【滋賀県】【廃村】樹海と隘路に阻まれし秘境!アウディTTで男鬼廃集落へ到達せよ!

【滋賀県】【廃村】樹海と隘路に阻まれし秘境!アウディTTで男鬼廃集落へ到達せよ!
 

広告


深い森の中に敷かれた険しい狭隘路を抜けると、そこには息を呑むほど美しい廃集落が眠っていた・・・。

 

いかにもファンタジー小説に書かれていそうな、読者の興味を引くドラマチックな内容で、どこか現実味に欠ける。そう思われた方が少なくないはずだ。

 

しかし、そんな絶景が本当に滋賀県の山奥に存在することをあなたはご存知だろうか・・・?

 

男鬼おおり廃集落

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

地図リンク

滋賀県湖東ことう地方に位置する彦根市は商工業で栄え、交通の要衝でもある。世界大戦時には大規模空襲の被害が少なかったことから古き良き町並みが保存されていることでも知られている。

 

この彦根市からほぼ東端に男鬼町おおりちょうという大字が見え、レポート物件となる男鬼おおり廃集落が存在しているのだ。

 

近隣には男鬼のみならず、入谷にゅうだに今畑いまはた落合おちあいをはじめとした廃集落が存在し、霊仙山りょうぜんざんの麓に位置していることから一括して霊仙りょうぜん廃集落群とも呼ばれることがある。

 

男鬼の集落としての歴史は非常に古く、700年頃には開墾され、定住しており、男鬼オオリという地名の由来は諸説あるが、712年に建立された男鬼寺ダンキジという寺院が元になり、後にオオリに変化し定着したのではないかとされる。

 

アクセスにおいては一般的に西側の林道滝谷武奈たきやぶな線と先に伸びる彦根市道5023仏生寺男鬼ぶっしょうじおおり線を使うか、東側の滋賀県道17号線とその先にある彦根市道5023仏生寺男鬼線を乗り継ぎ向かうかの2択で、道のりだけ見るとまさに秘境でしかない。

 

男鬼、男鬼村、男鬼集落と呼び方が多いが、本レポートにおいては男鬼廃集落で統一したいと思う。

 

ではまず、男鬼廃集落までの道のりを相棒TTと共にトレースしていこう。いつも通り、不知火とTTが織り成す、シュールでコミカルなアツいレポートをご覧頂きたい。

 

点々と介在する霊仙廃集落群

捕らえ、引き込む世界観

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

滋賀県多賀町たがちょう。大字に霊仙が見える滋賀県道17号線上が現在地だ。

 

この日不知火は近畿滞在最終日で、急遽目的地をここに決めたのだが、元々は三重県にいる予定だった。

 

それがなぜ滋賀県の山中なのかというと、八百津ダートオフにて会った同志数名近畿酷道勢より「そうだ、男鬼村、行こう。」「男鬼村はいいぞ・・・」などという熱烈な布教活動煽りを賜ったことがことの始まりだった。

 

更に追い打ちを掛けるが如く、オフ会終了後の夜中に、主催した若きリーダーが単身男鬼に乗り込むというネジの飛んだ・・・もとい勇気ある行動をご披露された。

 

そして、「もう逃げ場はありません」というとどめの一撃に洗脳されてしまい、気が付いたときには滋賀県にいた。

 

・・・のである。

 

果たしてどれくらいのポテンシャルを秘めたロケーションなのか・・・。

 

疑問を尻目に広がるのは滋賀県道17号線の光景。17というナンバリングから主要地方道なことが分かるが、どう見ても風景は主要のソレでは無い。

 

これはどうやら・・・期待しても良さそうだ。

 

!!!

 

スタート地点から3分と経たず、早々にライクな景色が顔を覗かせた・・・!

