ラストを飾るは快走路
疲れは既に限界値
長かった樹海ラインもついにラストである区間⑦。残り少ないこの道路を走り切れば、無事完走したことになる。
現在地は尾瀬の駐車場。尾瀬に到着してから暫く博物館でウダウダしていて、それからバスで尾瀬沼まで行ったが、終バスまでの時間が迫っていた為、軽く撮影してすぐに駐車場に戻った。
樹海ラインのゴールとも言える最後の区間、あまりにも短すぎてカップ麺の麺を箸で摘まみ上げフーフーして口に運ぶ時間くらい短いのだが、更に先に進んで行くと現れるこの日最終目的地になった温泉までもレポしていくつもりなので、お付き合い頂けたら幸いだ。
駐車場の出口で清算を終え、樹海ラインへと戻っていく。時刻は既に17時を越えていたが、7月ということもあり、まだまだ日が落ちる気配が無い。
尾瀬に別れを告げ、残り区間の消化にかかる。さらば尾瀬国立公園、またいずれ、新緑の頃にでもゆっくり見に来るつもりだ。
センターライン。
T字路を右折してすぐがこれである。路面の凹凸の少ない、走りやすい快走路だ。この道路を見ると、樹海ラインもとうとう終わりなんだなぁと実感させられ、不思議と一抹の寂しさを感じる。途中奥只見ダムと尾瀬探索を挟んだとはいえ、朝7時過ぎからほぼずっと走りっぱなしで半日近く過ごしたことになる。ストックホルム症候群じゃないが、辛い、厳しいと思える状況も、触れる時間が長ければ親近感を覚えてしまうというものだな。・・・ってちょっと例えが違うか。
・・・なんて思ってたらすぐにセンターラインが消え、1.5車線道路になってしまったな(笑)
だがしかし、うむ、こっちの方が樹海ラインっぽいし、味わいがあって僕は好きだ。これだと快走路を嫌い、酷な道を好む、生粋のマゾヒストのように思われてしまうかもしれないのだが。
いいよ、いいよぉーこの感じ。狭いねぇ、森が濃いねぇ・・・。
こういった風景を見るといつも思い出してしまうのが、北海道の美瑛町にある、「青い池」に向かう途中の道路だ。あそこもこれに似たタイプの道路を持っているので、両脇を森に囲まれ、一車線の道路を僕は勝手に「北海道の道」と呼んでいる。要は自然満載な道、ということだ。
来客
おろ?対向車でござるか・・・?
どうやら大型バスのようだ。大方尾瀬に向かう観光バスなのだろうが、時刻は17時半になろうとしている。こんな時間に尾瀬に行くというのか?観光に適した時間とは言い難いし、とりあえずホテルに泊まって翌朝からハイキングって感じなのかな。まさか交通量が少なくなるのを見計らって、樹海ラインを抜ける僕以上にドMな車両ということなのか?いや、まさかな。
相変わらずセンターラインは消えているが、お互い道路脇に寄れば減速せずとも容易にすれ違える幅員だ。バスも狭そうな素振りを見せることなく、易々とすれ違ってくれた。
森を抜けると唐突に視界が開けた場所に出る。右奥に見える霧に霞んだ山は一瞬駒ヶ岳かと思ったが、どうやら違うようだ。
ヒャッホー!気持ちいいぜい。
車速は平均●0キロなので、見つかると暫くクサイメシを頂く羽目になるので明記出来ないが、見通しが良く、凹凸が少なく、ドライ路面を選んでやっている。決してどこでもイカれた走り方をしている訳では無い。TTはサスペンションが硬い上ストロークも短いので、下手に路面の起伏を拾うとスリップしたり、バンプして取っ散らかる。実際過去には無茶をし過ぎて死にかけたことがある。ハイスピードでバンプして操作不能のままトンネルの壁に刺さりそうになったり、代車の軽でスライドさせてたらオーバーステアでスピンし、崖から落ちそうになったり、ダート林道で遊び過ぎたせいでコーナリング出来ず、ポールに激突して側面中破させたりと枚挙に暇が無い。勿論あれから数年経った今、無茶をすることはほとんど無くなり、落ち着いた運転になったと思う。若気の至りというものか。
ヘアピンカーブも随所に散りばめられており、下りということも相まって楽しさは倍増する。道幅は2車線分確保されているので、キッチリはみ出さないように内側をコーナリングすれば問題無いが、それでもカーブミラーの存在は有難い。安心して突っ込むことが出来るのだ。
ところどころ道幅が狭くなる辺りが、やはり樹海ラインらしさを感じる。
エンドポイント
そして・・・ここが樹海ライン最後の地点。この橋を渡り切ればついに樹海ラインを走破したことになるのだ・・・!しっかりとラストの「味」を味わいながら橋上を通過する。
Congratulations!!!!
