【新潟県】【廃鉱山】秘境に隠れた絶景古代遺跡!持倉鉱山跡

【新潟県】【廃鉱山】秘境に隠れた絶景古代遺跡!持倉鉱山跡
 


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不知火は古代遺跡のような廃墟が大好物だ。

 

建物の外観の大部分が喪失し、骨組みだけとなった姿を美しいと思うか、もの哀しいと捉えるかは人それぞれだが、少なくとも僕はその類いの建築物を前にすると狂喜乱舞する。

 

滋賀県の土倉鉱山跡千葉県の鋸山吹抜洞窟といった、まさに遺跡のような空間感動を通り越して茫然としてしまう程である。

 

そんな不知火垂涎の古代遺跡のような外観の鉱山跡が新潟県の山奥にあるというのはご存じだろうか?

 

持倉もちくら鉱山跡

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

地図リンク

新潟県北東部に位置する阿賀町あがまち五十島いがしまは952㎢の面積を持ち、県内3番目の順位を誇りながら人口は約1万人という典型的な田舎町だ。

 

磐越自動車道や国道49号線によって、福島県とも接しており、隣県との繋がりも深い町と言えよう。

 

その阿賀町に、阿賀野川水系の五十母いそも川が流れており、川沿いに位置しているのが本レポート紹介物件、持倉もちくら鉱山跡である。

 

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ミックンさんが書かれている「持倉鉱山 関連記事」によると江戸時代の承応元年(1652年)に十郎右衛門が持倉を採掘したのが始まりとされ、当初は銀鉱床があったことから「持倉銀山」とされていたようだ。

 

その後明治37年(1904年)、寺田助松が銅鉱床を発見、明治39年(1906年)に小出淳太が同地を買収し「持倉銅山」として正式に稼働が始まった。この銅山時代の建物遺構が現在「持倉鉱山跡」の名で知られているということだ。銅山は大正9年(1920年)まで採掘され閉山、最終的には五十島鉱業が昭和37年(1962年)まで蛍石を採掘し、完全に持倉鉱山としての役目を終えた。

 

簡単な概要説明はこれくらいにして、探索レポートをお送りしていこう。見応え抜群な鉱山遺構を特とご覧あれ・・・。

 

相棒TTダートアタック

怪しさ満点な林道ファーストインプレッション

五十島集落地帯を抜け、五十母川の横を縫うようにして通る1本の田舎道。現在不知火はその道を南下中だ。

 

一応離合すること無く対向車をやり過ごすことが可能な道幅だが、恐らく大体のドライバーが「ちょっと気を使う」レベルの道幅、と形容出来ると思う。

 

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やがて新潟県道17号線のT字路とぶつかることになる。

 

ぶっちゃけ、他に書くことは無い。

 

T字路を右折。

 

新潟県道17号線は主要地方道でもある為、そこそこの交通量があるかと思い、一時停止後、慎重に左右の確認を行い、曲がって行く。

 

だがその思いは杞憂に終わることになる。

 

うわ、めっちゃ静かやん。

 

てっきり軽トラの1台くらい出逢うかと思っていたが、交通量の「こ」の字も無い。まあ恐らくたまたまだろうが。

 

五十母川上に架かる1車線の橋を渡り切り、持倉鉱山方面への分岐が現れる。

 

Googleストリートビューでもトレース出来ない為、ここからは出たとこ勝負・・・!

 

1車線なことは予想通りか。

 

対向車が来ることはまず無いと思うが、万が一ということもある。飛ばすのは控え、「大人しく」進むことにする。

 

分岐・・・?

