秘境神社
思わず声に出して読みたくなる麗しい語句である。
一般的に神社と言えば、観光地という意味合いが強く、アクセスが容易で多くの参拝客が訪れるというイメージがあると思う。
しかし、深山幽谷にあり、到達すること自体困難とされる「秘境」という場所に、神々が住まう神聖な領域「神社」。この2つが合わさることで描かれる光景というのはもはや3つ星レストランのディナーメインディッシュと評しても過言では無いのである。
そんな美しい幻の秘境神社が滋賀県にあることをご存じだろうか?
比婆神社
滋賀県彦根市や多賀町には男鬼廃集落や武奈廃集落をはじめとした廃集落が点在しており、一帯を霊仙廃集落群と呼ぶ。
集落と神社は古くから結び付きが強く、集落の繁栄を願う為や祭事、天災を免れる為の祈願といった目的で建てられていることが非常に多く、それはこの霊仙廃集落群においても例外では無い。
比婆神社と名付けられたその神社こそが本レポート紹介物件であり、これでもかと言える程に深い山の地に眠っているのである。
その道は熾烈を極める程過酷で、車種によっては到達すら困難。しかしその美しさは抜きん出ている。早速レポートをご覧頂きたい。
究極の秘境神社を目指して
鳥居までが既にハードモード
現在地は彦根市道5023仏生寺男鬼線。
武奈廃集落での探索を終え、そのまま男鬼廃集落の聖地巡礼を行おうかと思っていたが、そういえば一件秘境神社があったな、と思い立ち寄ることにしたのである。
ちなみにここに来る迄が既にハードモードであるということを付け加えておきたい。ルートは3つ。東に1つ、西に2つ。
①のルートは東の滋賀県道17号線から彦根市道5023仏生寺男鬼線、②のルートは西の林道滝谷武奈線から彦根市道5023仏生寺男鬼線、③のルートは西の林道滝谷武奈から滋賀県道17号線から彦根市道5022男鬼武奈線から彦根市道5023仏生寺男鬼線。
距離は①が短く、難易度もさほど高くないが、途中1箇所だけ路肩崩落しているので、段差のようになっており、車高の低い車にとって鬼門。②は③より距離は短いが、林道から分岐する彦根市道5023仏生寺男鬼線は道幅が狭く、段差のようになっているので、これまた車高の低い車は鬼門。③は一番距離が長い分、最も難易度が低い。ブナピンと不知火が呼ぶ九十九折れが車長のある車にとっては辛いかもしれないが。
どんな道なのか知りたい方は以下の男鬼廃集落までのレポートと武奈廃集落までのレポートをそれぞれお読み頂ければ分かると思う。
直進すれば愛しの男鬼廃集落、右折すれば比婆神社。
ということで右折したのだが・・・
!!!
いきなりこの上質さでお出迎え・・・だと?
出だしから霊魂を抜かれる神々しさ
素朴で味のある鳥居、対に入口見据える狛犬、色濃く密な木々・・・。
神がかっている。敢えて赤色の鳥居で無く、鈍色というのが風景とよく調和しているし、「静謐」という言葉を、まさに体現したかのような場だ。「比婆大神」と力強く書き記された石碑も存在感がある。
初手から霊魂を抜かれてもおかしくない、そんな極みの眺めに思わず溜息が漏れた。
鳥居と狛犬。
鳥居をよく見ると苔が生え、年季を感じさせてくれる一方、注連縄は綺麗である為定期的に掛け直されていることが伺える。
集落の住民が転居し、廃集落となった今でも遷座により跡宮とならず、手入れがされているのは、この神社が今でも信仰の対象になっていることに他ならない。
鳥居の横にあった比婆神社の概要。
鎮座地によると住所は「彦根市男鬼町字䕶持ヶ谷四九四番地ノ五」。途中に書かれている「䕶」は「護」の異体字のようで読み方は「ゴ」。近くにある小字(区画のこと、小字と字は同じ意味)の入谷を参考に、この小字を読むとすれば「䕶持ヶ谷」だろうか。
祭神は伊邪那美大神。言わずと知れた、日本神話の国産み、神産みの神である。この伊邪那美が祀られていることはなかなかに興味深い話があるので、本殿に辿り着いた後で語ろうと思う。
境内坪数は四千五百参拾坪。面積に直すと14975.21㎡。東京ドームのグラウンド面積が13000㎡なので、それより少し広いくらいの面積ということだ。ぶっちゃけピンと来ないが、かなり広いということは分かる。
ドライバーを篩に掛ける序盤
ということで現在地兼改めてレポートスタート地点。
道の線形からしてかなり攻めた難易度だろうということは察しが付く。
はてさて、どんな塩梅かな・・・。
ドキドキしながら鳥居を潜る。
比婆神社参道を車で行った、という例は少なからず存在するが、如何せん走行レポートが皆無の為、全くの未知数。ならば不知火が開拓しようじゃないか。
まだ普通の狭いだけの道。
平坦な上に路面も上々。特筆することは無い。
しかし美しい道だ。
「これぞ美道」と言えるような光景。暫くはのほほんと走れるかな、と楽観視していたところに・・・
はい、路肩欠損頂きました。
早くない?まだ開始5分も経って無いよ?
