山梨県。
ギリギリ関東地方に含まれることがあったり無かったりするが、一般的には甲信越地方として定義されている県である。
風光明媚な霊峰富士山があることで知られてはいるものの、実際のところ「都道府県の魅力ランキング」では大体いつも真ん中くらいにいて、あまり魅力を感じる人は多くないというのが事実のようだ。・・・余談だが、不知火は山梨県の富士吉田市に移住したいと本気で思っている。
面積は約4500km2とだいぶ小さく、全都道府県中32位。人口に至っては約830万人で41位。かなーり小さい県と言えるだろう。
そんなちょっと可哀想な山梨県だが、実は本州の都府県道の中で最も道路標識番号が上の県道があることはご存知だろうか?
山梨県道813号線
山梨県西部にある身延町は南巨摩郡に属しており、縦に長い町である。
今回レポートとしてお届けするのは身延町の光子沢から大野までを結ぶ7.2kmの山梨県道813号光子沢大野線だ。
距離は短く、これといって深い見処が含まれるでも無い、一見すると普通の県道だが、特筆すべきは前述の通り、本州で最も大きな番号を持つ都府県道であるこということだ。
純粋な興味本位から走破してみたくなった本県道。一体どのような道路風景なのか?走行レポートのはじまりはじまり~(よくあるの物語風に)。
最初からルートミス?
現在地は山梨県道9号線。富士川に架かる橋梁上である。
青看板が示すように、橋を渡ってすぐの地点にT字路交差点があり、そこを左折するのだな、ということは認識した。
信号が青であることを確認し、何の迷いも無く左へと曲がって行く。
ふーん、良い道じゃん。
真新しいアスファルトで舗装され、しっかりとしたセンターラインが引かれた道はおよそ800番台という数字からは連想出来ないくらいに走りやすい。
ずっとこれだと流石につまらないので、もう少しパンチが欲しいものだが、まあ出だしくらいは楽で良いかな、なんてのほほんと思っていた不知火。だが初っ端から不可解な事象に遭遇する。
何が起きたかと言うと、ふと念の為カーナビの右上を見た際に気付いた・・・「813」と表示されておらず、「アッカリーン」状態(極端に影が薄いか、そもそも存在が消されていること)になっているのだ・・・。
え?何?いきなりルートミスった!?
TTのカーナビはクラリオンという、すぐ測位をサボったりするポンコツだが一応アウディ純正ナビで、国道と県道であれば右上に道路番号が表示されるようになっている。なので本来813という数字が出ていなければおかしい。
先に見た青看板に書かれていた813も、間違い無くこの道路のはずなのでミスってはいないはずだ。・・・考えられる原因はたった一つ。
そう、今いる道は新道なのだ。TTのナビは古く、アップデートはTTを購入した2013年で止まってしまっている。それにより、Googleマップなどの地図では山梨県道813号線となっているのにナビでは「アッカリーン」状態の名も無き道路を走っていることにされているというカラクリ。実際千葉の新筒森トンネルなんかはモロ山の斜面を突っ切っているし、都内の江東区に関しては完全に「セルフフェリー状態」で、島から島へ水上を縦横無尽に駆け抜けているからな。
だがこのときはここが新道だということは知らず、純粋にルートをミスったと思っていた。なのでどこかで転回し、正しい道を走り直さねばレポートとして成立しないな、と。
おお、渡りに舟、もとい転回ポイント確保!
ステアリングを左に振ってからノーズを右に向け、車体の反転に取り掛かる。・・・今考えれば、対向車も居ないのだし、右に振ってから左に鼻先を入れれば楽だったな。
鋭くギアをRに入れて下がったのち、Dに戻してステアリングを右に切り、離脱を図る。
ふえぇ・・・なんなのよさ、この県道・・・。
なんて当時はぼやきながらTTを転がしていた。・・・いや、単純に不知火の下調べが甘かったことがそもそもの要因なのだが。
今度こそ、二度目の正直と言わんばかりに道路番号が変わることを示す白い点線を跨ぎながら左折する。
良かった、正しいルートを辿れたようだ。
しっかりはっきり、カーナビの右上には「813」という番号が記されている状態であり、ホッと胸を撫で下ろす。
道路としては画像の通り、センターラインの無い1車線。都会のようなゴチャゴチャ感を省いた、大野という字の静かな住宅地だ。畑を耕すオジサマや、談笑するマダム達が散見され、穏やかな気持ちになる。
住宅地を抜けると白線の引かれた2車線道路となり、「交差点注意」の文字が見えて来る。
・・・てことはもしかしなくても、
あ、やっぱりそういうことすか。
T字路。左は新道で、そのまま県道813号線先へと通じていた。なんだ、わざわざ質めんどくさい旧道通らなくても良かったやん。まあこういうちょっとした小さい事象も「行き当たりばったり探索」らしくて楽しくもあるのだが。
最大番号県道のお味は?