 

航空写真で予習した限り、このまま直進するのが正解なはずだ。仮に間違っていても、後退すればいいだけの話なんだけども。

 

また五十母川を上に架かる橋か。記事序盤でここまで「五十母川」というキーワードが挙がるとも思わなんだ。

 

言っておくが、別に五十母川LOVEな訳では無い(聞いてない)。

 

またも分岐・・・。しかしこっちの分岐は恐らくさっきの小さい分岐と違い、道を誤るとOUTな類いだろう。

 

一旦相棒TTから降りて周囲をチェックする。

 

さあて、正解はどれかなぁ~、方角的には←か↑だと思うが。

 

ちなみに相棒TTのラゲッジルームに凄まじい量の荷物が詰め込まれているのは気にしないでくれ。不知火が単独で県外車中泊兼探索を行うときのデフォルトなのだ。寝る場所が運転席か助手席か後部座席か荷室かはそのときの疲れ具合とその後のスケジュールに寄るが、最近はちゃんと荷室にエアマットを敷いて横になることにしている・・・。

 

・・・という能書きは置いておいて、写真左手に1本の木棒がニョキっと生えているな。

 

林道持倉線

 

しっかりはっきり明記されているじゃあないか・・・!ということは間違い無くこの先に伸びる道が鉱山跡へと通じる林道だ。

 

その林道持倉線入口。

 

いきなりダート、しかもセンターに草が伸び、水溜まりが散見されている。これは・・・対処を誤ると泣きを見るパターンだぞ・・・。

 

一見不気味さは成りを潜めた明るいダートのようにも思えるが、不知火的には怪しさ満点なファーストインプレッションと言った感じだ。

 

なんてフニフニ言っていてもしょうがないので、腹を括り相棒TTに乗り込み、入線する。

 

林道全線は無理だとしても、行けるところまでは行っておきたいものだな・・・。

 

予想に反するイージーな入線序盤

ガタガタガタ(路面の音)・・・サササササ(草が下を掠める音)・・・ボッコンボッコン(水溜まりの穴にハマる音)♪

 

合唱かよ、と思ってしまう程多様な音が車外から聞こえてくる。運転席からでは得られる道路状況は限られてくるので、舗装林道を走るとき以上の集中力が求められる。

 

水溜まりのサイズはまちまちで、小さい物から大きい物まで色々だ。

 

透き通っている水なら水深が分かるが、こういう泥水の場合それが全く読めない為、下手に水溜まりの真ん中を通るとかなり深くて「バッコン」という嫌な音が聞こえることがある(というかあった)。

 

水溜まりの両端がストンと深く落ちているケースはあまり無く、大抵緩やかに中央に掛けて深くなるので、出来るだけ溜まりと土のギリギリにタイヤを乗せることにする。

 

ここで一眼レフのお写真を一枚。

 

写真からだと簡易舗装のようにも思える路面だが、れっきとしたダート路面である。青々しく葉を携える草木が美しく、思わず暫し佇んでいた。

 

行軍再開。

 

至る所に離合用とも駐車用とも取れるスペースが配されており、対向車が来てもそこまで焦る必要は無さそうだ。

 

あ、また五十母川が。

 

いい加減五十母川という言葉に食傷気味だが、嫌でも目に飛び込んでくるのだからどうしようも無い。

 

両脇のみならず、中央からも茂る草を有する橋。

 

橋は舗装されているのだが、どういう訳か上に草が伸びているのだ。

 

流石に閉山してから半世紀以上も経過すればこうなってしまうのも必然なのだろうか。

 

ぶっちゃけ水溜まりさえ回避すれば何とかなる。

 

林道入口で感じていた怪しさはどこかへすっ飛んでおり、水溜まりのボコボコ以外は割とフラットなダートで拍子抜けしてしまった、というのがこのときの不知火の心境である。

 

・・・そう、そう思っていたのだ、このときまでは。

 

持倉線に仕込まれた刃

いつの間にか左右を覆っていた森林は消え去り、→川、←藪という比較的開けた林道へと様変わりしていた。

 

先程うんざりするほど回避した水溜まりもどこかへ行き、2本のタイヤ跡とも言えるダートが明確なガイドレールのようだ。

 

1車線の林道を走るとき、気を付けるべき点は数多あるが、その1つは転回スペースにもなる待避所を押さえておくことだろう。

 

万が一走行困難に思えたとき、無理してでも道路の障害を突破して進むべきなのか、無理せず待避所まで引き返すべきか判断する材料になるからだ。

 

うん・・・?なんか路面荒れてきてね・・・?