とはいえ気を使う程の崩れでは無いのでゆっくりと通過するだけで充分。
またまた路肩欠損頂きますっ!
間髪置かず、路肩欠損2nd。初端から試してくれるじゃあないの・・・。
おおっと、路肩欠損と幅員狭小のコンボだぁっ!!
路肩欠損と幅員狭小が合わさればもはや車幅試験。並みのドライバーならメンタルを削り取られていることだろう。
おまけに「ゴンッ☆」というカワイクナイ音が車体下部から聞こえて来たので迅速に確認する。
早いねぇ、もう不知火降りてきたよ。
何度も言うが、まだ開始5分も経っていない。秘境捕獲物語始まって以来、最速の管理人登場かもしれないな。
土下座する勢いで顔面を地面に接近させ車体下部を確認したが、外傷は無さそう。
語らずとも不知火のカオがホッとしているのが分かる。
先へ進むと少し広めになりながら、右に緩くカーブし勾配となっている。
ここからいよいよ登り区間という訳だ。地図で見るとヘアピンに見える為、便宜上比婆第一ヘアピンと仮称する。
初挑戦の場所だが、雰囲気で分かる。
この先はもっとヤバい。
目の前に見える広い場所は言うなれば死地前の最終転回場。鳥居からここまででドライバーを篩に掛け、先に進む腕と度胸があるか試し、不安なら引き返せという計らいだろう。
実際不安なので、一度降りて先を確かめる。
あっち向いていて表情は見えないが、この背中はかなり緊張している背中である()
山に駆ける。
軽妙な走りで先を調べに向かう。九十九折れが連続し、勾配があるだろうことは地図からも察しは付くが、路面までは分からない。
あまりにもエゲつない路面をしていたら引き返す心積もりでいた。
何とも言えない表情で戻ってきた不知火。直射日光が眩しいのもあるが、純粋に行けるかどうか不安なのだ。
しかし、わざわざ滋賀のここまで来たのなら挑んでみるというのが、変態管理人、不知火翔湊の真骨頂でもある。
行けるところまで行ってみるとするか・・・。
修羅にも等しい烈路
現在地はここ。
麓鳥居を潜ってすぐ、路肩欠損と幅員狭小なる車幅試験の洗礼を受けたが、勾配も付くここからが本番。
ということで、早速意を決して登坂を開始する。
今回は不知火の残りHPを示すライフゲージを随所に盛り込もうと思う。まだ心の中でホモォのポーズをするくらいにはメンタルに余裕がある。
ゾクゾクする光景。
ガードレールも無く、ハンドリングを誤れば即座に救急搬送か人生ログアウト可能なキレッキレの断崖路のお出ましだ。
ダートと見紛ごう荒れた道路、噎せ返るほど一面の新緑、緩やかに落ち込む斜面・・・。
だがそれがいい。ただの観光地では飽きたらないツワモノが自ずと向かう秘境。そこには日常では決して味わえないスリルと絶景が、これでもかというくらい詰め込まれているのである。
眼前には相変わらず力強く林立する木々。
過酷、とも評せる大自然の中で長い年月を生き延びる樹木が逞しく思える。
左に鋭く切れ込むカーブ、比婆第二ヘアピンだ。
急激に勾配が増すので、車高の低いTTだと車体を擦る可能性がある。ここは慎重に曲がっていく。
そして坂を登る為アクセルを開けるが・・・
登らない・・・!?
