区間③
いよいよ酷道418号線深沢峡廃道レポートも大詰め、というよりようやくちゃんとした廃道区間に入る。今回は区間③についてお送りしたい。
誰もが望んだ廃道風景
のっけから垂涎過ぎる廃道ゲート
現在地、もとい区間③のスタート地点だ。ここから東に約8kmが酷道418号線の廃道となる。こちらから見て終点は笠置ダムのすぐ南西に鉄壁のゲートが備えられ、ほぼ全ての車両が侵入することを拒んでいる。
写真から見て右が酷道418号線の廃道区間、左に上がっていく道路が町道十日神楽線、つまりは区間②で不知火が降りてきた道だ。
いやぁ、しかし、このゲート・・・ジュルッ・・・いかん、涎が・・・。
これぞマニア垂涎と言うべきだろう。総幅員4m弱の道路に黒と黄で彩られた鉄製の横開閉式ゲートが打ち立てられている。更には「通行止」と書かれたお馴染みの標識が配置されているのも不知火的にポイント高い。
忘れてはいけないのが、酷道418号線の超絶酷道区間、僕が「八百津ダート区間」と名付けている場所の光景だ。
見ての通りゲートこそ設置されていないが、廃道区間と同じく路面はダートで、左側には迂回路を示す「通行注意」の看板、「車幅2.0m制限標識」、更には「大型車通行不能」と書かれた看板の3セットである。これで涎を垂らさなければ完全なニワカだ(笑)
道路を見せられるだけでも充分「酷」なイメージが刷り込まれるのに、畳み掛けるような看板+標識のトリプルコンボで、好事家の心を激しく揺さぶる。
酷道、険道、林道と言った道が大好きな不知火がこの超絶酷道区間をガン無視するはずも無いのだが・・・それについては記事のラストに詳しく書きたいと思う。
広がる捨てられた「廃絶景」
ゲートを回り込み、廃道区間の行軍を開始する。
左手にはやはり「車幅制限2.0m標識」があり、寄り添うように立てられた看板には山間部で見掛ける「警戒標識」のマークが描かれ、掠れた文字で何か書かれている。
「落石注意」
予想通りというか。こんな姿になり、廃道と化した現在でも健気に佇む様子が哀れで仕方無い。新丸山ダムが完成することでこの付近はダム湖に沈むのが決定付けられていることからも、足を止めて手を合わせて合掌せずにはいられない。せめてもの、安らかに・・・。
標識と看板の間を挟んで隣には付近でよく見掛けるタイプの迂回路看板があった。
現在地から迂回しろと言われても、町道十日神楽線か岐阜県道352号線しか無く、もし仮に四輪車で来訪中、災害に見舞われ迂回するしか無いとなった場合、泣く泣く乗り捨て徒歩しか選択肢は残されていない。やはり地方の山間部は「国道」と名が付きながらも当てにならない程恐ろしいな・・・。
ふ、ふつくしい・・・。
一面を覆い尽くす程の緑、土と落ち葉が降り積もり自然路面のダート、蕩けるように朽ち果ててゆくデリニエータ。
まさに廃道の絶景、「廃絶景」とでも呼称すべきたろう。
廃道とはいえ、「道路の形」がしっかり保たれているのがまた憎らしい。それでいて「おにぎり」こと国道標識や、警戒標識が一切進行線上に入らない、「素のままの道路」。質素でありながらも、味わい深く、並々ならぬ歴史の重さが詰まっていると染々感じる光景である。
良い。
語彙が貧相で表現が思い付かないという訳では決して無い。極限まで使い込まれ、そして役目を終えて散りゆく酷道の末路は廃道。再び陽の目を浴びること無く、自然に還りつつある先達を前に、若輩者である不知火はただただ頭を垂れることしか出来ない。
・・・なんて、思い付かないとか言いながら無駄にポエムっぽいことを書き連ねてしまったな。
気を取り直して先へ進もう。
何気に起点の「廃」県道
なんだ、この藪にまみれた獣道は?
怪しき分岐のようなものがひょっこり現れている。
僕が辿って来た道は写真で言うと右の茶けたダートで、振り返りながら撮影した写真である。どうにも、何かしら道が通じてそうだが・・・。
これはっっつ!まさか!
地面から生えた怪しい物体、キロポストと言うのだろうか?「大西瑞浪線」と書かれ、藪に埋もれるかの如く鎮座している。
そう、こここそが、岐阜県道352号線大西瑞浪線の起点である。獣道の先が件の352で、かの有名な五月橋を経て、瑞浪市へ通じている。言うまでも無いが、現在僕がいる酷道418号線深沢峡は通行不能の廃道区間であり、その先の岐阜県道352号線もまた、廃県道である。
廃国道と廃県道が繋がっているというのもなかなかに奇妙で、特異なものだな。
忘れられた秘境、深沢峡
これって、ガード・・・レール?