ザ・田舎
なんてハプニングとも言えないような小ネタを挟みながらも、無事県道トレースを開始した。
太陽は射しながらも両脇を木々に囲まれた林間路に変わり、展望ゼロ。折角なら東側を流れる富士川を俯瞰出来るポイントがあればテンションも上がるんだども。
富士川は見えないが、このままだと一眼レフが一切活躍しないレポートに成り兼ねなかったので、苦し紛れに1枚撮影する。
「田舎で賞」を授与するならピッタリな1枚と言えるが、それ以上でも以下でも無い。ここまでコメントが思い浮かばないTT写真というのも久し振りだな。
突如登り勾配に切り替わる。
これは富士川見えるんか?そうなんやろ!?
富士川×TT
見えたど~富士川×TT!・・・完全にTTがオマケな写真になってしまったが、まあ良いか。
ついでに補足すると、不知火が立っているポイントは石壁の上だ。僕が立った状態で立っていられそうな場所の高さが顔くらいのところにある。壁の左手に一眼レフを持っている為両足と右手で登る必要があった。
連続写真の動作(ドラレコ切り出しただけ)だと↑みたいな感じ。左足で踏み切り、右足が壁に着くのと同時に壁を蹴って右手を着き、左足を縁に載せる。あとはそのまま左足を軸に身体を半回転させれば・・・はい登れたー。・・・別に自慢するようなことでも無いので載せなくても良かったのだが、体育の教科書に出て来る「器械運動動作」みたいで面白かったので、挙げてみる。難しくは無いが、0.5秒程壁に着いた足が踏ん張れないとずり落ちて顔面が壁にクリーンヒットするのでご注意頂きたい。
改めて、件の富士川を撮影。
日本三大急流に数えられる一級河川で、長野県、山梨県、静岡県を跨ぎ、古くより水運の要路として重宝されてきた川である。
現地では急流と言われるような流れのある場所では無いようで、非常に緩やかな水流を見せている。
設けられた両堤防までの幅もかなり余裕があり、思わず河原に飛び込んで水遊びをしたくなる眺めだ。実際は写真を撮っている所から河原まで2、30mの高さがあるので、現在地点から飛び込むともれなく救急搬送というオマケ付きになることは必死だろう。
ネタと言えばネタ
んんんー?なんぞこれ?
道路反対側の壁面を見ると「そこうよ^_^りえかお」と書かれた一見すると謎過ぎるメッセージが飛び込んで来た。
ふむ・・・これはあれか?新種の暗号か何かか?例えば逆立ちすると読めるとか・・・なんていうひねくれた発想は特に持つ必要が無く、単純に右から読めば良いだけだ。すると「おかえり^_^ようこそ」という意味が浮き出てくる。
多分だが、県道経由で集落に帰宅する住人に対しては「おかえり」、観光などで来た外部層の客人に対しては「ようこそ」なのだろう。
それにしたってトラック右側荷台に書かれた会社名じゃあるまいし、現代において文字を右読みする習慣は普通無いはずだ。不知火が来た方向からのドライバーに対して、と考えたって、読み辛い。予想出来ることは、戦前に刻まれた文字なのでは、ということだ。横文字の日本語が左読みになったのはおおよそ戦後と言われている。ハッキリとした時期は不明だが、少なくとも明治にはこの場所に道が開かれていたようであり、その時期に書かれた文言だと考えれば割りと納得が行く、気がする。
ちょっとぶりに見えてきた民家。清子と読む字の集落だ。
そこまで小さいという訳でも無く、これといって特に見所がありそうには思えないが、逆に言えば観光客も少ないので、立ち寄ったときに車を停めて何も考えずボケーっとするには打って付けかな、と頭に浮かんでも来る。
ところでさ、さっきからずっと思ってたんだけど、この県道やったらアップダウン激しくない?
登ったと思ったらすぐに下りが始まり、まだ下がるのかなと思ったら息つく暇も無く登りに変わってしまうのだ。
ここまでクイックスパンで登り下りが切り替わるというのはとんでもなくめんどくさい。
天を覆うほど木が林立している訳では無いので、特段の薄暗さを感じはしないが、見通しが安定しない。
救いはカーブミラーが設置されている為、先から対向車が来ているかどうかすぐに分かることか。
真・富士川×TT撮影ポイント
なんて言っていると唐突なまでにガバッと視界の良いポイントが現れた。
これはっ!言うまでも無く、それなりな写真が撮れるはずだっ!