 

車体が受ける振動が明らかに増しており、見るとゴツゴツした岩が顔を覗かせ始めている。

 

ウェッ・・・!岩・岩・岩!しかも表面尖ってる!!!

 

不味いな、岩の高さ的にもセーフラインギリギリだ。しかも最悪なことに岩はガッツリ地面に食い込んでいるので、バカでかいスコップかユンボでも使わない限り掘り出せない。

 

万事休す、しかし、行く・・・!

 

ゴ・・・ゴゴゴ・・・ギギッギャッ・・・バキ♪

 

あ゛

 

やべ、これ完全にアンダー逝った音ですわ・・・。

 

一気に冷や汗が噴き出し、進行と後退で逡巡する不知火。

 

どうする?相棒TTの車体ダメージも確認しておきたいし、一旦降りておくか・・・?

 

ええ、勿論降りました。唐突にフェードインしたのは秘境捕獲物語管理人、不知火です。

 

探索用のベストとクライミング用のズボンを着込み、ゆっくりと落ち着いた様子も見えるが、内心車体ダメージが心配で焦って仕方ない不知火です。

 

うーむ、外観を一回りしてみた感じ、でかい被害は受けていなさそうだ。

 

フロントマッドフラップも折れてないし、アンダーカバーも穴は開いていない。不幸中の幸いというやつか。

 

この後少し徒歩で先を見てみたが、荒れ方に拍車が掛かっており、どうやらこの辺りが相棒TTでの限界のようだ。

 

記念撮影。

 

およそアウディTTに似付かわしくないような草ボーボーの林道のど真ん中で撮っているのだ。もはや「ド変態」と思われても不思議じゃあない。

 

センターの草やべぇな(笑)。

 

新潟県の雪も降る阿賀町の5月下旬だというのに、スクスクと健康的な成長を見せる草。

 

5月でこれってことは8月とかどうなるんだろうな。

 

岩の鋭さに恐れを無し、無残な敗北(後退)を強いられる不知火。

 

悲しきかな、いやしかし無謀に飛び込み、破損や事故で自走不能になるより遥かにマシだろう。

 

・・・などと自己擁護に走るが、つまるところチキンで自信が無くて撤退しているだけだ。

 

えっちらおっちらバックさせ、手頃な待避所にお尻から突っ込む。

 

仮に他車が走行しても邪魔にはなるまい。

 

ウェーダーに着替え、カメラバッグにカメラ一式を詰め、探索ベストのポケットに飲料やヒル除け、タバコを仕込み、いよいよ徒歩で鉱山跡へ向かう。

 

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現在地。林道持倉線からすれば終盤だが、鉱山跡までの道のりで言えばやっと半分くらいだ。

 

さて、どんなドラマが待ち受けているのだろうか?オラ、ワクワクしてきたぞ!

 

リバーサイドアドベンチャー

時に臆病者こそ勝者なり

林道持倉線を相棒TTで進むも、埋まった石や岩に恐れを成し、手頃な駐車スペースに捩じ込ませた不知火。

 

まだ5月だというのに、射し貫かんばかりの太陽光に肌をジリジリと焼かれ、早くも汗が滲み出す。

 

歩き始めてすぐ、問題の路面をマジマジと見る。

 

こりゃエグいな・・・チキンに車両撤退したのは強ち間違いでは無かったような気がする。

 

いや、これさ・・・でけぇよ(笑)。

 

まさにスポーツクーペ殺しだ。UVERの曲じゃないが、時に臆病者こそ勝者だと思えなくもない。

 