 

地図リンク

入谷にゅうだに廃集落、その入口だ。

 

如何にも、な雰囲気が充満している。目の当たりにした不知火はゾクゾクという、恐怖とは違う、歓喜に包まれ、廃集落の空気に浸っていた。

 

木々の隙間から陽光が射し込み、片側が陰となっている。

 

異世界とも感じる場・・・一歩足を踏み入れれば、即座にその場が放つ世界観に捕われ、引き込まれること間違い無しなのだ。

 

にしても、まだ朝のこの時間でもなかなかにドキドキなのに、夜中に1人でなんて来たら・・・発狂する自信しかない。

 

意外にもしっかりと建って支えている。

 

頑丈なものだ。険しい山中に半世紀も放置されていれば、その大半が力尽きそうなものだが。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

現在地。入谷の住居が残る廃集落の本体は分岐を左に進み、急勾配を登った先にある。今回は男鬼が目的地のためスルーさせてもらう。

 

それにしても、序盤からこんな景色が眠っているのだ、きっとこの先にもお宝のような情景が眠っているに違いない。期待に胸を膨らませ、前進する不知火だった。

 

立て続けでぶっ込んで来る「廃」成分

入谷を越え、先の道。

 

うーむ、まだまだ快走路だな。TTに乗っているとタイヤのぶっとさや足の固さから路面の影響を受けやすいのだが、ここは思考停止してても優に走れる。

 

が目に優しく飛び込む。

 

新緑の季節ということもあるだろう。そこらかしこの植物達が一斉に芽吹き始め、来訪者を迎え入れてくれていた。

 

むむ・・・?

 

この入谷に似た沿道の倉庫群は、もしや・・・

 

地図リンク

今畑いまはた廃集落の入口である。

 

場の持つ力、は先ほどの入谷が圧倒的だ。かといって今畑が弱いかというとそうでもない。

 

というかむしろ、今畑くらいでも不知火なら充分「オオッ!!!」と感動する。入谷が強すぎるんよ、そうなんよ・・・。

 

入谷から立て続けで「廃」成分を配給してくる霊仙。

 

サービス精神旺盛と言うべきか。ドライバーが道を走っていても退屈にならないようにする為の配慮なのだろう(?)。

 

やや損壊しながらもしっかり建っている点は入谷と変わらない。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

ここ今畑においても、住居跡は別にあり、すぐ目の前にある霊仙山登山口をやや登るとある。

 

無論目的地は男鬼なので今回は(以下略。

 

快走路の終点

なんだなんだ?ここは快走路ばっかりなのか?え?男鬼さんよぉ・・・?(煽り)

 

廃集落の景色はよい、実に素敵だ。強烈なインパクトをもたらした。が、道はどうだ?路面が良すぎてもはや一般道じゃないか・・・。

 

同志近畿酷道勢による事前情報では男鬼までの道路はかなりヤバく、それこそ八百津ダートクラスなところもあるという。

 

変態揃い(誉め言葉)な同志達がヤバいと言うのだから相当なはず・・・。まあひとまず焦らず進んでみようか。

 

建物があちこちに見えて来る。

 

ここは霊仙廃集落群の中心地的な役割、落合おちあい廃集落だ。

 

・・・忘れてるかもしれないが、不知火が今通っている道は一応主要地方道である県道17号線である。自分も含め、忘れてしまいそうになるので、失念しないように記しておく。

 

一瞬右と左で迷ったが、多分こっちなので右に曲がる。

 

既にナビの案内は切ってあるし、案内入れてもここではまともに仕事してくれるか微妙だったからな。

 

かなり規模の大きい廃集落だ。霊仙の中で中心集落として機能していたことも頷ける。

 

快走路、とも呼べるここまでの道のりにはこんなにも立派なコミュニティが形成されていたとはな。

 

そして、左に曲がると、本当に快走路が終わりだということを伺い知ることとなる。

 

ようこそ・・・「険道の世界」へ・・・。

 

道の悪魔の、囁きが聞こえた気がした。

歯牙を向く滋賀

良質な険道

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

入谷、今畑、落合の廃集落群が終わり、市町境が見えてくる頃、道のレベルが一変する。

 

良質な険道。

 