おまちどうさま。
さっきのピンと来ない富士川×TTでは無く、今度はちゃんとした富士川×TTの写真である。
富士川の対岸には甲斐大島の集落や山梨県道10号線、標高1173mの三石山なんかが見て取れる。
燦々と降り注ぐ暖かな陽射し、青々とした草木から発せられる清々しい空気、目を潤す静涼なる川の流れ。
シンプルで、多くの田舎に行けば感じることが出来る自然の風景というものを肌で味わえて、殺伐とした日常から解放されるような気分になった。
まだまだ続くダラダラ県道
さて、美味しい風景で鋭気を養ったところで、走行レポートを進めて行く。
景色は90°戻り、1車線+生え伸びる木々+アップダウンという道路。眺望は一切効かず、大して面白味の無いポイントだ。
まあ、テイスト的には町道ですかねぇ・・・。
800番台ということもあるだろうか、およそ県道とは言い難い。かと言って「険道」であるかと言われれば全然険しさを名乗るには不足しているので、ビミョーなところか。
もう1枚くらい一眼レフで撮っておくかな。
車道から外れた路肩に寄せて車速を落とし、停車する。
新緑が美しい、あとTTがカッコいい(小並感)。
いや、だってそれしか書けんわ。あと何書けば良い?あ、民家無いですね。・・・思い付かないんですよ、コメントが。
それはさておき。いやー、クネックネしとりますわ。
クネックネと言っても、ヘアピン連続するような道じゃなくて、中途半端なRを描くクネックネだ。道幅が広くないこともあって、「駆け抜ける悦び」を味わうことは叶わない。ぶっちゃけ言ってしまうと、走っていても楽しく無いのよ、この県道。
あ、農道のポルシェ・・・じゃなかった、軽トラだ。
不知火のレポートでも離合シーン等で度々現れる、集落の英雄的存在、軽トラ。
道路走破性、小回り、視界、荷物積載力、あらゆる面で高いスペックを誇っているのが特徴で、相棒TTとはまるで方向性が異なっている。・・・いや、道路走破性と荷物積載力はTTもクーペにしてはそれなりの実力を体感しているので全くとは言い切れないかな。
相も変わらず、惚れ惚れするような車幅感覚を魅せる軽トラドライバー。
やはりどこの都道府県でも、山間部で見掛ける軽トラドライバーのお手前は卓越している。見てくれ、このピッチリと側溝の蓋に這わせる車体左側を。直線で蓋があるとはいえ、車速に一辺の迷いも無い。100%幅を測り切り、離合出来ると踏んでいなければ出来ない技だ。不知火はこう言った「迷いの無い車幅感覚で離合を仕掛けて来るドライバー」を「職人」と呼んでいる。個人的にこのシーンを目にすることは、山間部の醍醐味の一つと思っている。お陰でこちらも減速せずに離合を掛けられる。
光子沢入口
もうそんなとこまで来たのか。光子沢に入るということは山梨県道813号線の終盤に来ていることを意味しているのだ。
ハイライトこそ少なかれ、それなりに楽しめたのかな。
↑=×、→=◎
残り少ない県道指定区間を噛みしめながら走行する不知火と相棒TT。
もう恐らく目ぼしいポイントも無いだろうと思いながらゆっくりと進んで行く。
マブジイヨォ・・・。
ピンポイント過ぎる南中高度から発せられる強力無比なサンライトレーザービーム。グラサンを掛けていなかったので、モロ不知火の網膜に突き刺さり、ムスカ大佐よろしく「目がぁ、目がぁっっ!!」とか言いたくなる。
正直サングラスがあっても、太陽の光はストレートに視界に入れば、目が眩んで「閃光やられ状態」になってしまうので、ぶっちゃけそんなに変わらないか。
お、交通量が多い道路が視界奥に。
国道52号線と交わる地点、即ち山梨県道813号線のエンドポイントだ。
矢印に置いてある県道標識で分かると思うが、実は直進は県道区間では無い。Googleマップで見れば分かるが、右が正しいルートで直進は町道以下になっている。
とりあえず休む意味も兼ねて、右折する。
だがしかし、最後の最後で「んっ?!」という事柄に出くわす。
エ゛ッ、まさかのダート路面!!!
びっくらおったまげ、何でかさっぱりだが、極短い残りの県道区間はダート路面となっていたのである。
驚くようなことがもう無いと思っていたラストで、地味に感嘆符が頭上を飛び交うような出来事が待っていたのは充分ハイライトだ。
まさか、な。本州最大県道番号となる山梨県道813号線の最終局面で、目を丸くすることになるなんて・・・お茶目な県道さんだぜ・・・。
念の為徒歩で先を確認しに行く。
やはりというか、普通に国道52号線が通っていて、そこまでは写真のようなダートだった。
一見すると、誰しもがさっきの分岐で直進してしまうだろう。だって右はダートなんだもの。舗装も潔いくらいにズバッと途切れていたしな。
終わりに
(・・・ここだけの話。現地で最後のダートを見たとき、疑いも無く「県道区間じゃ無いな」と思ってしまい、国道52号線に入る際に舗装路を使っているので、厳密に言えば走破していない、けど、これは心の声だから聞こえて無いよね!・・・聞こえてたらごめんなさい。)
終
相棒TTと撮影したオススメスポットを地図にまとめています。
良ければ愛車と写真撮影する際の参考にして下さい。
記事内にイチオシスポットも挙げて幾つか紹介しています。
今まで訪れた秘境スポットを地図にまとめています。
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僕が行ったことのある観光地をマイマップにまとめました。
観光地についてもそれなりに行っていますので是非見てみて下さい。