こいつはこいつで繁茂し過ぎだろ・・・。

 

道路のセンターに我が物顔で居座るニョッキニョキなグラスライン草のせいか分からないが、以前相棒TTのアンダーに伸びる排気センサーケーブルのクリップが外れ、宙ぶらりんになっていたので潜ってセルフ補修したので、あまり勢いのある草の道を走りたく無いのだ。また外れたら嫌じゃん。

 

林道終点付近ともなるとこれだ。

 

道は衰弱し、タイヤの跡が残っているのみである。どうでもいい車に乗っている時くらいしか、ここまで進みたいと思わない。

 

っと、広くなったな。どうやらここが林道持倉線の終点らしい。

 

数台分の駐車スペースを残し、道がスッパリ途切れている。

 

変な柵(?)がある。

 

柵なのか何なのかぶっちゃけ見当が付かない。1本だけタイヤが干されているし、タイヤ干し用なのかな・・・?(困惑)

 

おおっと!ここで「熊出没注意 新潟県」看板のご登場だ!

 

そう、出るらしいのだ、熊が。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

そしてここが現在地。こうして見ると残り区間はすぐ・・・に思えるが、

 

・・・そうは問屋が卸さない・・・。

 

山中に伸びる獣道

獣道、である。

 

林道終点ということから容易に予想出来ることではあるが、こうして改めて直面すると腰に下げたマチェットを振り回すハメになるのかな、と考えてしまう。

 

分かりますか?うっすら道が見えているのが。

 

確かに大概獣道なんてこんなもんだ。もはや踏み跡が消えているレベルの道なんてゴマンとある。ここはまだマシな方だろう。

 

濃くなるねぇ・・・。

 

サック、サックと地に生える草を踏みしめながら奥地を目指していく。

 

時折こうしてアスファルトが現れる。

 

ということは元々林道持倉線はこの先まで伸びていたのだろう。往時は鉱山跡まで通じていたようだが、崩落により消失したのだとか。

 

そんなアスファルトもすぐに見えなくなり、陰りのある場所に入る。

 

こういう場所は極力立ち止まりたくは無い。何故なら・・・まあ、すぐに分かる。

 

です。

 

・・・なんて言葉を使ってみたくもなるが、実際はそこまで密では無い。

 

似たような景色ばっかりだな・・・。

 

面白味に欠ける。仕方無いことだが、あまり代わり映えしない風景だと流石に書くことが無くなってしまう。

 

砂防ダムが見えてきたな。

 

勢いよく五十母川の水流が音を立て流れ落ちる。遠目からでもなかなかに迫力がある。

 

目線を前に戻そう。

 

相変わらずの薮を交えた獣道。太陽光が当たらないから涼しいかと思いきや、さっきから歩きっぱなしなので、汗は一向に退く気配を見せず、ダラダラと流れ地面に滴り続けている。暑い・・・。

 

ん?小川が。

 

運動靴でも優に渡れそうな、とても小さな川。そこは段差になっており、川に降りる為にパイプ製の梯子が掛けられていた。

 

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林道終点から始まった徒歩区間も早半分を消化済。あと少しといったところか。

 

件の梯子。

 

降りてみた感じグラつきも無く、しっかりとしており安心して身体を預けることが出来た。向こう数年はこのままでも持つだろう。

 

小川を渡り、軽い段差を登るとすぐに獣道が復活する。

 

踏み跡は残されているので結局マチェットの出番は無さそうだ。

 

右を見やると砂防ダムが鎮しており、淡々と水を流す役割をこなしていた。

 

ダムの入口には柵と看板が設けられ、「危険」と書かれているが、そもそもわざわざ砂防ダムの上を通ろうとする愚者はいないと思うのだが・・・。

 

望まぬ「アレ」との再会

薮との密時間もあと僅か。

 

ただひたすらにひたむきに、黙々と獣道を進んで行く。

 

川が近い!そしてすこぶる綺麗!