不知火を興奮させる要素の荒さ、狭さ、良さが全てとなる三ツ星コースだ。

 

ようやく滋賀が歯牙を向いてきたと言えるだろう(←言いたかっただけ)。

 

つまらないダジャレはさておき、如何だろう、この険道ぶり。

 

完全1車線で、離合すら許されない道幅。

 

そんな濃いアラウンドビューからの写真をご覧に入れよう。

 

地図リンク

S字を描くロードライン、眩く被さる明るい新緑、重みを与える赤茶の土・・・。

 

これを良質な険道と呼ばずして、なんと呼べば良いのか・・・?

 

不知火の感性のツボに刺さりまくりである。

 

恐らく一般的には都会的な風景が似合うと思われるアウディTTだが、不知火は泥にまみれた道が好きなのだ。なぜかこういった風景が、あるときから好きになってしまい、気が付けば「沼」に爪先から頭頂までどっぷり浸かっていた。

 

作業の時間

険道が歯牙を向いたのにまだいつもの「あのシーン」が無いな・・・。

 

「あのシーン」が無いと、なんだかTTで秘境に来ている感じがしなくて物足りない。

 

なんて思っていたが・・・いつもその時は唐突にやって来る。

 

皆様、如何お過ごしでしょうか、ご無沙汰しております、管理人不知火です。

 

唐突に画面外からフェードインした不知火、作業目標は赤丸で囲った木の枝である。

 

前傾姿勢で、やたらと威勢良く飛び込んで来たが・・・それは単にまだ序盤で体力が余っているからだ。

 

よいしょ・・・。

 

いつ見てもシュールなシーンだ。

 

八百津ダートのときみたく、タンクトップにサングラスとかいうふざけた格好は卒業して「人間らしい服」になったものの、何年経ってもやっている内容は変わらない。

 

地図リンク

・・・からの、美しい1枚をどうぞ。

 

斜面の上部。そこにはによって覆い尽くされた大小様々なが通行する者を見下ろしていた。

 

次元が頭一つ飛び抜けているかのような、ニッチ過ぎる絶勝。

 

その大半が男鬼を目指して素通りしてしまうであろうこの道だが、少しで構わない、斜面を見上げてみて欲しい。

 

言葉失い、心洗われるような自然の光景が、すぐそこに、ある。

 

色濃き酷要素

景色は完全に林道の表情と化した滋賀県道17号線。

 

まだまだ酷な要素は終わらない。

 

ほっほう・・・なんか来ましたね。

 

反射して見にくいが、看板には「路肩欠損のため 幅員減少 走行注意」と書かれていた。

 

近付いて見ると、直感でヤバいな、と悟った。

 

勿論、TTにとって、だ。

 

一旦降りて状況を確認する不知火。

 

ちゃっかり一眼レフを手にしているのは、作業後に撮影することを前提にしているからだ。

 

ヤバいとか思いながら、もはや手慣れたものである。

 

ソイッ・・・(コロコロコロ)

 

石の中には蹴ると結構な重量があるものも存在するので前足底ぜんそくてい(足の指の付け根)か土踏まず(足の内側)か足刀そくとう(足の外側)で蹴るのが一般的だ。爪先で蹴るのは突き指しやすいのでよろしくないからな。

 

地図リンク

作業を終え、撮影タイム。

 

「武奈ストレート」ならぬ、「男鬼ストレート」とでも呼ぶべき直線路。

 

斜面はやや崩落し、涸川かれがわ側はアスファルトが削れ、路盤が剥き出しになっていた。

 

TTにとっては結構深めな抉れ。

 

勿論涸川側へタイヤを落としてブリッジするが、当たるか当たらないか目視では微妙なライン。なるほど・・・確かに八百津ダートクラスの酷区間を秘めた道だ。

 

結果的に超徐行することで干渉せずに済んだ。まあ、あれだ、当たらなければどうという事は無い。

 

先へ進むと分岐に差し掛かる。

 