ついに・・・ついに・・・ついに樹海ラインを走り切った!!!
尾瀬駐車場からは僅か約6.5キロ。時間にして5分弱しかかからなかった。これまでの区間では5分で数百メートルしか進めなかったのに、えらい違いだ。
トータル74km。新潟県の魚沼市から始まり、県境を越えてここ福島県の檜枝岐村までの道のり。自分の中ではかなり長く感じられたはずなのに、走り切ってみると短くも思える、不思議な感覚だ。「酷道」の一つとして名が高い樹海ラインこと国道352号線、噂に違わぬ、凄まじい道路だったぜ・・・。
これにて樹海ラインのレポートは終了。だがせっかくなのでこの先にある温泉地までの道のりを綴って行こうと思う。
温泉目指して一直線
ミニ尾瀬公園
さて、樹海ラインは無事完走したが、こんな場所で一夜を明かすのは流石に厳しい。というか、尾瀬を歩き回ったから汗でベトベトだし、この状態で車中泊したくない(笑)だからこそ、温泉を目指したのである。
檜枝岐村にある燧の湯、燧は「ひうち」と読み、名の通り東北地方を代表する燧ケ岳に由来している。燧ケ岳は2356mの標高を持ち、尾瀬国立公園内に位置していて日本百名山にも選ばれている、福島県が誇る霊峰なのだ。
橋を越える前からいたバスが前方を走っている。露骨に煽ったりするのは嫌いなので、シフトダウンしてエンジンブレーキの力を強め、車間距離を広めに取る。こうしておけばバスの車速が落ちてもエンジンブレーキによってこちらの車速も下がり、わざわざフットブレーキを踏まずとも車速を調整することが出来る。下りは登りのように重力で減速することが出来ない為、車速が上がりがちで減速がフットブレーキに頼るケースが多いが、放熱性の低いドラムブレーキなどはフットブレーキを多用することによりベーパーロック現象を引き起こし、事故に繋がる恐れがある。無論TTは前後ディスクブレーキだし、オイルが過熱し過ぎて気泡が発生することはまず無いが、それでもフットブレーキに頼らず減速の手段を身に付けておくのは内部機関を傷めにくくする他にもいざという時の危機回避に繋がる、と僕は考えている。まあ箱根ターンパイクの下りのように4速ノーアクセルでも平気で100キロまで加速するような場所だと、ローギアを選択してもギアの抵抗が限界に近くなり、ギアの負担増加が否めないこともあるのだが。
と、バスがハザードランプを焚き、車速を落として左に寄ってくれた。これは譲ってくれる合図だ。バスの運転手に要らぬ不安を感じさせないように、出来るだけ距離を取りながら緩やかに対向車線側から抜く。前方を大型車が走行していて、このような直線区間の場合、大型車によって接近してくる対向車の発見が遅れるケースがままある。譲ってくれたからラッキー、と言って安易に抜きに入ると対向車と正面衝突、なんてこともあり得る。実際譲ってくれる前走車の中には譲る場所を考えず、見通しの悪いコーナーや対向車が来ている時というのも珍しくないし、遭遇したことがある。見通しの悪いコーナーなら抜くギリギリまで対向車線を注視してカーブミラーを見たりやヘッドライトを察知して、行けそうならフル加速して対向車線にはみ出している時間を最小限に取ったり、どうしても無理なら対向車が過ぎるまで待つしかない。
本来追い越しは前走車と前後の距離を大きく取り緩やかに行うというのが道交法で定められているルールだが、緊急時は仕方が無い。対向車が過ぎるのをあんまりチンタラ待っていると、譲ってくれた前走車も「なんだ抜かないのか」と考えて、走行を始めてしまうかもしれない。まあ、下手に危険を冒してまで抜いて、事故に遭うくらいなら抜かない方が賢明か。
このサイズだとヘアピンは相当気を使うんだろうな、などとぼんやり考えながら横を走る。大型車は内輪差が大きく、交差点を左折した際、前輪が交差点の左端に沿っていても、後輪が端を乗り越えてしまう。所謂左折時の巻き込み事故が起きる要因なのだが、そういう大型車を運転するドライバーは正直凄いと思う。千葉市内でも片側一車線しか無い交差点を左折する大型牽引車の見事な曲がり方にいつも驚嘆する。あの人達、マジでプロ過ぎるだろ・・・。
走行車線に戻りながら、こちらもハザードランプを3回程点滅させ、譲ってくれたバスにお礼を言う。教本に書いてある訳では無い、ローカルルールだが、以前通勤や首都高等で進路を譲ってもらったドライバーが良く使っていたので、なるほどと思い使い始めた。北海道に居た頃は知らなかったが、割と首都圏では当たり前に知られているルールっぽい。
ちなみに高速道路でトラックなどがハザードランプを焚き始めるのは、「前方で渋滞が起きている」ということの合図であることが多い。恐らく、トラックドライバーはラジオなどで交通情報を聞いているケースや、車高が高い為前方を目視しても把握などが出来るから、真っ先に気付けるのではないか、と解釈している。
おお、お久しぶりですねぇ、おにぎりさんや・・・。
なんか長い区間目にしていなかった気もするが、こんなところでお役目を果たしていたんですな。キッチリセンターラインが引かれている広い道路になっていて、改めて樹海ラインは抜けたんだなと実感する。
む・・・?なんぞこれ?