 

思わずジャンプインしてみたくなるくらいの清流だ。上流になればなるほど川の水も澄んでくる。

 

ジャンプインしたい気持ちを堪え、安全に入渓可能な地点まで足を動かす。

 

この辺は岩や木の根でゴツゴツしている為、一歩一歩慎重に移動する。

 

身体の動きが大きくなるに連れ、発汗量も比例して増す。故にマメな水分補給は必須事項とも言える。

 

・・・ところで、この持倉鉱山跡までの道のり、熊以外にもアレのメッカだそうだが、まだ見ていないな・・・と思い、念の為足元に目線を動かす。すると・・・

 

ヤマビル「ご無沙汰しております、新潟県阿賀町のヤマビルと申します」

 

不知火「あ、どうもご無沙汰です・・・」

 

おるやん、ヒル坊・・・。

 

ウェーダーを着ているので、足首はガードされているし、胸元まで這い上がらない限り吸血されることは無い。とはいえ、チンタラしていると血液の支給を許してしまうので、ベストのポケットに入れた調味料ケースの塩をふりかけ、この世からご退場頂いた。南無・・・。

 

ヤマビル多そうだし、一旦手荷物はしまって移動に専念した方が良さそうだな・・・と思い一眼レフを固定していたその時、

 

あ゛・・・。

 

不注意にもゴム手袋を斜面に落としてしまった。

 

耐水、耐油、耐摩擦を誇るアトムのゴム手袋は、秘境探索初期から愛用している相棒である。故に紛失する訳にはいかず、何としても回収する義務がある。後で拾ってやるからな、相棒・・・。

 

そしていよいよ獣道もラスト。

 

段差に張られた簡易ロープを掴みながら足を川に降ろす。

 

入渓。

 

水深は浅く、長靴でも充分なくらいだ。

 

・・・では早速、相棒の回収作業に取り掛かる。

 

手袋を落としたポイントまで戻り、斜面を見上げると、臙脂えんじ色の手袋が転がっていた。

 

川に浮かぶ手頃なぼっこ木の棒を掴み、手袋目掛けて突っつく。

 

回収成功。

 

救助者であるぼっこと被救助者である手袋の図だ。これでほっと一安心。良かったぜ、相棒・・・。

 

ここらで一服付けるか・・・。

 

川の中はヤマビル奇襲の心配も無いのでゆっくりとモクタバコをやることが出来る。この日はブラックスパイダーのアイスバニラとチェリーコーラ、写って無いがガラムスーリヤ缶を持ってきた。やはり山に潜って吸う1本は格別だな・・・。

 

五十母川を見渡す。

 

この辺りは流れも随分穏やかで河原で昼食を取りたくなる。まあ熊の危険がある以上、あまり無防備な姿を晒しているのは不味いかもしれないが。

 

ジャブジャブ、と川の水を掻き分け上流側へと進むこと数分、念願とも言える「御姿」が眼中に飛び込むことになる・・・。

 

!!!

 

左上に写っている武骨な灰褐色の建造物、これが、もしかしなくてもっ・・・!

 

持倉鉱山跡、到着・・・!

 

お約束(?)な出来事

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

現在地はここ。まさに持倉鉱山跡の施設目の前である。

 

ここからは写真などを元に手描きした拡大俯瞰図を元に現在地を示したいと思う。

 

「N」と記したのは北、つまり不知火がえっちらおっちら歩いてきた方角。

 

まだ五十母川の真上に突っ立っていて、これから土手を登ろうとしているところ。

 

しかしこの土手、なかなか高さがあり、不知火の頭(1.7m)くらいはある。更に壇上と川辺の間にある段差はこれまた不知火の胸(1.3mくらい?)ときたもんだ。

 

服装が陸上用の探索着なら問題無いが、今回は河川用のウェーダーを着込んでしまっている。このウェーダーがクセモノで、股の部分が予想以上に伸縮せず、胸の高さまで足が上がらない。

 

え?これアカンやつやん・・・(滝汗

 

ええい、ままよ!!