いや、登ることは登るし、加速は出来るが、強烈に鈍い。後程参道全区間について解説するが、この第二ヘアピンから第三ヘアピンに掛けての区間、実は比婆神社参道で最強の勾配を誇る。
21%
それがこの区間の勾配率である。距離にして180m、標高差39mもある。数字だけ見てもピンと来ないと思うので身近なことで例えると、電車6両目の端(180m)から13階建てのビル(39m)を見上げるのと同じなのだ(あまりピンと来ない例え)。
言うなれば・・・そう、烈路。激しく、厳しい、スペシャルにハードな道路だ。生半可な腕と度胸と運では到底走破し得ない、熾烈な道のりである。
現在地はこの辺。
ティプトロニックの2速で登ってきたが、21%勾配に入った途端、トルクが足らず強制的に1速に落とされた。TTは1700rpmから最大トルク29.8kgfを絞り出す強力なエンジン。しかしこの勾配の前では唸りを上げ、回転数を稼ぎやっとという具合だ。如何にしてこの坂がエゲつないか思い知らされる。
比婆第三ヘアピンに差し掛かる。
勾配と平場、平場から勾配に掛けての段差が大きく、切り返し無しで抜けようとすると、やはり腹か顎を擦りそうになる。
よっこいしょ・・・。
なんとかギリギリのところで段切りしながら登る。
あ、これ切り返さないと無理だわ(滝汗)
直感。強引にクリアしようとすれば間違いなく斜面にヒットする。
諦めて一度下がり、鼻先をずらし再度突破を試みる。
ふう、なんとか・・・。
車長4180mm、車幅1840mmのTTでこれだ。もっと長さや幅のある車では切り返しは避けられないだろう。
しかし、なんとまあ険しく麗しい光景だ・・・。
背景を埋め尽くす程の木々にポツポツと見える新緑が目を癒して止まない。一時の油断も許されぬスーパーハードコースであることは間違い無いのだが、それでもこうした光景が見られるのも秘境ならではだろう。
気付いたがこの比婆神社参道、まともな離合ポイントが一箇所も無い。
ヘアピン箇所が一応少し広くなっているので、そこなら或いは可能かもしれないが、そこを除けば対向車が来た場合麓まで地獄のスーパーロングバックを強いられることとなる。
しかもこの狭隘路も九十九折れもバックで、と考えると・・・(白目)
比婆第四ヘアピン。
比婆の九十九折れも残すところこれを含めてあと2つとなった。
ここは段差も少なく、道幅一杯に使えば充分一発で抜けそう。
慎重に車体の位置を把握しながらステアリングを左に入れる。
抜けるっ!(確信)
山肌にハグすること無く、一発でクリア。急勾配付き狭隘路の九十九折れは本当にヒヤヒヤものだな。
美しさは相も変わらず。
どこからでも停めて撮りたくなる。しかし、路肩に足を踏み入れるとヤマビルさんがこんにちはする。現に一匹登って来た為、足で払い退場して頂いた。
男鬼、武奈、比婆地区はヤマビルのメッカなので、冬以外の季節に陽の当たらない柔らかい土に足を置くのは自殺行為だということを今一度お知らせしたい。
ヤマビルの生態について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。ただし苦手は方はご注意。
ガタガタガタ・・・
それにしてもこの比婆神社参道、路面のガタガタ感が半端無い。作業道クラスということや、単純にTTのサスペンションが劣化していることもあるだろうが、終始路面がデコボコで車が上下に動く動く・・・。
それもあって殊更速度が出せず、蟻に追い抜かれる程ゆっくりな最徐行せざるを得ないのだ。
下るのか、ここで。
ずっと登りと思いきや、突如の下り。
1速で固定したままでも速度がグングン伸びていく。速度が上がると路面のボコボコで跳ねる度合いも上がり、崖下人生ログアウトフラグを回収してしまい兼ねないので、ブレーキを引き摺りながら亀もビックリな遅さで走る。
ウフフノフ~~~オハナバタケガミエルワ~
ライフの残りと顔文字を見て頂ければ分かる通り、キテる。
ドラレコ画像だけ見れば大したこと無さそうに見える参道だが、行けばどれくらい過酷か瞬で理解してもらえることだろう。
何故なら猛者揃いの関西酷道勢でさえ「酷」の太鼓判を迷わず捺印するくらいだから。
ラスト、比婆第五ヘアピン・・・!
