軽くするよう懇願した。だが領主は例えお仙の願いと言えど、年貢を軽くする事には耳も貸さず、豪遊を続けるだけだった。

 

お仙が齢18になった夏、稲の穂は大変良く実り、領民達も大層喜んでいた。しかし、目ざとい領主がこのことを知らぬはずも無く、領民達へ領主6分、領民4分の割合で年貢を納めるよう回状を出したのである。

 

ついに領民の不満は限界を迎えた。秋の祭りの晩、祝いの酒に酔い潰れた領主を簀巻にして担ぎ出し、断崖に投げ落として葬った。

 

翌朝、領民達は領主の遺体を確認しようと断崖へ降りて行った。しかし、領民達は予想だにしなかった光景を目の当たりにする。なんと領主だと思い皆が断崖から投げ込んだのは、皆から親しまれ頼りにされていたお仙だったのである。

 

領主である父の身の危険を感じたお仙は祭りの晩、父の衣装を身に付け、身代わりになっていたのだ。領民達はお仙の亡骸を前に男泣きを続け、この地に墓碑を建てて、お仙を供養したという・・・・・・。

上記の物語は今回お届けする「おせんころがし」の名の由来となった悲しき物語である。目もくらむような断崖絶壁に造られた最凶の酷道レポートをお送りしていきたい。

 

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「お仙」の名が残る地

おせんころがし概要地図

おせんころがし、勝浦市から鴨川市へと続く全長4kmの崖の通称である。高さ100mにも及ぶ崖の上を国道が通り、交通の難所とされてきた。現在ではその一部が旧道と廃道として残るのみとなり、新国道が整備された今、通行が困難な箇所は解消されている。

 

上の地図は明治36年の今昔マップより引用させて頂いたものだ。赤線が当時の国道128号線であり、紫線で示した現国道128号線とは大きく線形が異なっている。かなり曲がりくねったワインディングであることに加え、崖っぷちギリギリを通らされていたことが分かるだろう。一応明治36年には自動車が登場していたそうだが、まだ一般的でないはずだ。そうなるとこの危険極まりない道を馬車で行き来していたという可能性の方が濃厚に思える。

 

まずは旧道から

外房の海が眺められる絶景

誕生寺から隧道付近

国道128号線の日蓮交差点から南に入り、そのまま誕生寺の脇を進む。これが旧国道となる訳だが、見通しが悪く、狭い道路である。

 

国道128号線旧道隧道出口

小さな隧道を抜けると唐突に明るい場所へ出る。

 

国道128号線旧道海が見える道

うぉ、良い眺め!それもそのはず、すぐ右手は海なのだ。眺めが良くないはずがない。古びたガードレールに覆われ、左手にはモルタルが吹き付けられただけの斜面が聳え立ち、危険極まりないが、それと引き換えに何とも素晴らしい景色を拝むことが出来る。

 

現国道128号線はかなり内陸部に付け替えられている為に「外房黒潮ライン」という大層な愛称が付けられている割にはその「外房」を眺めながら走れる部分はそう多くない。そう考えると真隣が海となっているこの旧国道は本当の意味で海を眺めて走ることが出来る貴重な道路と言えるだろう。

 

国道128号線旧道注意看板

っと、何やら現れた青看板に書いてあるぞ、どれどれ・・・?

 

国道128号線旧道注意看板アップ

ここから0.9km区間は

連続雨量150ミリで通行止

になります  千葉県

 

注意看板だ。連続雨量150ミリと言われても正直ピンと来ないが、そもそも連続雨量とは降り始めてからの降雨量のことだ。一般的に1時間あたり1ミリの降水量で何とか傘を差さずに我慢出来るくらいと言われている。10ミリでたった歩いて3分の距離の場所でも傘を差して出るのすら躊躇うくらいだ。そう考えると150ミリはもはや災害クラス。気象庁では80ミリで「猛烈な雨」と表現し、人が呼吸をするのも苦しくなるようなレベル。正直1時間で150ミリも降られたら、この道路で無くても通行止になりそうなものだが・・・。

 

国道128号線旧道でTTを撮影

せっかくなので相棒TTを脇に停めて撮影してみた。幅員としては4mちょっとと言ったところか。ギリギリ対向車が来てもすれ違えるレベルだ。横にある落石注意の標識がやけに物々しい。この旧道は現道の脇道としても使われており、時々車とすれ違う。

 

 

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旧道から垣間見える廃道

国道128号線旧道からおせんころがし

ではそろそろ本丸を落としに行こうじゃないか。旧道部分から東側に目をやると崖にへばりついたようなエグい道を垣間見ることが出来る。もはやガードレールすら無い、極限まで道路の要素を削ったような所だ。

 

おせんころがし入口

大沢集落と呼ばれる場所を横切り、脇の草がボーボーになった所へ入り込む。いよいよ・・・か。

 

おせんころがし廃道入口地図

現在地はこの辺だ。ちょうど旧道が終わり、現道との交差点があるすぐ近くである。

 

では、頂きましょう、断崖絶壁のスーパー廃道・・・・。

 

禁断の地へ

キング・オブ・デンジャラス

廃道おせんころがし

ぐふぉ・・・・。いかんいかん、思わず吐血してしまった。

 