 

と、半ばヤケクソ気味に強引な開脚から段差に足を載せ重心を移動し壇上へ行く・・・はずだったのだが、

 

フッ・・・ズルッ・・・バキッ・・・ジャッパーン!!!

 

いってぇ!!!

 

重心を移そうとした瞬間、ウェーダーの貧弱な伸縮性が遺憾無く発揮され、足が上がらずそのまま体が反転、川の中に背中からダイブイン。しかも川に落ちる際、左足を岩に踵落してしまい、膝の裏に激痛が・・・。

 

しくった、横着して片手で登らなければ良かったな・・・。二度目の正直では一眼レフを岩の上に置き、両手でちゃんと登りました。

 

では、お立ち会い・・・。

妖美端麗

「美」は質素にこそ極まれり

彩りを与える草群、突き抜ける青き天空、端正なる煉瓦造り・・・。

 

そこには、RPGで舞台になるような、古代遺跡が静かに、しかし堂々と居座っていたのである。

 

素朴としか言い様の無い程に装飾が消え失せ、基礎となる煉瓦のみが残されているという、もはや現役時の役割を全て喪失した状態。

 

だがそれこそ、だからこそ、ここまでシンプルながらも見るものを惹き付け、飽きさせることが無いのだろう。

 

廃墟とは儚い類いのもの。文字だけではそう連想してしまうかもしれない。だが本当にそうだろうか?これが本当に儚いものか・・・?

 

違うだろう。中にはそういった場所もある、しかしここ持倉鉱山跡は、廃墟となり荒廃した今だからこそ、妖美とも称せる雰囲気を纏い、第二の生を賜ったと感じる。

 

「美」は質素にこそ極まれり・・・そんな言葉が脳裏をよぎる。

 

思えばギリシャにある古代建築物もそうだ。荒廃し、装飾というベールを脱ぎ捨て、ありのままを晒け出している今日でも、それは「美」としてあまね膾炙かいしゃし、人々に認められている所以ゆえんと程近いのだ。

 

気分はまさに冒険者だ。

 

クエストを受注し街の外に通じる門、死闘演じるコロッセオの入場口、はたまた魔物が出没するダンジョン入口・・・。捉え方は人それぞれだと思うが、見方や感性が異なるだけで様々な出迎えを施してくれる・・・そんなロケーションと言えよう。

 

OpenStreetMap and contributors CC-BY-SA

現在地は正門に当たる場所。次はその内部を見て行こう。


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正攻法で魅せを演じる晴れ舞台

内部に入りすぐの地点。

 

まるで中庭のように見えるが、往時は職員が机椅子を並べる仕事場だったはずだ。

 

目線を上に向ける。

 

晴天の下、何とも良く映える均整の取れた意匠だ。

 

ここまで来ると設計者は予め、廃墟になった場合の状態を想定し、設計図を起こしたのでは無いかと考えてしまう。

 

あまりにも緻密に練られた基礎。どこか設計者の拘りのようなものを感じた。

 

煉瓦、植物・・・ただそれだけの組み合わせ。

 

なのに何故こんなにも魅力的なのか・・・。

 

全く派手な訳じゃ無い、だが美しい。

 

それはこの単純明快な「正攻法」が為せる技なのかもしれない。

 

まるで極限まで空腹感に耐え、目の前に中華フルコースが置かれたときに鼻腔を刺激するかのような芳しい香り。食欲をそそられるが如く、撮影意欲が沸き立ち、一心不乱に「構図」の虜になっていた。

 

遺跡を固守こしゅせしいにしえの「傀儡くぐつ

静穏なる秘境に構えし荘重なるアーチ・・・。

 

どこを撮っても息を呑む持倉鉱山跡のなかでも、これはとりわけ際立つ幽趣ゆうしゅな地点。

 