ここさえクリアすればゴールは目前。
クッ・・・行けるかっ!?
ここも大きくRを描く割には高低差が大きい。強引に行くのは危険だ(何度も言うが車体下部)。
「自分、ハグしてくれてもええんやで(CV:比婆の斜面)」
・・・と言わんばかりに両手を広げて待ち構える比婆の斜面。
こんなところで斜面と一体化したオブジェになるのは勘弁願い奉りたい。
比婆の斜面からの熱烈なラブコールを見事回避(?)。
ここで一度写真を撮っておこう。
大胆かつ急激に高低差を付ける九十九折れ、吸い込まれるような緑と茶のコントラスト、点々とハイライトを入れる木漏れ日・・・。
ヒバピンと命名したこの場所。兎に角絵になる神々しさ。
ぶっちゃけ全部の九十九折れなのでヒバピンなのだが、最もここが美しく撮れる為ヒバピンと呼んでみることにする。
およそ酷の神を具現化したかのような比婆神社参道だが、時折魅せる姿はまさに阿修羅のように美しい。
全てのヘアピンを抜け、残るはほぼ直線のみ。
だがここでも酷の神は牙を剥いてくるのだ。
・・・シテ・・・コ○シテ・・・
顔文字の様子から察して欲しい。不知火のライフはほぼゼロだ。
更にトドメの路肩欠損。ただでさえギリギリの幅員が路肩欠損で削られ、車幅に対しての幅員が足りていない。
致し方無いのでタイヤを左の路肩に落としたが、ゴゴゴというアンダーが擦れる音が聞こえた。背に腹はかえられぬ・・・。
ハァハァハァ・・・
車も中の人もお巡りさんにしょっぴかれ兼ねないくらい怪しい過呼吸状態。ポケモンで言えば「きしかいせい」の如く最後の力を振り絞り勾配を登り詰める。
!!!
見えた!恐らくここが参道終点・・・!
比婆神社駐車場の現在地。
時間的には15分くらいしか掛かって無いが、濃密な15分。山頂に辿り着いた証に酔いしれようじゃないか。
死闘の果てに広がる神聖なる絶景
覇者が望める頂鳥居
麓鳥居と対なる質素だが端正な頂鳥居、深く覆われた森、本殿へと続く石段・・・。
秘境。鳥居と、背後に控える林立する木々のみの景色はまさに秘境。非常にシンプルで飾り気が無いというのがまた己の達成感を後押ししているようにも思える。
アングルを変えて1枚。
見渡す限りほんと森。人工物は鳥居と石段くらいしか見えない。こんなところにアウディTTで来た変態は恐らく不知火が初めてだし、今後他のアウディTT乗りが現れることも無いだろう。
八百津ダートを初めて走破したときのような強い愉悦に暫し浸っていた。
静寂に包まれた本殿への道
相棒TTのエンジンを切り、周辺を探索しつつ本殿へと向かおう。
何度も言うが、この鈍色の鳥居が素晴らしい。秘境神社という空間にベストマッチしている。
鳥居の後ろを見ると建立日が書かれており「昭和三十八年四月吉日」だそう。
自分の年齢で1963年と見ると充分古く感じるが、男鬼廃集落の開墾が700年頃であることを考えるとかなり新しい時期に建てられた鳥居ということになる。滋賀県神社庁によれば1751年には既に神殿が築かれていたが、老朽化に伴い、再建されたようだ。
下方へと続く石段。旧参道跡だろうか?