みたいに見える。地面に打ち込まれた支柱と垂直に交わる形で2本の薄い木の板が道路上に続いている。
と言っても長さは精々5m程な上、ここにしか無いので、どちらかというと、路肩の場所を示すデリニエータ的な存在なのだろう。まあ、どう考えても車両の重さによる負荷に耐えられる程の強度があるはずが無いからな。
何ともローカル過ぎる道路構造物である。
相変わらず、錆々のデリニエータが郷愁を買って出ている。
よくよく路面を見ると、濡れている箇所があり、法面からは水が染み出しているところもあった。そのことからも付近は地質が弱く、崩れやすいということが読み取れる。
10月も終わりどきの下旬、深沢峡の風景だ。
かつては深沢峡を通るこの川、木曽川には遊覧船が就航し、数多くの観光客を集める景勝地であったという。今ではその遊覧船事業も廃業となり、船はおろか、人の姿すら無い。
見る影も無く廃れてしまった深沢峡は、忘れられた秘境と名付けるに相応しいだろう。
怒涛の廃道ラッシュ
大きな岩さんこんにちわ
・・・・・ん?
なんか転がってるな。いや、「なんか」も何も、見れば分かるんだけどさ。
岩ですね。それも完全に道のど真ん中に居座り、我が物顔でいるし。
なんだか偶然そこに降ってきた、というよりは誰かがそこに配置したようにも思えなく無い。
だってものの見事に中央で、四輪車が絶対にパス出来ないポイントなんだもん。
実際下手にバリケードを設置するより、数トンはある岩を転がしておいた方が何倍も効果があるはずだ。もしかするとこの岩は、廃道区間の前後が強固なバリケードで封鎖される前の物なのかもしれないな。
魅惑のSコーナー
ゾクリ・・・。
緩やかに弧を描きながら左、右と伸びていく魅惑的過ぎるS字コーナー。路面は完全なダートでありながら、山側と崖側に石組みの外壁が造られていることが、ただの山道で無く、立派な道路であることを証明している。
まるで道路愛好家を骨抜きにする為に出来たようなスポットだと改めて感じるな。
S字写真には写っていなかったが、左手には例によって「落石注意」の標識、その「成れの果て」があった。
「落」を自ら体現するかのように、下までずり落ち、道路共々生涯に幕を閉じている。相当に災害が多く、暫時でも整備を欠かしてしまえば、たちまち荒廃してしまう、そんな道路なのだろう。
崖側の斜面には、これまた標識が逝かれていた。
反対を向いているので何かは分からないが、察するにここまで散々見掛けた「車幅2.0m制限標識」だと思う。
これは林道ですか?(Is this a forest road?)
いいえ、国道でした。(No,it was the national highway.)
・・・なんてやり取りが発生するとは到底思えないが、或いは。
ふかふかだよ~。
足元は一面土。アスファルトの「ア」の字は微塵も無く、オールダート。清々しい程に自然体な路面で、本当に国道だったのかと疑わざるを得ない。加えてこの辺はヤマビルの生息地で前日は雨が降っていた為、ヤツらが現れないかドキドキしていたが、ついには一匹もエンカウントしなかった。
エメラルド・ストーム
吸い込まれてしまいそうだ。
例えるなら翠の嵐、エメラルド・ストーム。
吹き荒れる嵐さながらに絶え間無い翠色に見舞われ、一種の「魔」に取り憑かれてしまいそうになってしまう。空を覆う程の木々はトンネルの様相を作り出し、廃道を真骨頂へと昇華させているのだ。思わず小一時間ここで瞑想してみたくなってくるな。
切通し、それも廃道にあるので「廃切通し」だ。
畳み掛けるように廃絶景が出現し、不知火の撮影インスピレーションを掻き立てて止まない。廃道に限らず、「廃」こそ究極の美学に思えて仕方が無い。
良さみのある廃橋
お次は橋。廃橋である。
何度か橋っぽいのはあったが、廃道区間を歩き始めて初の、ちゃんとした橋に出逢った。銘板を確認したところ、名場居橋という名前のようだ。
現在地。まだまだ廃道区間の残りはいっぱいある。
木曽川へと目を向けると入り江となり、バックウォーターが形成されていた。
来た道を振り返ると、一本標識があることに気付く。うっすら見える色から何となく察することは出来るが、折角だ。近寄ってみよう。
おーおー、こんなんなっちまって・・・。
ズタボロで壁面にもたれ掛かっている標識。棒には「岐阜県」という文字のシールが貼られていた。
「車幅2.0制限標識」
お前もう何本目だよ(笑)
数えるのも億劫なくらい見掛けたな。支線も無いようなこの区間に一体何本車幅制限標識を設ければ気が済むのかと思う程である。ぶっちゃけここまで執拗に立てずとも、道路の雰囲気でドライバーは気付くだろうし、無闇に走ろうとしたりしないはずなのだ。もはやマニア向けアイテムに他ならないだろう。
四輪車の道路ですら無い酷道
名場居橋の奥に目を向ける。
不気味な程暗い先で、昼間のはずなのに夕方かと錯覚するレベル。
だがこの後、廃道区間トップクラスのハイライトを目の当たりにすることになる。
ズウゥゥゥン!!!