もしアーチに結界が張られていて、くぐった刹那に異世界へと転移してもなんら不思議は無かろう。

 

アーチをくぐる。

 

異世界への転移は・・・無論実装されなかったが、現実という垣根を超え、現実と異世界の狭間を跨ぐ、さながら異空間のような風景が待ち構えていた。

 

現在地は正門から脇に逸れ、外壁の無い川側のポイントだ。

 

とにかく語りに困らない物件だ。遺跡調の外観を成しているのが不知火的にポイント高い。見て良し、触れて良し、撮って良しと3拍子揃った、審査員総評オール満点な優良株と言えるだろう。

 

なんて、悠長に過ごしていたのだが、そこに、何やら不気味な威圧感を感じた・・・。

 

なっ・・・ゴーレム・・・!?

 

恐る恐る辺りを見回し、ふと天を仰げばそこにはゴーレムが・・・・・

 

って、違うそうじゃない、周囲に感じた言い様の無い威圧感の正体はこの聳える外壁だ。

 

被写体の切り取り方によるものだが、堂々見下げる姿は錬金によって生成されし傀儡くぐつ、ゴーレムに見え、今にも動き出してしまうのではないかと考えてしまう。

 

とはいえ、こうして改めて見ると頭、胴体、腕、脚を纏ったゴーレムが、壁に擬態しているようにも・・・・・流石に無理があるか。

 

ちなみに持倉鉱山跡の建物に使われている建材はカラミ煉瓦というものである。

 

これは元々、銅のような鉱物を精錬した際に生じる廃棄物で、それを煉瓦の形に固めたものだ。主成分は鉄とケイ素で、微量の銅も含まれている。

 

その為非常に重く、光が当たることで鈍色の光沢を放っており、高い耐久性を誇っているのが特徴だ。

 

人工聖遺物せいいぶつでありながら、これほどまで見事に植物と共存し、調和を取っている。

 

これはもはや芸術と呼ぶに相応しい。

 

別に見たくも無いアレ

現在地。建物内部の広さに対して移動距離が短いのは、初夏の薮事情が思いの外凄まじく、踏み込む気が起きなかったというのが本音だ。

 

薮が凄い→ジメッとした根元→日陰、ということはつまり・・・

 

ヒルがいるという証である。

 

足音を殺し対象を狙う忍者が如く、毎度のことながらあっぱれと言う他無いくらい完璧な隠密行動だ。気が付けば不知火のウェーダー長靴部分の境目まで這い上がって来ているじゃあないか。

 

とはいえ、そのヤマビルにも弱点は多々ある。その一つが太陽光だ。塩でワンパン出来るのは周知の事実だが、太陽光もまたヤツにダメージを与えるには持ってこいなバイオレンスなのだ。特徴をナメクジと近似させているヤマビルは体表の乾燥を避ける為、自ら太陽光の下に身を晒したりはしない。逆に言えば太陽光に当ててしまえば極端に弱らせることが可能と言える。実際ヤマビルがくっついていることを認識した不知火は素早く太陽光の照射地点に移動し、他にヤマビルが付いていないことを確認したのち、伝家の宝刀「塩」をぶっかけ、消除した。南無・・・とは思いつつも吸血されヒルジンを注入され血が止まらなくなるのは御免だから致し方あるまい。

 

激薮ベールに覆われし精錬所

退廃の神秘

で、事務所跡の他、もう一つ怪しいカオが対岸に見えている。

 

手描き地図にも記したが、精錬所跡である。

 

薮に埋まり、なんだか分からない廃墟だが、よくよく見ると高く伸びる遺構が見えるのが分かるはずだ。

 

大体何の役割だか察しがつくが、敢えて書くのは後回しにする。

 

川を渡り、対岸へ。

 