少し歩いて下を見てみたが、すぐに石段は消失し、見失ってしまった。現在は車道を伴った現参道があることからも、旧参道の有用性は低いことから、補修されること無く、自然に埋もれていくことだろう。
広い空間。駐車場だ。
地獄みたいな参道を登ってきてここまで広い駐車場があるとは露にも思わなかった。
春と秋に行われる比婆神社の大祭ではここに車が沢山並ぶのだろう。隊列を組んで一斉に車が登って来る光景は圧巻ははずだ。
鳥居から本殿へと続く道。
固く踏み締められた上に砂利が敷かれており、ヤマビルが出て来る心配は皆無の為、安心して歩くことが出来る。固い土は突き破れ無いからな。
2基の燈籠に迎えられる。
もう少しだけ道は続き、益々その雰囲気に引き込まれて高揚感が増していく。
燈籠と車止め。
一見通れないのかと思ったが、脇は人が通れるスペースになっており、そこから奥に進むことが出来る。
頂鳥居のある駐車場から歩くこと僅か数分。比婆神社の本殿は目と鼻の先にある。
ではお立合い。秘境が奏でる絶景を御照覧あれ。
完全無欠の秘境神社
精緻な造りの本殿、荘厳なる御神木、苔むした岩肌・・・。
いかんな・・・豪華絢爛過ぎる。
ここにお茶碗一杯白米だけ持ってきても余裕で完食可能なくらいに、絶景のツボ。
伊勢神宮などで代表される古くからの神社建築様式、神明造が施された本殿。
樹木と岩肌に覆われた境内だが、本殿には光が射し込み、神聖と言う他無い。
社務所もベンチもトイレも無い、とてもシンプルな構成。故に滅多に人が訪れることも無く、一人で心行くまで比婆の空間を謳歌出来るのだ。
背後には峻険な斜面に根を伸ばす数多の樹木。
如何に過酷な場所に開墾された神社なのかよく分かるというもの。
木々岩々という大自然なことが溜まらない。
加えて比婆神社本殿までの道のりは烈路と言うべき酷の極み。
だからこそ、マイカーで辿り着いたときの悦びと言ったら他に無い。
よく見ると祭壇のガラスには一窓小さく開いているところがあり、下に三方が置かれている。ここから三方に賽銭を入れるのだ。
普通神社であれば賽銭箱だが、比婆神社の場合、参拝者も少ないことから「お月見」で調べると月見団子を置いているあの器、三方を設置していると思われる。
100円玉を三方に入れ、鈴の付いた麻縄を鳴らし、二礼二拍手をしてから住所と氏名を伝え、お願い事を唱えた。最後に一礼をして参拝を終える。・・・何を願ったかは内緒だ。
豆知識だが、神社参拝の注意点を箇条書きで書いておこう。
・神社の鳥居は世間と神域を区切る結界のようなものなので境内に入る前は鳥居前で一礼
・日没後に参拝するのは悪い霊が神社に集まりやすく、開運効果がダウンする上、下手すると憑依されるので、大晦日から元旦の特別な日以外は止める
・神様は白いキラキラしたお金に反応するので、お賽銭で使うお金は1円、50円、100円、500円、1000円札、10000円札が良いが、神様はお金の価値は分からないので、ご利益は1円でもしっかりある(10円のような赤いお金はお寺で使う)
・麻縄は左右に揺らすのは間違いで、手前に3回揺らすのが正しい(神様を「手前」に呼び寄せる)
・いきなりお願い事を唱える人がいるが、神様に名乗らないとどこの誰だが分からず叶えようが無いので、住所と氏名を伝える
・お願い事は例えば漠然と「お金持ちになりたい」よりも「ブログを書いて得られる広告収入を毎月10万円にしたい」といった具体的な内容の方が叶う方向に進む
・本殿で参拝した後、本殿の方を振り返ってしまうのは「神様を信頼していない」ということになり、神様はショックを受けるので、境内入口の大鳥居を出るまでは決して後ろを振り返ってはいけない(出た後はOK)
比婆神社の祭神が伊邪那美であることは前述したが、何故伊邪那美なのかについては裏付けにも似た諸説が多くある。