ぐっはぁ!!!激熱ッゥ!!!!!
ここに来てとうとう眩暈がするくらいの光景が出てきた。「通行止め」の看板に、「二輪の自動車以外の自動車通行禁止」標識だ。ここは間違い無く四輪の自動車が通行する為に開墾された道路のはずなのに、四輪自動車の通行を拒んでいる。前代未聞とはこのことだろう。ゲートやコーンが設置されていないことも逆にインパクトを与えているな。
「二輪の自動車以外の自動車通行止」
まじまじと見てみると強烈に矛盾した標識だと分かる。これほどまでに国道に似つかわしくない標識が他にあるだろうか?
苦渋の決断
ハイライトを見送り間も無く、幅員は一気に狭くなる。木々が思い思いに自由な繁茂をしているのは変わらずだが、何だろう、不思議と嫌な予感がする・・・。
アスファルト!?
廃道区間を歩き始めてずっと、名場居橋を除けばダートだったのに、ここへ来て謎の舗装路面が顔を出した。道路上に色々散乱しているものの、アスファルト自体に荒れは少なく、ダートが大部分の廃道区間に似付かわしくない場所と言える。
バナナ・・・かな?
葉の形状的にはどう見ても植物園の温室で見掛けるバナナ。実は成っていないのでもしかしたらバショウ科の何かかもしれないが、何故こんなところに?一般的なイメージは「バナナ=南国」で、雪も降ることがある岐阜県の八百津町にあることが謎でしかない。その昔、現在廃道となっているこの区間が現役だった頃、付近にあった民家で栽培していて、風で流れていつの間にか育った・・・のだろうか?
ちなみに・・・唐突で申し訳無いが実はここで酷道418号線深沢峡廃道区間の探索は打ち切りとなる。先に進もうとしたところ、丸々としたジョロウグモとその巣がパッと見ただけでも10、20では済まないくらい進路上に密集していた。過去某マノタキで狭い渓流の中で数十、とある蜘蛛の巣地獄を掻いくぐったことはある。今回もその辺に落ちてる勇者の杖(木の棒)を拾って払いながら進んでも良かったのだが、現在地に到達するまでで既にスタートから2時間が経過していて、このペースで行くと丸一日掛かり兼ねない。撮影や観察を交えながらとはいえ、予想を遥かに下回るスローペースだった為、車のところに戻ることも考えると往復したらマジで夕方になってしまう。泣く泣く探索を断念し、相棒TTを停めた十日神楽に戻る為、元来た道を辿った。
抱負
尻切れトンボなレポートになってしまって、僕としても不完全燃焼でやり切れ無い感が強い。未踏破区間は数キロ残され、まだ見ぬハイライトも数多に眠っていることだろう。この深沢峡は想像以上に重厚なスポットなので、きちんと時間枠を取って再挑戦に臨みたいところだ。
「終」・・・と思わせて、
酷道418号線関連のレポートはこれで終わり・・・では無い。
煮え切らなさを残しつつも車に戻る為、町道分岐まで戻ったところ、一台の車両が駐車していることに気付く。
「一応ここまでは車で来れるんだな・・・。」なんてことをボンヤリ思いつつも脇を通ろうとしたのだが、「こんにちは」と声をかけられたのである。
話しかけてきたのは初老の男性。春日井ナンバーのワゴンRから降りて来た彼は、白髪交じりだが活気溢れる雰囲気から、幾分か若さを感じる。何でも僕が歩いていた廃道区間にはとある魚(一応伏せます)の卵が取れ、売ると数千円にも及ぶ価値があるので毎年来ているのだとか。その男性の他に、恐らく息子さんだろう、若々しくハンサムな30代くらいの男性も来ていて、ウェーダーに着替えながら説明してくれた。
その中で、こんなやりとりがあった。
僕「(ワゴンRの通ってきた道を指差しながら)その道一応通れるんですね、僕も行こうかと思ってたんですが・・・。」
老「止めた方がいいよ、すごく危険だから。」
止めた方がいい・・・?危険だから・・・?
僕の中で何かが燃え上がるのが分かった。これは・・・闘志だ。
仮にも相棒TTで数多の道という道を駆け巡り、文字通り寝食を共にして来た。数え切れない程の困難をくぐり抜け、全て生還したのだ。
「危険」だと言われて引き下がるようなら男では無いし、何より今まで数多の難所を相棒TTでクリアして来た僕のプライドが許さない。
「挑むしか無いな・・・。」
十日神楽へ向かう町道を戻り登りながら僕は独り言ち、超絶酷道区間への挑戦を決意するのであった。
「真の酷道418号線」へ立ち向かうのはここからだ・・・。
超絶酷道区間へ続く・・・?
相棒TTと撮影したオススメスポットを地図にまとめています。
良ければ愛車と写真撮影する際の参考にして下さい。
記事内にイチオシスポットも挙げて幾つか紹介しています。
今まで訪れた秘境スポットを地図にまとめています。
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僕が行ったことのある観光地をマイマップにまとめました。
観光地についてもそれなりに行っていますので是非見てみて下さい。