右手には「通行止」と記された看板、左手には小さな橋が架けられ、奥へと規制も無く道が続いていた。ヘキサで分かる通り、滋賀県道17号線が続くのが方向だ。

 

すっとまあ、左に進むのが正解だろう。彦根まっぷによるとここからは彦根市道5023仏生寺男鬼線になるそうだ。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

現在地。何気にまだ落合廃集落から半分も進んでいないのだ。

 

ちなみに滋賀県道17号線を辿るとこのまま武奈町ぶなちょうを経由して醒井さめがい渓谷に出られるようなので、ジムニー先輩やチャリンコ、徒歩の方は挑戦されてみては如何だろうか・・・?

 

地図リンク

林立する杉、差す木漏れ日、路面埋める細枝・・・。

 

もはや林の中に道を通したというよりも、林の中が偶然道になっていると表現しても遜色無いくらい自然な状態で拓かれた風景。

 

刺さるなんてもんじゃあない、ドストライク過ぎて卒倒しかねない。この道は通る価値が非常に高い、もはや不知火の中で殿堂入りクラスのルートと言えるだろう。

 

これは快走路ですね・・・。

 

杉林を抜けると下がアスファルトの普通な1車線の道になる。

 

路面もフラットなので、快走路と呼べる区分に該当するはず。

 

1車線・・・?路面が良ければ快走路(5・7・5)

 

恐らくこれが快走路と言う人種はもはや酷道勢くらい・・・。

 

だって世間的に見たら酷の部類だもの・・・(笑)

 

そんな快走路もすぐに終わる。

 

他の車種であれば快走路かもしれないが、流石にTTではそうも呼べない道だ。速度を落とし、送りハンドルで細かくハンドリングする。

 

林の中が偶然道になっているようにしか見えない道セカンド。

 

分岐でも無いのに「彦根市道5023」の道路標識を画像に載せてるのは、折角頑張って自作したのに使うシーンが少なくて勿体無いからである。

 

コースも終盤に差し掛かる。

 

思い返せば、何とも濃厚でリッチな道のりだった。路面もそうだが、その風景が不知火的にポイント高い。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

地図を交えながら現在地。

 

示す通り、そこには・・・

 

待ち望んだ、廃集落の風景が姿を現した・・・!

壮麗なる秘められし廃集落

恥じず、佇む、美空間

地図リンク

朽ちつつも堂々たる廃墟、喧騒から隔絶された静謐な一帯、動き続ける自然という物質の歯車・・・。

 

眼福、だ。

 

人々の定住が無くなり、廃集落と化した男鬼。しかし、その集落としての姿には恥じらいというものは微塵も感じられず、立派に佇み、「来客」を迎え入れるかのような、美なる空間があったのである。

 

集落のときは当の昔に止まっている。

 

しかしこの男鬼は他の廃集落とは違う、感じがする。

 

定期的に元住人達が手入れをしているからだろうか。

 

温かみや優しさのようなものを不知火は感じた。

 

居心地が良い、とはこのことだろう。

 

歪みも無く、しっかりと建ち踏ん張る廃墟群。

 

雄々しく立派だ。思わず見惚れて立ち尽くしてしまう。

 

集落内に伸びる一本道をかつては車が往来したのだろう。

 

住人の車だけでは無い。郵便、宅配、ゴミ収集、訪問販売、電気ガス水道・・・様々な車両が男鬼までの道のりを走ったと考えると頭の下がる思いである。

 

廃集落と聞くと、もっとジメッとした、暗くどんよりしたイメージの方が強い。

 

だがここ男鬼廃集落は暗い印象を一切与えない。

 

ニッチなファンが定期的に「男鬼詣」をしたくなる気持ち、それが分かった気がする。

 

春告げる男鬼の一本桜。

 

それは集落を象徴し、見守るかのように柔らかく咲き誇っていた。

 

麗しの風景

ここからは相棒TTを広い駐車スペースに停め、徒歩で回ってみよう。

 