伊邪那美はその夫、伊邪那岐と共に天之瓊矛で日本創造を行い、多くの神々を産み出した。しかし軻遇突智を産んだ際に火傷を負い、それが元で亡くなってしまう。亡骸は広島県と鳥取県の県境にある比婆山に埋葬される。伊邪那美は死後、黄泉国にいたが、伊邪那岐は伊邪那美に会いに黄泉国へ向かう。伊邪那美は「変わり果てた」自身の姿を見られたくない為、黄泉の神々に現世へ戻れないか相談しに行くが、その間決してこの扉を開けず、扉の前で待っていて欲しいと頼み込む。伊邪那岐は快諾し、扉の前で待つが、待てども待てども伊邪那美は来ず、痺れを切らして扉を開け、「変わり果てた」伊邪那美を見てしまう。絶望する伊邪那岐、激怒する伊邪那美。逃げる伊邪那岐に黄泉の大軍勢を伊邪那美は差し向けるが、何とか伊邪那岐は逃げ延びる。伊邪那美は「裏切った仕返しに1日に1000人の人を屠る」と言い、伊邪那岐は「ならば1日に1500人の人を産ませる」とそれぞれ誓う。愛情が愛憎に変わった瞬間だった。こうして伊邪那美は黄泉の主神となり、黄泉津大神と呼ばれるに至ったのである。
この物語にもあるように、伝説上では伊邪那美が埋葬されているのは中国地方の比婆山。しかし、滋賀県のこの山もまた比婆山。そして御神木のすぐ横には小さな穴があるのだが、この穴がまた興味深く、比婆山山頂付近には複数の大規模な洞窟が存在している為「黄泉国へと通じる穴」を想起させるのだとか。更にはここからすぐ近くの多賀大社には伊邪那岐が祭神として祀られているのだから、こういった事象を絡め、比婆神社に伊邪那美が祭神として選ばれたのは必然だったようにも思える。
日本神話についてもっと読んでみたい、でも長ったらしい文章は読みたくない、という方はこちらの「ラノベ日本神話」様をどうぞ。「絵が可愛い、分かり易い、面白い」の3拍子揃っていて不知火もとても好き。
比婆神社参道の道のり解説
比婆神社参道がどれくらいイカれているか軽く解説しておきたい。地理院地図の計測機能を使用し、距離と標高差から勾配も計算している。
まず彦根市道5023仏生寺男鬼線分岐の麓鳥居から駐車場のある頂鳥居までの直線距離は601m、標高差は201m、勾配は実に33%ある。
東京で例えると麻布警察署から泉ガーデンタワー(200.9m)を見上げる距離、大阪で例えると府立市岡高等学校のグラウンドからクロスタワー大阪ベイ(200.375m)を見上げる距離と同じなのだ。・・・まあ、実際にはどちらからもお目当てのタワーはビル群で目視出来ないが。
つまるところ、直線距離601m、標高差201mをストレートに登ろうとすると33%という狂った勾配になってしまう為、九十九折れを設けて迂回、結果参道の総距離は1512m、平均勾配を13%にまで抑えているのだ。
それでも第二ヘアピンから第三ヘアピンまでの区間は180mの距離に対して39mの標高差があり、勾配もそれに比例して21%を叩き出してしまっている。マイカーで行ってもらえれば分かるが、本当に車が唸りを上げる。
そういった要素も相まって、比婆神社参道は上級者向けのスーパーハードコースに仕上がっている、という訳だ。
終わりに
およそとんでもないくらい酷な道である比婆神社参道。
誰でも彼でも訪れることが出来る訳では無く、相応の腕と度胸を持った者だけがマイカーで走破出来るのである。
そして参道終点に待ち構える比婆神社本殿は最上級の美しさと神々しさを誇り、秘境神社の王と称しても過言では無い。
腕と度胸に覚えのあるツワモノは、是非一度だけ、全身全霊で走破してみては如何だろうか。
終
相棒TTと撮影したオススメスポットを地図にまとめています。
良ければ愛車と写真撮影する際の参考にして下さい。
記事内にイチオシスポットも挙げて幾つか紹介しています。
今まで訪れた秘境スポットを地図にまとめています。
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僕が行ったことのある観光地をマイマップにまとめました。
観光地についてもそれなりに行っていますので是非見てみて下さい。