ある意味これこそ道路の究極体と言える。極限まで無駄を無くし、道路としての最低限の機能のみを残している。

 

・・・にしたって、刺激が強すぎる。これが本当にかつての国道なのか?もはや自動車が通る国道として分類していいのかすら怪しくなる。どう見たって良くて遊歩道だ。「国道だから自動車通って良いんだよ」なんて言われても普通は通りたいと思わないだろう(僕だったら車で行ってみたいが)。

 

おせんころがし廃道上

現在地はこの辺だ。バリケードのあった入口からさほど進んでいないというのに、この道路の変わりよう。

 

おせんころがし狭い道幅

幅は精々2m、法面側には溝が掘られており、水抜きの役割をしていたのだろう。道は中央が若干盛り上がり、脇に行く程下がっている。路面と法面にはコンクリートのようなものが吹き付けられているだけで、所々に草が生えている。

 

日本には色々な廃道が眠っていると言うが、ここまで無駄の削ぎ落された廃道というのがかなりレアなことは間違い無い。海沿いの廃道と言っても普通はアスファルトで舗装されていたり、標識や看板の一つもあって良いものだが、ここにはそれらが何もない。地図や資料で知り得なければ誰もここが「かつての国道」だということに気が付きもしないはずである。

 

おせんころがしで自撮り

試しにサイズを比較してみよう。三脚を置いて自撮りした写真なのだが、いかに狭い道路なのかが分かると思う。ちょうど僕の立っている前は少しだけ幅が広くなっており、頑張れば対向車が来た際離合することは可能かもしれない。

 

昔の自動車の方が遥かに車幅も小さかったはずなので、思ったよりは通行出来たかもしれない。だが滑落事故のメッカであったことも事実であり、遮る物すらない海側は、バランスを崩してしまえば簡単に海へと落下してしまっただろう。まさしく「酷道」である。

 

おせんころがしで昼食の自撮り

海が綺麗だなぁ・・・・。外房を眺めながら自炊して持ってきた弁当を食べる。何ともシュールな光景だ。海風が強い上、暦は2月だったから結構寒かったが、それでも人も来ない場所で海を見ながら食べる昼食は格別だった。

 

藪泳ぎ

藪泳ぎ

よし、昼も食べたし、進軍を続けようか。御覧の通り、植物の繁茂が半端ない。真冬だと言うのにこの主張の仕方。いやはや、流石は房総半島と言ったところか。真夏程では無いとはいえ、身の丈2mはある藪は勢いが衰えておらず、掻き分けて進むより、藪の上を泳いだ方が遥かに速いのではないかと思ってしまう程である。

 

藪の上

最初こそこうして足で藪を踏んでいき、足場を作ってから進んでいたのだが、段々めんどくさくなり、

 

藪から海に向けて撮影

気が付いたら藪の上を泳いでた。普通は藪を掻き分けて進む「藪漕ぎ」なのだが、漕ぐより泳いだ方が効率的に思えた為に「藪泳ぎ」だ。この時何を思ったか分からないが、なんとなくピースサインがしたくなったのでしている(笑)ちなみにこの数十センチ先は崖。いや、十数センチかもしれない。藪が凄すぎて正直正確にどれくらいなのかが分からん。

 

Climb or Jump?

おせんころがし慰霊碑前

現在地。もう後僅かで廃道区間も終わるというところだ。

 

慰霊碑前のバリケード

石碑が見えて来た!そう、写真左側に写っている灰色の碑こそが、この地の由来ともなった「お仙の石碑」である。

 

のだが、ここで最後の難関が待ち受ける。茶色の棒が立っている所はバリケードになっているのだが、どうやってもバリケードまで辿り着けないのだ。藪の上を泳ごうにもバリケード付近は繁茂が弱く、乗ると下がって柵に足がかけられない。バリケードを直で掴み、そのままよじ登れば良いと思うかもしれないが、下は下でそれなりに勢いがあったので、バリケードに近付けなかったのだ。

 

やべえ、向こう行けないんじゃね・・・・?

 

だがここまで来て、引き返すのは男の名がすたる。意地でも突破してやる!

 

崖から無理矢理ジャンプ

成功。分かりづらくて申し訳無いが、石碑側からバリケードのある方へ向けて撮った写真だ。まず右上の壁面にへばりつき、身体を半回転させて踵が法面に向くようにした後、そのまま飛び降りてバリケードを突破した。ふい~これでなんとか廃道128号線もとい、おせんころがしクリアだ。

 

お仙の石碑

お仙の慰霊碑

最後にお仙の石碑を。画質が粗い。昼間なのに、この辺りにはただならぬ雰囲気が漂っており、非常にマイナーな観光スポットとして「おせんころがし」が紹介されていたりもするのだが、訪れた人からは「空気が重い」「具合が悪くなる」「居もしない人影を見た」等というただならぬ噂が尽きない。実際僕も石碑を目の前にした時、若干怪しい空気を感じたのを覚えている。

 

海風に晒されながらも残り続ける国道の化石、おせんころがし。廃道区間はとても短いながらも唯一無二で並ぶ者の無い、凄まじい場所であった。

 

 

 

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