ミニ尾瀬公園・・・?
その名の通り、尾瀬国立公園をギュッと凝縮した公園のようだ。平成11年にオープンして、気軽に尾瀬の魅力を楽しめるということで親しまれている。バリアフリーにも対応していて、車椅子でも入園出来るらしく、開設者の心遣いが感じ取れる。国立公園の方は広すぎるけど、尾瀬の雰囲気は味わいたい方には打ってつけだし、逆にミニ尾瀬を歩いてみて、もっと見てみたいということなら国立公園に行くきっかけになるだろうし、ある種デモンストレーション施設として一躍買っているのではないか。
檜枝岐地区
森々した風景から一転、住宅地が立ち並ぶ地域に突入。物凄く久しぶりだ、このように普通に人々が暮らす街並みを見るのは・・・。数十キロ以上、ずっと山か川しか見てなかったからなぁ。
お、右手の橋に「燧の湯」と書かれた看板発見。T字路を右折し、橋の上を渡る。
両脇に民家が建つ、細い道を進む。この辺は温泉、民宿、JAストア、診療所に加え郵便局もあり、思いの外施設が充実している。郵便物をここから配達しに行くのは相当苦労されることだろう。
燧の湯と書かれた案内看板の下に、尾瀬檜枝岐温泉と書かれている。尾瀬の名を冠しているのがなんとなく迫力あるように感じる。
とうちゃーく。関東信越2泊3日車中外泊ドライブ1日目に立ち寄った群馬県の草津温泉と違い、静かな温泉だ。僕的にはこういうひっそりとした秘湯のような雰囲気の方が好みだったりする。実際中は地元客や数名の旅行客と思しき方がいたくらいで、ゆったり浴槽に浸かり、疲れを癒すことが出来た。
温泉の駐車場に停めても良かったのだが、個人的には駐車したら動かしたくなく、温泉から出たらそのまま寝られる場所が欲しかった。仮眠をして目が覚めたら恐らく深夜なので、車を出そうとしたらゲートで塞がれたりしていたら朝まで待機する羽目になる。そうならないように、出来るだけオープンな駐車スペースが無いか探してみたのだ。
スロープを下って左に曲がると、車が4台程停められる駐車スペースがあった。
ふう、一安心。右奥に見えているのが燧の湯だ。この後タオルと着替えを持って温泉に行き、ひと時を過ごした。露天風呂に入っている時にシトシトと雨が降ってきて、雨音を楽しみながら入浴するという素晴らしい時間であった。
最終的な目的地はここ。檜枝岐川と舟岐川が交わる、自然に恵まれた場所だ。
あとがき
振り返ってみると、噂通りの酷道だった。狭隘、九十九折れ、洗越という酷道としての3要素をしっかり兼ね備えており、堂々たる風格を纏った道路と言えるだろう。酷道と言えば418号線、425号線、439号線の日本三大酷道が有名であり、真っ先に思い浮かぶとは思うが、マニアであればここ樹海ラインも絶対に抑えておくべきだと思う。三大酷道と比較すると難易度もスリルも格段に落ちてしまうのかもしれないが、道としてはしっかり作り込まれているので、初心者の方でも走りに行ける良い道路(?)なのではなだろうか。とはいえ、狭隘路などは周囲にしっかりと気を配っておかないと、対向車に気付かず正面衝突する可能性が出てくるので、自分の力を過信することなく、慎重に運転に取り組んでみて欲しい。
2018年11月17日追記
ちなみに、酷道352号線「樹海ライン」は完全に初心者向けの酷道です。日本三大酷道の一つ、418号線八百津ダート区間はシャレにならない程半端無い難易度で、ほんとに落ちたら死ぬ区間です。樹海ラインじゃ物足りない方は合わせて酷道418号線八百津ダート区間走破レポートをお読み下さい。
終
相棒TTと撮影したオススメスポットを地図にまとめています。
良ければ愛車と写真撮影する際の参考にして下さい。
記事内にイチオシスポットも挙げて幾つか紹介しています。
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僕が行ったことのある観光地をマイマップにまとめました。
観光地についてもそれなりに行っていますので是非見てみて下さい。