群青に染まる空の下、声一つとして聞こえない。そんな中この景色を独り占め出来るのだ、至福と言う他あるまい。

 

往時、男鬼では広大な山林の土地を所有していたそうで、主要産業は林業から成る製炭だったが、珍しく養蚕も行っていたのだとか。

 

医療や教育といった生活環境の劣悪さから離村が相次ぎ、最終的に1971年に廃村と化した。

 

今となってはあまりお目にかかれない茅葺かやぶき屋根の住居。

 

屋根の茅は点々とした草によって装飾されていた。

 

男鬼廃集落では定期的にこの茅葺屋根を、元住民達で掛け替えているという。

 

離村した今、元住民達が集まる時間や理由というのはかなり減っているだろうが、その一つがこういった、力を合わせなければ成し得ない事、なのだろう。

 

ところで住居の何軒か、破風の部分に「水」と刻まれていることに気付く。

 

水・・・頭をよぎったのは寺院にある双輪の水煙と同じ役割、つまりは火を嫌う装飾・・・。

 

家に帰って調べてみたところ、ビンゴだったようだ。

 

こういった山間部の集落において、火事とは決して起こしてはいけない事象。何故なら、集落に至るまでの道のりが険しく消防の到着に時間を要すること、集落の規模が小さく耐火においても充分では無いことから火災によって一瞬で全滅し兼ねない、からだ。

 

火災を避ける、起きないようにする「まじない的要素」として破風に「水」を刻む住居が多かったのである。

 

ん?ここだけ何か違うな、集会所か・・・?

 

ログハウスの建物。明らかに住居ではなく、人が屋内で集まることを目的とした場所だろう。

 

中を覗き込んでみると、全く荒れておらず、とても綺麗で整頓されている。

 

村民の集会所というより学生をターゲットにした学習教室といった印象だ。

 

外には一瞬墓碑かと思う石組みの場所が・・・。

 

だが、よく見るとそれは違うことに気付く。

 

少年山の家

 

それがこのログハウスの名称らしい。1973年、つまり男鬼が廃村となった2年後に集落の保全目的で自然環境学習型林間学校の少年山の家を開設したということだ。

 

和暦と氏名のイニシャルが彫られており、訪れた学生が記念に・・・と刻んでいくのだろうな。

 

すぐ近くには三角屋根が施された箇所。

 

これは・・・かまど

 

そのようだ。入口はガッチリと塞がれており、既に使われていないと見える。

 

最初火葬場に思ったのだが、どうも違うらしく、少年山の家が研修で使う竃だったのだとか。

 

話は変わるが、美しい集落を撮影中、突如として風や動物の音では無い、不気味な音が耳に飛び込んで来た・・・。

 

キイイイィイイィィ・・・・

 

!?

 

こいつ・・・動くぞ・・・!

 

そう、正体はこの勝手口かってぐちに備わったドアだったのである。鍵も空き、風によって開いたり閉まったりする「自動ドア」になっていたらしい。

 

割とマジでびっくりした。いきなり音がするもんだから、冗談抜きで口から心臓が飛び出すかと思ったぜ・・・。

 

残置する往時のキオク

続いて住居の内部を軽く拝見してみよう。

 

廃墟とはいえ、未だ元住民が定期的に管理している集落だ、あまり土足でズカズカ踏み込むのはしのびない。

 

なので玄関や開け放たれた部屋からカメラを入れて奥を撮っていく。

 

居間の扉が消失し、内部があらわになっていた住居。

 

家具やふすまが散乱しているとはいえ、状態はかなり良好な内部と言える。

 

天井などはしっかりしており、当面の間倒壊の心配は薄いだろう。

 

とある玄関に置かれたレトロな洗濯機。

 

うず潮28と明記された洗濯機は、現パナソニックがナショナルだった頃に発売されたものだ。

 

かなり年季が入っているが・・・まだ使えそうなようにも見て取れる。

 

某青い猫型ロボットのベルが取り付けられたチャリンコ。

 