余談だが、事務所跡の土手を降りるときにも一悶着あり、手を掛け片足を下ろしたところ、またもや股が開かないウェーダーにやられ、出来損ないのプロペラよろしく、身体を回転させながら落下し、今度は左肘を岩に叩き付けるハメになった。当然のことながら負傷し、土手の登り降りだけて左手足に大ダメージを受けてしまった。教訓、ウェーダーで無茶はしないようにしよう。

 

それはさておき現在地。薮は深いが、当たりを付ければ何となく入口を見つけることは可能だ。

 

精錬所上部を繋ぐ階段。

 

繁茂する植物は階段にまで伸びており、ここまで来ると執念のようなものを感じてしまうな。

 

古代文明漂う瀟洒しょうしゃな石造り、深緑と伸び盛る荒草あらくさ心澄み渡る青空・・・。

 

真の秘境と称するに相応しい、これ以上に無いほど完成されたロケーション。

 

退廃の神秘、とでも言うのだろうか。物言わぬ廃墟から発せられる不思議なオーラが滲み出て来るようである。

 

階段を登り終えて目の前、大煙突と呼ばれる遺構、そのかまど入口だ。

 

安全を考慮してロープが張られ、ご丁寧に「行止り危険」と書いた警告までプラスされている。

 

ここで現在地を・・・。薮が生い茂る春夏秋は探索出来る範囲が極端に狭く、ざっと見渡す限り目ぼしい遺構は大煙突くらいしか無いのが残念だ。

 

煙突内部を高ISO、小絞り、長露光で撮影。

 

意外と崩落は小さく、素人目には危険度がさほど大きく無いように思える。しかし、ここまで「立入禁止」が無く、ここに来て「立入禁止」があるということは・・・マジで危険なのだろう。

 

竈入口のすぐ右にある小さな覆い。これはなんだ・・・?

 

これに関して言えば全くもって予想が付かない。何の為に竈横にこんな小さな道を設けたのか?

 

大煙突を離れ、奥に進んでみる。

 

ここまで草が生えてくると、もはや路面がどこなのか不安になり、うっかり穴を踏み抜いて脱出不可能になったりしないか気が気じゃあない。

 

振り返って大煙突方面を撮影。

 

方面、とは書いたが、写真左端のロープについたピンクテープが無ければ後で写真を見返してもどの部分だか分からなかっただろうな。

 

今居る地点はこちらになります。

 

同時に現在地が精錬所跡の、少なくとも「藪繁茂期」における基本最終地点となることだろう。

 

現在地から俯瞰する景色は一面が大体緑色で、申し訳程度に煉瓦遺構が覗いているくらいなのだ。

 

実際のところ、この先にも精錬所の遺構はあるが、前述の通り薮で路面が窺いにくい為、下手に進むのは転落の危険が付き纏う。

 

先が気になる方はご自分の目で確かめて頂きたい・・・と思いながら煉瓦越しに対岸を見やる。

 

立派な鍰煉瓦の事務所跡が姿を見せつけていた。

 

他の数多ある廃鉱山施設に引けを取らない、唯一無二の外観だろう。

 

帰り際、大煙突前の石門に郷愁を抱きながら、階段をゆっくりと踏み降り、帰路へとついた。

 

さらば持倉、また会う日まで・・・。

 

最後に

廃鉱山関連施設の「美しさ」においては比肩するモノが無いというくらい、高い評価を得続けている持倉鉱山跡。

 

それは噂に違わぬ誠に相違無く、来訪者に他所で味わうことの出来ない、言葉に言い表し切れない程の「美しさ」を魅せ付け、心に刻み込むこととなるだろう。

 

道のり自体の到達難易度は低いが、ハチ、アブ、ヒル、クマといった危険生物が生息している為、安易な気持ちや装備で挑まず、初心者であれば熟練者に同行して頂くのが最善策である。

 

対策を講じ、是非一度は訪れてもらいたい廃鉱山、それが持倉鉱山跡なのだ・・・。


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