自転車の大きさと補助輪付きなことから、幼稚園児くらいの子供が住んでいたことになるか。

 

年端もいかない少年が男鬼の険しい山々をこの相棒で駆けていたと思うと・・・なかなかにアツいな。

 

比較的整理された一室。

 

廃墟に残された物を見ると、当時の生活が見えてくるというもの。とある廃墟マニアの後輩が「廃墟は物が残っている方がテンション上がります」と言っていたが、なるほど、そういうことか・・・。

 

風雨が入り込み、障子や床がズタボロになっている住居。

 

それより、右手の襖に貼られた紙が気になるが・・・、

 

読めねぇ・・・。

 

まず字体が分からん。何かしらの格言なのか、座右の銘なのか、少なくとも物忘れを防止する為の覚え書きで無いことは確かだ。

 

こっちはしっちゃかめっちゃかだな。

 

もはや整理するつもり無く、物置として雑多に置いたのか、人為的に荒らされたか・・・。

 

男鬼のGT-R

ところで、とある住居の玄関には1台のペダルカーが置かれていた。

 

辛うじてタイヤに支えられている車体。色味は残っているが、錆びて穴が開いている。

 

個人的に車種を知っておきたいところだが、分からないか・・・?

 

と、思っていたが、フロントグリルにまさかの文字を見つける。

 

「GTR」

 

なん・・・だと・・・?(CV:森田成一)

 

これが「GT-R」だというのか?R32よりも明らかに古い型式だ。全く見当がつかんぞ。

 

だが、家に帰って調べると確かに商品として販売されていたらしい。スカイラインGT-Rのブリキ製ペダルカーだそうだ。

 

なかなかにレアなレトロものを見られるのもまた、廃墟の醍醐味、か・・・。

 

森丘より見守る土地神様

さて、男鬼の廃集落を歩いていたとき、何やら鳥居を見つける。

 

男鬼に来るまでほぼアクセスルート以外の事前情報無しでここまで来たので、発見の連続だったのだ。

 

これはかなりエモい写真が撮れる予感・・・。

 

霊仙山一帯にはヤマビルが出ると聞くので、念の為塩を装備し、斜面を登る。

 

神々しく居留きょりゅうせし鳥居。

 

管理が成されている以上、廃神社では無いのだが、この廃を匂わせる雰囲気はどうだ・・・。

 

秘境集落というだけでもご馳走なのに、廃テイストな秘境神社まで拝謁はいえつたまわるとは・・・至福。

 

日枝ひえ神社、それがの神社の名称である。

 

祭神を大山咋命おおやまくいのみこととし、名の通り大きな山に杭を打つという意味を持つ。農耕や治水といったことを司る地主神として祀られているようだ。

 

滋賀県神社庁によれば創祀年ははっきりしないが、社伝では元久二年(1206年)四月との記載があるという。

 

階段を登り、一礼して鳥居をくぐり境内に足を踏み入れる。

 

広々とした平場だ。右手の倉庫には祭事で用いる品が格納されていると思われる。

 

この場所で祭事が行われたのだろうな。

 

拝殿に続く階段を見やる。

 

苔むした階段と石垣、燈籠に狛犬、と良さみを感じる材料が揃い踏みだ。

 

拝殿は施錠されており、内部を伺うことは叶わない。

 

だがここまででもはや充分、というくらいに強大な神力しんりきたまわることが出来たように思える。

 

男鬼廃集落、並びに日枝神社。最高の秘境スポットだ。

 

終わりに

滋賀県秘境中の秘境、男鬼廃集落。

 

その光景は多くの秘境好きを唸らせる、至高の聖地と評しても過言では無い。加えて道中の険しさや景色の美しさも特筆すべきものがある。願わくば、どうかこのまま男鬼が現状を保ち、後世に語り継がれる存在であって欲しいものである。

 

また、男鬼では思ってもみなかった嬉しいドラマがあったのだが・・・それはまた別の記事で・・・。

 


広告


 

 

秘境カテゴリの最新記事